1 / 54
1 追放される「悪役令息」
しおりを挟む
「アクア! 貴様のクレスト家の傘を着た悪逆非道な行い! もはや看過できぬ、即刻処刑を……」
「お許しください! 殿下、彼はアレでも私の兄なのです! 命だけは、命だけはお助け下さい!」
「シス……君はあんな男にも慈悲をかけるのか……なんと心の優しい……やはり私の婚約者は君だけだ。ああ、シス、可愛い私のシス……もっとそばに」
「はい……サフィール様……」
私は何とか表情を押し殺す。まるでシナリオがあるかのような王太子殿下と美しい公爵令息。とても似合いのアルファとオメガだろう。
公爵令息のシスことアメシスは正真正銘のオメガだ。オメガであれば男でも女でもアルファの子供を産む事が出来る。だから、アメシスは麗しのアルファ、碧眼王太子サフィール様の小さな頃からの婚約者だ。
「シスの願いだ、叶えてやろう。よいだろうか。クレスト公」
「ええ、アメシスの願いならば。誰か、この不埒者を引っ立てよ! 国外追放だ、それならばよいですかな」
「ああ、妥当な所だろう。シスもそれでよいね?」
「はい、サフィール様」
悲しげにサフィール様の胸に顔を埋める。目が合うと責めるような視線が絡む。ああ、まだか。
「は、離せ! 嫌だ追放なんて! 冗談じゃない!!」
私は衛兵に腕を掴まれまいとむやみやたらに手を振り回しバタバタと暴れる。
「アクア! この後に及んで情けない! 捕まえて国境に捨ててこい!」
「い、嫌だ! 父上、助けて下さい。捨てられるなんて嫌です!」
父であるクレスト公爵の足に無様に縋るも蹴飛ばされた。
「お前などもう息子でも何でもない! 育ててやった恩も忘れて私の邪魔ばかりする! クレスト家からも追放だ!」
「そんな……そんな酷い!」
私は蹴られた腕を押さえながら涙を零す。痛い、折れてはいないだろうが腫れはするだろう。
「酷い?! それはお前の事だろう、アクア! お前はシスを筆頭に、一体どれだけの人間を痛めつけ嫌がらせをしたんだ? その罰を今、まとめて受けるが良い」
「私は……私は……!」
「ええい! 連れて行け!」
王太子の判決の声が響き私は夜会から引きづり出された。私をよく知る私の家族だった者達の前から、彼らの人生のストーリーから私は排除される、このまま永遠に。
これで、良い、良いのだ。
騒がしい広間から追い出され、背中で扉が締められると突然暴れるのをやめて静かになった私を衛兵達は不思議そうに見下ろしていた。そして、ほぼ着の身着のままで馬車に押し込まれる。
私は自分の行いを振り返る。
私の名前はアクア・クレスト。クレスト公爵家の長男として育てられた男のオメガだ。クレスト家の人間に相応しい白銀の髪の毛に透明度の高い湖のような澄んだ水色の瞳をしている。容姿は整っており、背はそこそこだろう。黙っていれば見栄えがするのに悪態ばかりつく嫌味で悪名高い公爵令息だ。
そして私の双子の弟のアメシス。アメシスは目の色が紫でそれ以外、私たちは外見はそっくりな双子と言われていた。問題ばかり起こす兄のアクアと違い、聡明でいつも微笑んでいて、誰にでも優しい完璧な公爵令息。
しかも王太子殿下の婚約者。どこからどう見ても非の打ち所がない弟。それが私達の評価。
「アメシス? 良い物持ってるね?」
「ア、アクア……これはだめだよ、これは殿下が僕の為にくださった大切な指輪だよ!」
「良いだろ!? 一つくらい! たくさんいただいているんだろ」
私はそうやってアメシスの指輪を取り上げて持ち去ってしまう。
「酷い……アクア、返して……?」
「あんなもん売っちゃったよ? 結構いい金額になったぞ」
「ひっ、酷い!!」
泣き崩れるアメシスを鼻で笑って自室に戻ってしまう。
「アメシス様、お可哀想に……」
「同じ坊っちゃまですのに、アクア様とアメシス様は……」
使用人の評価もそうだった。
学園に行けば下から数えた方が早い私。常に上位をキープしているアメシス。
「なんで双子なのに……」
「アクア様って苦手だわ……すぐ怒るし、怖い」
学園1の嫌われ者と言っても過言ではなかった。そのアクアが卒業パーティーで王太子に断罪されたのだ。
卒業生、在校生合わせて皆の拍手喝采が聞こえる。これで安心出来ると。あの乱暴者が消えたと安堵の息を吐いたのだ。
「お許しください! 殿下、彼はアレでも私の兄なのです! 命だけは、命だけはお助け下さい!」
「シス……君はあんな男にも慈悲をかけるのか……なんと心の優しい……やはり私の婚約者は君だけだ。ああ、シス、可愛い私のシス……もっとそばに」
「はい……サフィール様……」
私は何とか表情を押し殺す。まるでシナリオがあるかのような王太子殿下と美しい公爵令息。とても似合いのアルファとオメガだろう。
公爵令息のシスことアメシスは正真正銘のオメガだ。オメガであれば男でも女でもアルファの子供を産む事が出来る。だから、アメシスは麗しのアルファ、碧眼王太子サフィール様の小さな頃からの婚約者だ。
「シスの願いだ、叶えてやろう。よいだろうか。クレスト公」
「ええ、アメシスの願いならば。誰か、この不埒者を引っ立てよ! 国外追放だ、それならばよいですかな」
「ああ、妥当な所だろう。シスもそれでよいね?」
「はい、サフィール様」
悲しげにサフィール様の胸に顔を埋める。目が合うと責めるような視線が絡む。ああ、まだか。
「は、離せ! 嫌だ追放なんて! 冗談じゃない!!」
私は衛兵に腕を掴まれまいとむやみやたらに手を振り回しバタバタと暴れる。
「アクア! この後に及んで情けない! 捕まえて国境に捨ててこい!」
「い、嫌だ! 父上、助けて下さい。捨てられるなんて嫌です!」
父であるクレスト公爵の足に無様に縋るも蹴飛ばされた。
「お前などもう息子でも何でもない! 育ててやった恩も忘れて私の邪魔ばかりする! クレスト家からも追放だ!」
「そんな……そんな酷い!」
私は蹴られた腕を押さえながら涙を零す。痛い、折れてはいないだろうが腫れはするだろう。
「酷い?! それはお前の事だろう、アクア! お前はシスを筆頭に、一体どれだけの人間を痛めつけ嫌がらせをしたんだ? その罰を今、まとめて受けるが良い」
「私は……私は……!」
「ええい! 連れて行け!」
王太子の判決の声が響き私は夜会から引きづり出された。私をよく知る私の家族だった者達の前から、彼らの人生のストーリーから私は排除される、このまま永遠に。
これで、良い、良いのだ。
騒がしい広間から追い出され、背中で扉が締められると突然暴れるのをやめて静かになった私を衛兵達は不思議そうに見下ろしていた。そして、ほぼ着の身着のままで馬車に押し込まれる。
私は自分の行いを振り返る。
私の名前はアクア・クレスト。クレスト公爵家の長男として育てられた男のオメガだ。クレスト家の人間に相応しい白銀の髪の毛に透明度の高い湖のような澄んだ水色の瞳をしている。容姿は整っており、背はそこそこだろう。黙っていれば見栄えがするのに悪態ばかりつく嫌味で悪名高い公爵令息だ。
そして私の双子の弟のアメシス。アメシスは目の色が紫でそれ以外、私たちは外見はそっくりな双子と言われていた。問題ばかり起こす兄のアクアと違い、聡明でいつも微笑んでいて、誰にでも優しい完璧な公爵令息。
しかも王太子殿下の婚約者。どこからどう見ても非の打ち所がない弟。それが私達の評価。
「アメシス? 良い物持ってるね?」
「ア、アクア……これはだめだよ、これは殿下が僕の為にくださった大切な指輪だよ!」
「良いだろ!? 一つくらい! たくさんいただいているんだろ」
私はそうやってアメシスの指輪を取り上げて持ち去ってしまう。
「酷い……アクア、返して……?」
「あんなもん売っちゃったよ? 結構いい金額になったぞ」
「ひっ、酷い!!」
泣き崩れるアメシスを鼻で笑って自室に戻ってしまう。
「アメシス様、お可哀想に……」
「同じ坊っちゃまですのに、アクア様とアメシス様は……」
使用人の評価もそうだった。
学園に行けば下から数えた方が早い私。常に上位をキープしているアメシス。
「なんで双子なのに……」
「アクア様って苦手だわ……すぐ怒るし、怖い」
学園1の嫌われ者と言っても過言ではなかった。そのアクアが卒業パーティーで王太子に断罪されたのだ。
卒業生、在校生合わせて皆の拍手喝采が聞こえる。これで安心出来ると。あの乱暴者が消えたと安堵の息を吐いたのだ。
272
あなたにおすすめの小説
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる