【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

鏑木 うりこ

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28 知らない所で起こっていた事

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「アランーーー!」

「父さん!母さん!みんなーーー!」

 ソワソワしながらタングストン家に戻り、私はやっと懐かしい家族と抱き合った。

「アランが連れて行かれた後、怪しい奴らがうろつくようになって……恐ろしくて逃げたんだ」

「良かった……きっと公爵の手の者だろうね」

 情けない顔をする父さんだけど、平民がどうこう出来ることじゃないからね。平民の父さんたちが取った行動は最良だったと思う。

「アランに知らせたくても私達は字も書けないし、会いになんて到底無理で……」

「分かってる……無事に逃げてくれて本当に良かった……!」

「アラン……お前と引き換えに置いてかれた金は丸々取ってあるんだ。何度も返してくれと行ったんだが門前払いされて」

 なんて危ない事を!そのまま殺されちゃうかもしれないのに!

「そんな危ないことしないで!もう大丈夫だからね?」

 良かった……家族全員無事で良かった。

「兄ちゃん、随分きれいになったねぇ」

「凄い、兄ちゃん!」

 弟や妹はキラキラした目で私を見上げてくるから笑ってしまう。新しい弟妹も出来てたし、仲良しで何よりだよ。

「そりゃ兄ちゃんは公爵様と結婚したんだから、きれいになるよ?皆、兄ちゃんの旦那様に挨拶してくれた?」

「勿論だよ!それにしてもびっくりしたー。ここのお家の人達が突然こっちに来ませんかって言って」

「アラン兄ちゃんが結婚した旦那様の家だよって。無理矢理連れてったあの家じゃないから安心してって!」

 旦那様と側に立つ執事さんを見ると、にこりと笑ってくれた。クレスト家の事を考えると先手を打ってくれたんだろう。家族を人質に取られたら、私はクレスト家へ戻らなければならなかったかもしれない。後で沢山お礼を言わなくちゃ!
 でもいまは10年ぶりにあった家族と色々話したい……!旦那様は気を使って私を自由にしてくださっているし、メイド達もお茶やお菓子を持って来てくれた。

「今日は泊って行ってゆっくりお話をされると良いでしょうと旦那様が仰っておられましたよ」

 私の家族とは言え全員平民だから、メイド達より身分は下なのに大切に扱ってくれる。今だけは甘えてしまおう、そう思った。


「しかし平民で良いと仰っておりましたが、アクア……いえ、アラン様と婚姻なさる際にアラン様には爵位を一つつけましたので、アラン様のお父様となりますと、そのままレイリントン伯爵と言う事になっているのですが」

「後から伝えればよかろう。教会に妻の名前変更は済ませてあるな?」

「ええ、勿論でございます」

 そんな会話を旦那様と執事さんがしていたらしいけれど、私には後で教えてもらう事になるし、父さんは腰を抜かしてひっくり返るしで大変だった。

 それと……。

「ア、アクア様……やっぱりアクア様じゃなかったんですね!」

「え……?クレスト家にいたメイドだよね……?」

「ええ!まさか瞳の色を変えることが出来る薬があったなんて!それを知ってずっとわだかまっていた疑問が晴れました!」

 タングストン家に使用人が増えていた。全員見知った顔でものすごく驚いたけれど、全員アクア……いや、アメシスが難癖をつけて解雇した人達だった。

「あの意地悪そうなのに理不尽な事を言わないアクア様が突然人が変わったように私達をクビにするなんて。ずっとずっとおかしいなと思っていたんです」

「本を読んで大人しくしているのが好きなアクア様が突然暴れるのはおかしいなと思っていたんです。瞳の色を替えたと聞いて納得しました。実際アメシス様の方が使用人を見下していましたからね……」

「私達に気づかれたから、私達はアメシス様にクビにされたんですね……」

 この人達も執事さんが探し出してきてくれたそうだ。

「ご、ごめんなさい……あの時はどうしてもアメシスにもクレスト公爵にも逆らえなかったんです」

 突然解雇されて皆、困っただろうし苦労したと思う。私がもっとちゃんとやれていればそんな苦労はかけなかったのに。

「分かってます、大丈夫ですよ」

 全然大丈夫な事なんてなかっただろうに、皆は笑顔で私を許そうとしてくれる。

「それより今日からまたよろしくお願いしますね。アクア様……いえ、アラン様のお陰でこちらに高給で雇われたんですから」

 そ、そうなの?全員の顔を見渡すと、皆笑っていた。誰も無理なんてしていない、納得して働いてくれようとしている。

「お小さい頃のアラン様の思い出話を聞きたいとおっしゃる方がいましてね?さて、何を話しましょうか、10歳の頃でしたかね?おねしょを……」

「あ、あれは!アメシスがやったのに私に押し付けて……!!」

 前日にアメシスが皆に隠れて火遊びをして、それで!しかもアメシスが自分のベッドでやらかしたのに、何故か私のせいにされた事じゃないか!
 慌てて否定すると、この部屋にいた全員にくすくすと笑われてしまった。でも嫌な笑い方じゃなくて、子供の頃の失敗を思い出して懐かしむ、そんな感じの笑い方。


「だからわたしじゃないって言ったのにー!」

「ふふふ、そうでしたね。アクア様はそんな事なさらないですもんね」

「うん!」

 10歳だった頃の私が頭ごなしに否定され、決めつけられ、躾と称して殴られてた。その痛みの記憶が認められ、信じられて一つづつ溶けて行くようだった。




 
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