27 / 54
25 私の旦那様
しおりを挟む
「さて、クレスト公。其方の息子が我が国の貴族タングストン家に売られて来て監禁されておると言う話であったが、どうも違うように余には見えるのだが?」
「し、しかしそこにいるのは私の息子のアクアです!き、きっと脅されて……そ、そうだよな?アクア、私達が助けに来たんだ!サフィール殿下にも私達から口利きをするから、戻って来て良いのだ!」
必死で私に声をかけるクレスト公爵。なんだろう、昔はあんなに怖かったのに今は全然怖くない。殴られたり蹴られたり絶対に逆らえないと思っていたのに、よく見るとただの頭髪の侘しいおじさんに見える。
だって旦那様と比べたら、大した事ないんだもの。
「アクア、他国の公爵がお前を息子だと言っているよ」
旦那様は微笑む、それに私も微笑み返す。
「ふふ、そんなはずないですよ。だって私は旦那様もご存知の通り平民の生まれですもの」
「その通りだ。そう言う事だ、やはり私の妻はクレスト公の息子である筈がないのだよ」
旦那様は陛下にも聞こえるように言い、私を引き寄せる。旦那様に寄り添うと何だかとても温かく感じる……私は冷たくなっていたのかな?やっぱり、長年染み込んだあの人達の呪縛からまだ逃れていないんだ。
大丈夫、私の隣に。
はい、旦那様の隣に居れば私は大丈夫です。そっと旦那様の服の端を掴んでみる。旦那様の笑みが深くなるから、私もとても嬉しい。
「そう言う事は帰ってからな?タングストン公?」
しまった、まだ陛下の前だった!アメシスやクレスト公爵の存在もすっかり頭の中から消えていた……まだ居たんだった。
「ア、アクアぁ……っ!!」
アメシスの可愛らしい顔が歪んで、怖い声が漏れて来る。私に命令する時の、あの冷たくて高圧的な声。やめなよ、アメシス。君のファンになりかけたネージュ国の衛兵さんが眉を顰めてるよ?
「人妻だけど、アクア様の方が可愛いな……」
旦那様、睨むのはやめてあげて下さいませ。
「アクア!お前と言う奴は……そうだ、帰って来たらお前の両親に合わせてやろう……我が公爵家の力を持ってすれば簡単に探し出せるからな?さあ帰るぞ、アクア」
両親!平民だった私の家族!ど、どうしよう……私も両親に会いたい。生きているかどうかさえわからない人達。旦那様、私は会いたいです、平民の両親に。
「その必要はない」
冷たい旦那様の宣言。
旦那様……旦那様が言うなら……そうなのですよね?旦那様は服を握る私の手を静かに外し……、
温かい手で握り直してくれた。
「陛下。人を呼ぶ事をお許し下さい」
「構わぬ」
旦那様のとても温かい手。私を見つめる優しい赤い目。疑うなんてしなくて良い。
この謁見の間に繋がる扉がゆっくり開いて、入ってきたのは懐かしい顔ぶれだった。
「と、父さん……母さん……!」
「アラン……まあ、立派になって……!」
駆け寄りはしなかったけれど、涙は溢れてしまった。父さんと母さんだ!弟や妹も全員いる!
「今朝到着しました。彼らがアクア……アランの両親と兄弟です。色々あり行方不明になっておりましたが、ネージュへ来ないかと誘った所、快く応じてくれまして」
もしかして、旦那様は探して下さっていたの?!もう近くにいるから探す必要はないって事だったんですね?
「爵位の一つもと思いましたが、そちらは拒否されてしまいましてね。自分達は平民で良いと。ただアクア……元の名前はアランと言うそうですが……一目会いたいと」
旦那様はまず陛下に説明をしてからクレスト公爵に冷たく笑いかけた。
「私の妻の身内は私が保護した。ますます貴殿の長男であるというアクアと私の妻が別人であると分かっただろう?安心して国へ帰ると良い」
家族を人質のように扱おうとしたクレスト公爵を分かりやすく侮蔑の目で見て旦那様は強く言い放つ。
「ひっ……」
皆から恐れられていたと言う威圧感満載の視線は直撃したら心臓が止まりかねない。クレスト公爵は寿命が7.8年ほど奪われたような土気色の顔になってしまった。
「し、しかしそこにいるのは私の息子のアクアです!き、きっと脅されて……そ、そうだよな?アクア、私達が助けに来たんだ!サフィール殿下にも私達から口利きをするから、戻って来て良いのだ!」
必死で私に声をかけるクレスト公爵。なんだろう、昔はあんなに怖かったのに今は全然怖くない。殴られたり蹴られたり絶対に逆らえないと思っていたのに、よく見るとただの頭髪の侘しいおじさんに見える。
だって旦那様と比べたら、大した事ないんだもの。
「アクア、他国の公爵がお前を息子だと言っているよ」
旦那様は微笑む、それに私も微笑み返す。
「ふふ、そんなはずないですよ。だって私は旦那様もご存知の通り平民の生まれですもの」
「その通りだ。そう言う事だ、やはり私の妻はクレスト公の息子である筈がないのだよ」
旦那様は陛下にも聞こえるように言い、私を引き寄せる。旦那様に寄り添うと何だかとても温かく感じる……私は冷たくなっていたのかな?やっぱり、長年染み込んだあの人達の呪縛からまだ逃れていないんだ。
大丈夫、私の隣に。
はい、旦那様の隣に居れば私は大丈夫です。そっと旦那様の服の端を掴んでみる。旦那様の笑みが深くなるから、私もとても嬉しい。
「そう言う事は帰ってからな?タングストン公?」
しまった、まだ陛下の前だった!アメシスやクレスト公爵の存在もすっかり頭の中から消えていた……まだ居たんだった。
「ア、アクアぁ……っ!!」
アメシスの可愛らしい顔が歪んで、怖い声が漏れて来る。私に命令する時の、あの冷たくて高圧的な声。やめなよ、アメシス。君のファンになりかけたネージュ国の衛兵さんが眉を顰めてるよ?
「人妻だけど、アクア様の方が可愛いな……」
旦那様、睨むのはやめてあげて下さいませ。
「アクア!お前と言う奴は……そうだ、帰って来たらお前の両親に合わせてやろう……我が公爵家の力を持ってすれば簡単に探し出せるからな?さあ帰るぞ、アクア」
両親!平民だった私の家族!ど、どうしよう……私も両親に会いたい。生きているかどうかさえわからない人達。旦那様、私は会いたいです、平民の両親に。
「その必要はない」
冷たい旦那様の宣言。
旦那様……旦那様が言うなら……そうなのですよね?旦那様は服を握る私の手を静かに外し……、
温かい手で握り直してくれた。
「陛下。人を呼ぶ事をお許し下さい」
「構わぬ」
旦那様のとても温かい手。私を見つめる優しい赤い目。疑うなんてしなくて良い。
この謁見の間に繋がる扉がゆっくり開いて、入ってきたのは懐かしい顔ぶれだった。
「と、父さん……母さん……!」
「アラン……まあ、立派になって……!」
駆け寄りはしなかったけれど、涙は溢れてしまった。父さんと母さんだ!弟や妹も全員いる!
「今朝到着しました。彼らがアクア……アランの両親と兄弟です。色々あり行方不明になっておりましたが、ネージュへ来ないかと誘った所、快く応じてくれまして」
もしかして、旦那様は探して下さっていたの?!もう近くにいるから探す必要はないって事だったんですね?
「爵位の一つもと思いましたが、そちらは拒否されてしまいましてね。自分達は平民で良いと。ただアクア……元の名前はアランと言うそうですが……一目会いたいと」
旦那様はまず陛下に説明をしてからクレスト公爵に冷たく笑いかけた。
「私の妻の身内は私が保護した。ますます貴殿の長男であるというアクアと私の妻が別人であると分かっただろう?安心して国へ帰ると良い」
家族を人質のように扱おうとしたクレスト公爵を分かりやすく侮蔑の目で見て旦那様は強く言い放つ。
「ひっ……」
皆から恐れられていたと言う威圧感満載の視線は直撃したら心臓が止まりかねない。クレスト公爵は寿命が7.8年ほど奪われたような土気色の顔になってしまった。
301
あなたにおすすめの小説
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる