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7 売られてゆく
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「ネージュの貴族にお前を売る」
「……分かりました」
元いた国から二つも離れた国名を出された。それだけアメシスと離れれば少しは安心出来そうだ。
そして馬車に乗せられ、私は国から遠ざかる。もうあの生活に戻らなくて済む事を祈りつつ。
「これがそうですか?」
「ああ、若いオメガで見た目も悪くない。訳ありだがそちらの要望通りだろう?」
「……良いでしょう」
私はあまり歓迎されていないようだと悟らざるを得ない状況だった。少しの間だけ目を閉じる。それでもいい、アメシスに言われるままに人を傷つけ、言いたくもない罵詈雑言をまき散らすよりよっぽどいい。この大きくて広そうな屋敷の片隅ででも暮らせてもらえたらそれでいい。
そうして私は立派なお屋敷に一人残された。
「ついて来なさい」
「はい」
執事らしき人についてゆく。広くて大きなお屋敷で、クレストの邸宅より大きいかもしれない。一階の日当たりが良く割と広い部屋に案内された。中は整えられていて、一通りの物が揃っているように見えた。
「貴方は旦那様の後妻としてここに売られてきました。行動は慎むように」
「……はい」
「後程、結婚誓約書を持って参りますので記入願います」
「……はい」
私はどうやら、結婚相手の顔も知らないままに結婚をするようだ。
「旦那様はとてもお忙しい方。お手間をかけさせないよう。昼間は一階は歩き回っても結構ですが、2階には上がらぬよう」
「……はい」
誰の記入もない結婚誓約書に自分の名前を書く。後から旦那様になる方の名前が書かれるののだろう。いよいよ自分が誰と結婚するのか分からない。
それでも今までよりマシな生活になるはずだと羽根ペンを手に名前をアクアとだけ記入した。
名前も知らない執事らしき人は確認して去って行く。
「……疲れた……」
そのままふかふかなベッドに倒れ込むと意識を失うように眠りに落ちる。この先のことは今は考えないようにしながら。
最初の数日はメイドが起こしに来て、普通の朝食があった。着替えも持ってきてくれたし、今まで着ていた服も洗ってくれた。
「新しい奥様さぁ」
「ああ、聞いた聞いた! 旦那様の上司や親戚があまりにうるさいからそれを黙らせる為だけに迎え入れたんでしょ?」
「そうなのよ! 顔も見にこないんだって! 執事のロバートさんももう無視してるらしいよー」
たまたま窓を開けていたら、お喋りが聞こえて来た。そのメイド達の囀りからやっと自分の置かれている状況が分かってきた。
なるほどと納得する。誰かと結婚していると言う事実だけが欲しい人だったんだ。そして後妻と言っていた。きっと最初の奥さんとの間に跡継ぎもいるんだろう、だから本当に名前と存在だけが必要だったという事か。
それならそうと教えて貰いたかった。何をさせられるのかとドキドキして暮らしていたのに。
ほっとため息をつき、力が抜けた。ここ数日、アメシスが私を呼びつける
「アクアー! どこなのっ?!」
と言う幻聴も減って来たような気がする。
「このアクセもう飽きた、アクア売ってきて」
「えっ……そ、それは公爵様に一昨日買ってもらったイヤリングでしょ……」
一緒に出掛けて上手くおねだりして手に入れたものだよね?「わあ!ありがとうお父様!一生大事にします!」ってニコニコ笑ったよね?
「何? アクアの癖にボクに指図すんの??」
「……ごめんなさい……」
「早く裏口から出てお金に変えてきて!」
「わ、分かったよ……」
そして私はこっそり街へ行き、その大ぶりな紫水晶のついたイヤリングを売る。すごく足元を見られて買い叩かれているけれど、素早く帰らなくちゃいけないから我慢する。
急いで戻ってお金をアメシスに渡せば
「こんな程度なのぉ?買った時もっともっと高かったじゃん?」
「……だって、買い取ってくれるところなんて他に知らないし……」
「まあ、良いや」
そして邪魔な犬でも追い払うようにあっちへ行けと追い払われる。
「アクアっ! お前と言うやつは!!」
いつも通り、数日後に公爵様に殴られる。
「アメシスのアクセサリーを無理矢理取り上げて売っぱらっただと?! 貴様それでも公爵家の人間かっ!!」
「やめて、お父様止めて! お兄様を叩かないでー!」
イヤリングがない事に公爵が気がついたのか、しおらしくアメシスが漏らしたのか、メイド達が訴えてたのか。
とにかく私はアメシスに嫉妬したのか、虐めたのか、嫌がらせの為か。アメシスの大切なアクセサリーを無理矢理取り上げ売り払った意地悪な人間になっていた。そして無理やり大切なものを取られたのに、兄を庇って泣く心優しいアメシス。
「ごめんなさい……」
「おお、アメシス! お前が謝罪することなど何もないのだよ? アクセサリーなど、もっと良い物を買ってやるからな? おい、アクアを反省室へ連れて行けっ!」
私は執事に乱暴に腕を掴まれ引き摺られて行く。このやり取りももう慣れた。何度も何度もアクアはアメシスの物を取り上げるそんなに何度もやって怪しいとは思わないのだろうか。
「自分が旦那様から愛されていないから、その腹いせか?」
なんて執事からも言われた。それでも反省室に居ればアメシスに無茶な事を言われない。安心して膝を抱える事が出来たっけ。
「それに比べれば、ここは良い所だよね?」
誰も私を呼びつけたりしないんだから。
「……分かりました」
元いた国から二つも離れた国名を出された。それだけアメシスと離れれば少しは安心出来そうだ。
そして馬車に乗せられ、私は国から遠ざかる。もうあの生活に戻らなくて済む事を祈りつつ。
「これがそうですか?」
「ああ、若いオメガで見た目も悪くない。訳ありだがそちらの要望通りだろう?」
「……良いでしょう」
私はあまり歓迎されていないようだと悟らざるを得ない状況だった。少しの間だけ目を閉じる。それでもいい、アメシスに言われるままに人を傷つけ、言いたくもない罵詈雑言をまき散らすよりよっぽどいい。この大きくて広そうな屋敷の片隅ででも暮らせてもらえたらそれでいい。
そうして私は立派なお屋敷に一人残された。
「ついて来なさい」
「はい」
執事らしき人についてゆく。広くて大きなお屋敷で、クレストの邸宅より大きいかもしれない。一階の日当たりが良く割と広い部屋に案内された。中は整えられていて、一通りの物が揃っているように見えた。
「貴方は旦那様の後妻としてここに売られてきました。行動は慎むように」
「……はい」
「後程、結婚誓約書を持って参りますので記入願います」
「……はい」
私はどうやら、結婚相手の顔も知らないままに結婚をするようだ。
「旦那様はとてもお忙しい方。お手間をかけさせないよう。昼間は一階は歩き回っても結構ですが、2階には上がらぬよう」
「……はい」
誰の記入もない結婚誓約書に自分の名前を書く。後から旦那様になる方の名前が書かれるののだろう。いよいよ自分が誰と結婚するのか分からない。
それでも今までよりマシな生活になるはずだと羽根ペンを手に名前をアクアとだけ記入した。
名前も知らない執事らしき人は確認して去って行く。
「……疲れた……」
そのままふかふかなベッドに倒れ込むと意識を失うように眠りに落ちる。この先のことは今は考えないようにしながら。
最初の数日はメイドが起こしに来て、普通の朝食があった。着替えも持ってきてくれたし、今まで着ていた服も洗ってくれた。
「新しい奥様さぁ」
「ああ、聞いた聞いた! 旦那様の上司や親戚があまりにうるさいからそれを黙らせる為だけに迎え入れたんでしょ?」
「そうなのよ! 顔も見にこないんだって! 執事のロバートさんももう無視してるらしいよー」
たまたま窓を開けていたら、お喋りが聞こえて来た。そのメイド達の囀りからやっと自分の置かれている状況が分かってきた。
なるほどと納得する。誰かと結婚していると言う事実だけが欲しい人だったんだ。そして後妻と言っていた。きっと最初の奥さんとの間に跡継ぎもいるんだろう、だから本当に名前と存在だけが必要だったという事か。
それならそうと教えて貰いたかった。何をさせられるのかとドキドキして暮らしていたのに。
ほっとため息をつき、力が抜けた。ここ数日、アメシスが私を呼びつける
「アクアー! どこなのっ?!」
と言う幻聴も減って来たような気がする。
「このアクセもう飽きた、アクア売ってきて」
「えっ……そ、それは公爵様に一昨日買ってもらったイヤリングでしょ……」
一緒に出掛けて上手くおねだりして手に入れたものだよね?「わあ!ありがとうお父様!一生大事にします!」ってニコニコ笑ったよね?
「何? アクアの癖にボクに指図すんの??」
「……ごめんなさい……」
「早く裏口から出てお金に変えてきて!」
「わ、分かったよ……」
そして私はこっそり街へ行き、その大ぶりな紫水晶のついたイヤリングを売る。すごく足元を見られて買い叩かれているけれど、素早く帰らなくちゃいけないから我慢する。
急いで戻ってお金をアメシスに渡せば
「こんな程度なのぉ?買った時もっともっと高かったじゃん?」
「……だって、買い取ってくれるところなんて他に知らないし……」
「まあ、良いや」
そして邪魔な犬でも追い払うようにあっちへ行けと追い払われる。
「アクアっ! お前と言うやつは!!」
いつも通り、数日後に公爵様に殴られる。
「アメシスのアクセサリーを無理矢理取り上げて売っぱらっただと?! 貴様それでも公爵家の人間かっ!!」
「やめて、お父様止めて! お兄様を叩かないでー!」
イヤリングがない事に公爵が気がついたのか、しおらしくアメシスが漏らしたのか、メイド達が訴えてたのか。
とにかく私はアメシスに嫉妬したのか、虐めたのか、嫌がらせの為か。アメシスの大切なアクセサリーを無理矢理取り上げ売り払った意地悪な人間になっていた。そして無理やり大切なものを取られたのに、兄を庇って泣く心優しいアメシス。
「ごめんなさい……」
「おお、アメシス! お前が謝罪することなど何もないのだよ? アクセサリーなど、もっと良い物を買ってやるからな? おい、アクアを反省室へ連れて行けっ!」
私は執事に乱暴に腕を掴まれ引き摺られて行く。このやり取りももう慣れた。何度も何度もアクアはアメシスの物を取り上げるそんなに何度もやって怪しいとは思わないのだろうか。
「自分が旦那様から愛されていないから、その腹いせか?」
なんて執事からも言われた。それでも反省室に居ればアメシスに無茶な事を言われない。安心して膝を抱える事が出来たっけ。
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誰も私を呼びつけたりしないんだから。
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