15 / 64
15 狸の腹の探り合い?
しおりを挟む
「これからはそんな苦労はかけさせません。必ず幸せにしてみせます……少しだけ執務を手伝って頂けたら嬉しいですけれど」
今まで静かに見守っていて下さっていたシュマイゼル様が後ろから静かに声をかけてくれました。
「お恥ずかしい所をお見せしました……」
お父様も涙を拭いてシュマイゼル様に向き直ります。
「我らに変わり娘を救い出していただき誠にありがとうございます。私達はもう貴族でも何でもなくなってしまいましたが、何かあれば馳せ参じます」
「ははは、ご謙遜を。噂に名高いセルシオ・ハイランド伯をただ遊ばせておくなどする訳がないでしょう。今日からは我が国で侯爵家としてその手腕を奮って頂きますよ?」
「ははは、マルグ国王様もご冗談をお言いになるのですね。家も領地も持たぬ私が侯爵など!マルグ国の貴族様に笑われます」
「いえ、この書類にサインして頂ければ。ハイランド家を頼って一緒について来られた領民の事を考えれば、直ぐにでもサインをいただきたいと思いまして、無粋ながら久しぶりの親子水要らずにお邪魔してしまいました」
「はあ……?」
お父様がシュマイゼル様から渡された書類にはお父様が貴族として認める事と、かなりの広さの領地が与えられる事が明記されております。
「この様なものを頂いてもこの国に波風を立てる訳にはまいりません。謹んでご辞退をさせて頂きます」
恭しく書類を差し戻すと、シュマイゼル様ははぁ、と大仰にため息をつかれ
「やはりこの程度で満足頂けませんでしたか。分かりました、ではこちらの書類で……」
演技でしょうが、やれやれと別の書類を出して来られるのです。
「え?シュマイゼル王よ、私の話を聞いておられなかったのでしょうか?我らは最早貴族ではないのですから……いやいや!シュマイゼル王、これはないですよ!」
「お父様……?あらまあ」
シュマイゼル様が次に出された書類を見ると今度は侯爵ではなく公爵に、領地も先程より王都に近く、倍ほどに広くなっているではありませんか!シュマイゼル様?!お父様のお話を聞いて……聞いて敢えてやりましたね……?
「ああ、ハイランド伯。流石にこれ以上の領地拡大は貴族院を通さねばならんから、明日になってしまうよ。これから皆を招集して緊急会議を……」
「せんで宜しいです!」
流石のお父様も声を荒げています。優しい狸と噂のお父様もシュマイゼル様の「狸」ぶりに一本取られたようですわ。
「おほほほ!早く書類を作ってしまわねば、私達はレンブラントとお出かけしてしまいますからねー。ご一緒するならお早めに」
扉がほんの少しだけ開いてシュマイゼル様のお母様、王太后様がチラリと顔を覗かせてすぐに行ってしまいました。廊下から
「お、お祖母様!お祖父様おやめください、わ、わああああーー!」
レンブラントの困惑しつつも少しだけ嬉しそうな叫び声が聞こえて来ます。しっかりと躾けられたあの子がこんな大きな声を出すなんて。よほどの事があったのか、と思うのと少しだけでも子供らしくあれるのが嬉しくも感じます。
「あ!あなた!ま、孫が!」
「はっ!孫が!!」
お、お母様?お父様……?!
「早くしませんとレンブラントが我が父上と母上に連れ去られ、城下で剣や魔導書、文具、服に至るまで全て買い与えられ、美味しい物を食べさせられ……お二人の入る場所が無くなってしまいますよ?」
「ぐぬう!!謀ったな!マルグ国王シュマイゼル殿!!」
「ははは!何とでも!謀られる方が愚かなのですよ!ハイランド伯!」
お父様とシュマイゼル様は暫し睨み合っていましたが
「あ、あなた!早くしませんと!レンブラントが行ってしまいます!」
「ぐぬぅーーー!サ、サインをさせて頂きまする!1枚目の書類をお貸しくださいませ!」
「最初から素直にそうなされば良かったのです」
「くっ!この借りは必ずかえさせて頂く!!」
お父様は奪い取る様に受け取った書類に荒くサインをし、
「覚えていなされーーー!」
と、負け犬の遠吠えのような叫び声を残して、王太后様が消えた先目掛けて駆けて行ってしまいました。
「レンブラントーー!お祖父様ですよーーー!」
「お祖母様も居ますわよーーー!」
そう言えば弟には孫どころか今は妻も婚約者もいないので、あの二人も孫という存在に飢えているのでしたね……。
「上手く行きました。レンには感謝ですね、流石私の息子です」
シュマイゼル様がにこにこと書類をみて笑っております。一体この方はどこまで準備をしていたのでしょうか……?
今まで静かに見守っていて下さっていたシュマイゼル様が後ろから静かに声をかけてくれました。
「お恥ずかしい所をお見せしました……」
お父様も涙を拭いてシュマイゼル様に向き直ります。
「我らに変わり娘を救い出していただき誠にありがとうございます。私達はもう貴族でも何でもなくなってしまいましたが、何かあれば馳せ参じます」
「ははは、ご謙遜を。噂に名高いセルシオ・ハイランド伯をただ遊ばせておくなどする訳がないでしょう。今日からは我が国で侯爵家としてその手腕を奮って頂きますよ?」
「ははは、マルグ国王様もご冗談をお言いになるのですね。家も領地も持たぬ私が侯爵など!マルグ国の貴族様に笑われます」
「いえ、この書類にサインして頂ければ。ハイランド家を頼って一緒について来られた領民の事を考えれば、直ぐにでもサインをいただきたいと思いまして、無粋ながら久しぶりの親子水要らずにお邪魔してしまいました」
「はあ……?」
お父様がシュマイゼル様から渡された書類にはお父様が貴族として認める事と、かなりの広さの領地が与えられる事が明記されております。
「この様なものを頂いてもこの国に波風を立てる訳にはまいりません。謹んでご辞退をさせて頂きます」
恭しく書類を差し戻すと、シュマイゼル様ははぁ、と大仰にため息をつかれ
「やはりこの程度で満足頂けませんでしたか。分かりました、ではこちらの書類で……」
演技でしょうが、やれやれと別の書類を出して来られるのです。
「え?シュマイゼル王よ、私の話を聞いておられなかったのでしょうか?我らは最早貴族ではないのですから……いやいや!シュマイゼル王、これはないですよ!」
「お父様……?あらまあ」
シュマイゼル様が次に出された書類を見ると今度は侯爵ではなく公爵に、領地も先程より王都に近く、倍ほどに広くなっているではありませんか!シュマイゼル様?!お父様のお話を聞いて……聞いて敢えてやりましたね……?
「ああ、ハイランド伯。流石にこれ以上の領地拡大は貴族院を通さねばならんから、明日になってしまうよ。これから皆を招集して緊急会議を……」
「せんで宜しいです!」
流石のお父様も声を荒げています。優しい狸と噂のお父様もシュマイゼル様の「狸」ぶりに一本取られたようですわ。
「おほほほ!早く書類を作ってしまわねば、私達はレンブラントとお出かけしてしまいますからねー。ご一緒するならお早めに」
扉がほんの少しだけ開いてシュマイゼル様のお母様、王太后様がチラリと顔を覗かせてすぐに行ってしまいました。廊下から
「お、お祖母様!お祖父様おやめください、わ、わああああーー!」
レンブラントの困惑しつつも少しだけ嬉しそうな叫び声が聞こえて来ます。しっかりと躾けられたあの子がこんな大きな声を出すなんて。よほどの事があったのか、と思うのと少しだけでも子供らしくあれるのが嬉しくも感じます。
「あ!あなた!ま、孫が!」
「はっ!孫が!!」
お、お母様?お父様……?!
「早くしませんとレンブラントが我が父上と母上に連れ去られ、城下で剣や魔導書、文具、服に至るまで全て買い与えられ、美味しい物を食べさせられ……お二人の入る場所が無くなってしまいますよ?」
「ぐぬう!!謀ったな!マルグ国王シュマイゼル殿!!」
「ははは!何とでも!謀られる方が愚かなのですよ!ハイランド伯!」
お父様とシュマイゼル様は暫し睨み合っていましたが
「あ、あなた!早くしませんと!レンブラントが行ってしまいます!」
「ぐぬぅーーー!サ、サインをさせて頂きまする!1枚目の書類をお貸しくださいませ!」
「最初から素直にそうなされば良かったのです」
「くっ!この借りは必ずかえさせて頂く!!」
お父様は奪い取る様に受け取った書類に荒くサインをし、
「覚えていなされーーー!」
と、負け犬の遠吠えのような叫び声を残して、王太后様が消えた先目掛けて駆けて行ってしまいました。
「レンブラントーー!お祖父様ですよーーー!」
「お祖母様も居ますわよーーー!」
そう言えば弟には孫どころか今は妻も婚約者もいないので、あの二人も孫という存在に飢えているのでしたね……。
「上手く行きました。レンには感謝ですね、流石私の息子です」
シュマイゼル様がにこにこと書類をみて笑っております。一体この方はどこまで準備をしていたのでしょうか……?
812
あなたにおすすめの小説
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約破棄されましたが、私はもう必要ありませんので
ふわふわ
恋愛
「婚約破棄?
……そうですか。では、私の役目は終わりですね」
王太子ロイド・ヴァルシュタインの婚約者として、
国と王宮を“滞りなく回す存在”であり続けてきた令嬢
マルグリット・フォン・ルーヴェン。
感情を表に出さず、
功績を誇らず、
ただ淡々と、最善だけを積み重ねてきた彼女に突きつけられたのは――
偽りの奇跡を振りかざす“聖女”による、突然の婚約破棄だった。
だが、マルグリットは嘆かない。
怒りもしない。
復讐すら、望まない。
彼女が選んだのは、
すべてを「仕組み」と「基準」に引き渡し、静かに前線から降りること。
彼女がいなくなっても、領地は回る。
判断は滞らず、人々は困らない。
それこそが、彼女が築いた“完成形”だった。
一方で、
彼女を切り捨てた王太子と偽聖女は、
「彼女がいない世界」で初めて、自分たちの無力さと向き合うことになる。
――必要とされない価値。
――前に出ない強さ。
――名前を呼ばれない完成。
これは、
騒がず、縋らず、静かに去った令嬢が、
最後にすべてを置き去りにして手に入れる“自由”の物語。
ざまぁは静かに、
恋は後半に、
そして物語は、凛と終わる。
アルファポリス女子読者向け
「大人の婚約破棄ざまぁ恋愛」、ここに完結。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです
ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる