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ボクが悪役令息?!

3 世界の損失は誰も望まないぞ!

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「ア、アランが死にそう?!」

「なんでも悪阻が酷過ぎて、何も喉を通らないらしい……って、アメシス?アメシスーーー!」

 お父様とそんな話をしていたはずなんだけど、ボクは気がついたら高速馬車の御者に

「ネージュまでぶっ飛ばして!」

 ってお願いしていた。ネージュのアランの所までどんなに早くても片道10日はかかる。でもアランが死にそうなんて!どうしよう、アランが死んだら……アランはもっともっともっともっと幸せにならなきゃいけない子なのに、こんな所で死んで良い子じゃないのに!!
 どうしよう、どうしよう!ボクに、ボクに出来る事はないのかな??

「つわり、って言ってた。赤ちゃんがいる人が気持ち悪くなって吐いちゃう奴だよね。姉ちゃんも言ってたな……」

 前世でボクの姉ちゃんも気持ち悪いって言ってた……姉ちゃんは酸っぱい物じゃなくて何を食べてたっけ?何だっけ……何だっけ……。
 めちゃくちゃ揺れる高速馬車だったけど、ボクはウトウトと居眠りをして……夢を見た。姉ちゃんは赤くて黄色のアルファベットがついたあの濃ゆい食べ物を何故か馬鹿みたいに食べている。

「知らないけど、これなら平気なのよねー。さっぱりした物じゃないんだよね」

 不思議だったけど、そんな事もあるんだ。ボクはアランの家に着く前にポテトフライを買い求めて、その紙袋を片手に突撃したんだ。

「アメ……シス……?」

 ベッドの上で横になっているアランの顔を見てボクは泣きそうになった。ボクよりふくふくして丸くなりかけた顔がゾンビみたいにげっそりやつれてる。顔色なんて有り得ないくらい真っ白だし、目が虚ろなのに周りに心配をかけないように元気そうに振る舞って……振る舞い切れていない。
 そんな無理をしている様子は周りの人にモロバレで、でも周りも気を遣ってアランの負担にならないよう接しようとして……出来てない。

 全部が全部、悪循環していた。

 そんな中に飛び込んだボクを引きずり出そうとするのは当然。だからボクは物凄く急いでアランの口にポテトフライを突っ込んだ!お願い、食べれる物であって!!

「お、美味しい……」

 ポロポロとアランは泣き出してしまった。アランは責任感が元から強かったから、自分の不甲斐なさやら、皆に気を遣わせてるのが申し訳なかったんだよね。分かるよ、伊達に一緒に暮らしてなかったもんね。

「食べられます……ふええ……」

 うん、アランはもう大丈夫だね!さぁてお邪魔虫は帰ろーっと!箒で叩かれたくないしね!ボクの玉のお肌に傷がついたら世界の損失だよ!
 
 ボクは本当に忙しいんだからね!嘘じゃないんだからね!!

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