【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

鏑木 うりこ

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19 順調な私と旦那様

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 それから正式に私はこの家と領地の経営についてしっかり学び、育った国との礼儀やマナーの差、言葉の発音などを直していった。

「アクア様は覚えが早いですね。学ぶ姿勢も素晴らしいし基礎が出来ていらっしゃるから何でも吸収が早くていらっしゃる」

「私の妻だからな」

「だ、旦那様っ!勉強位一人でできます!」

 私の行く場所に旦那様も付いてきてしまうから、私は何もすることがない時は旦那様と一緒に執務室へ行き、領地の事や簡単な書類整理を手伝ったりしていた。

「アクアこっちに」

「……」

 大抵は何の手伝いもさせてもらえずに、旦那様の膝の上に座らされているだけだったけれど。

「そこに奥様がいるといないでは、旦那様の仕事の速度が3倍は違いますので」

「そ、そんなに!?」

「ええ、奥様が褒めればもう少し早くなるのでは?」

 そんな冗談を交えつつ仕事をしたり。



「……絶対に嫌だと断ったら王命だと横暴な事を言われてしまった」

「お、王命!?」

 ぶすっとものすごく機嫌悪く頬を膨らませる勢いの旦那様に連れられて王宮にやってきたり。

「あの仏頂面で笑った事などないノエルの新しい妻をみたくてな!呼びつけてすまなんだが……これはまた可愛いな」

「黙れ、見るな。アクアが減る」

 旦那様が陛下との間に立ち塞がって、背中に私を隠してしまう。や、やめて下さい、マナー違反もいい所です。

「あ、あのノエルがコレか……明日は天変地異か!?いやアクアの力、なのか」

「????」

 国王様と言い合いの喧嘩をしている旦那様に目を白黒させたり、色々な事があった。ふ、不敬ですっ!

「アクア、お前の今までに眉をひそめる者もいるだろう。しかし、あのタングストン公爵を溶かした功績の方が何倍も素晴らしい。公爵夫人として今後も我が国の為に励んで欲しい」

「は、はい!」

 国王陛下からお言葉もいただいてしまい物凄く緊張したが、いつも隣に旦那様がいて下さったから大丈夫だった。

「アクア」

「旦那様……ノエレージュ様……」

 優しい目。赤い色が恐ろしいなんて言われて来たと仰られていたけれど、ちっとも怖くなんかない。
 買っていただいた大ぶりのルビーより澄んできれいな瞳がずっと私を見て離さないーーーー。

「おい、余の前だぞ?何見つめ合ってんだよ!ノエル、お前マジで変わったな?恐怖の暗黒公爵はどこへ行ったんだぁ?」

 最初は誰がこんな酷い言葉遣いをするのかと心底驚いたけれど、この場にいる一番偉い人……つまりは国王陛下の台詞だと知って倒れるかと思ったものだ。
 陛下と旦那様は学園も同期で昔からこうらしい。

「健在ですが、何か?このクソ陛下」

 私ではなく陛下を見上げる旦那様の目が物凄く鋭くなって、何だか周りの空気が冷たくなるような、昼間なのに暗い闇に囲まれた様なそんな幻覚が見えそうなくらい重い空気になる。
 知らなかったけれど、旦那様の「いつも」はこんな感じだったらしい。

「ひえっ!怖っ!」

 冗談ではなく陛下が冷や汗をかいていらっしゃるし、私も何だか機嫌の悪そうな旦那様を見るのは嫌だなと思ってしまう。

「ほ、ほら!ノエル、アクアが怖がってるぞ?ほらほら、な?!睨むのはやめてくれ、お前は顔が整っている分怖いんだ」

「……」

「……」

 陛下から私の方に降りてきた視線。ごめんなさい、旦那様。私は旦那様に笑っていて欲しいんです、駄目でしょうか?そう口には出せなかったけれど、旦那様に私の気持ちは伝わったようで、眉間に寄っていたシワが無くなった。

「私の妻は可愛いな」

 こ、こんな時になんて事を!嬉しいけれど恥ずかしくて顔に熱が集まるのを必死で耐えるけれど、そんなの耐えられない!!

「は、はひぃ……」

 変な声まで出ちゃった!もう無理、無理ですーー!!

「……呼んで悪かったよ……頼むから家でやってくれないか……お幸せにぃ~」

「言われなくても幸せだから安心しろ」

 旦那様に肩を抱かれて、退出の挨拶もそこそこに出てきてしまった!こんなマナー違反を犯すなんて……なんて情け無いんだ、私は!

「すいません、私がいたらないばかりに旦那様に恥をかかせてしまいました……」

 こんなんじゃ旦那様をお支えしていけない!

「アクアは完璧だったよ。あいつがクソなだけだ」

 ひょいっと抱え上げられ、旦那様は足早に進む。

「疲れただろう?今日はもう帰ってゆっくりしよう」

「はい……こんな情け無い私でも見捨てないで下さい。もっと頑張りますから」

「見捨てるなんてする訳がない!アクアは私の大切で可愛くて素晴らしい伴侶だ!一生側から離れないぞ」

「旦那様……」

 なんて心の広い素敵な旦那様何だろう!私は甘えてしまいそうだ、しっかりしないと。



「……本当にずっといちゃついてるんだな、あの悪魔公爵が!」

「運命のつがいってすげーな!」

 そんな話をお城の衛兵までしていた事なんて私は気がつかなったのだけれど、私はここでも受け入れて貰えたようだった。




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