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ボクが悪役令息?!

2 したたか、ですから

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「ふん、婚約を破棄された出来損ないの癖に」

「破棄ではなく解消ですよ。正確な情報も覚えられないとは、ふふ。良いですね、私の敵にすらなり得ない」

「な、なんですって?!」

公爵令息ボクに楯突いて来るのは……えーと、侯爵家のボクより3つ年上のコだな。確かちゃんと婚約者がいたのに振ったのかな?
 まあサフィール様に選んでいただけるなら、その甲斐はあるだろうけどね?

「ア、アメシスの癖にぃ……!」

 アメシスの癖にって何??あーそう言えば社交界の面倒な時はボクじゃなくてアランが出てたんだ。きっと優しいアランの事だ。こんな令嬢でも立ててやってたんだろうな。当たり障りなく、適当な所で引いてたんだろうね。
 でもボクは負ける気はないし、引く気もない。並み居る令嬢全てを駆逐して、殿下の婚約者に返り咲くのはボクなんだから!!

 
「何というかアメシスはしたたかね。サフィール」

「ええ。でも今の生き生きしているアメシスが私は好きなのです。どこか作ったような優しさより、自分の獲物に食いついて行くようなあの強い紫の輝きが愛しい」

 令嬢達のお茶会を王太子であるサフィールと母親の王妃は見ていた。

「少し優し過ぎて王妃と言う激務はこなせないと心配していたけれど、本物のアメシスの性格なら何の問題もないわ」

「気を抜くと駄目なんですけどね?」

「そこは貴方がしっかり助けてやれば良いのかしら?」

 お任せ下さいとサフィールは涼しい顔で令嬢達の猛攻に敢然と立ち向かっているアメシスを見る。

「アクア……いえ、アランとの確執の事で完全に支持を失ったけれど……アメシスの考えた物は凄いわ」

 ポテトフライはもう有名な食べ物だが、レシピはまだクレスト家で握っていて口外されていないし、馬車の揺れ防止機能は驚くべき物だ。まだクレスト家と王家の馬車数台にしかつけられていないが、アレに乗ってしまうと元の馬車に乗るのは辛過ぎた。

「そしてなんなの?この香油は……凄い良い匂い……」

 これの製法もクレスト家は漏らさない。

「リュウゼンコウと呼ぶらしいです。私にも何から抽出したのかは教えてくれません」

「神秘的で素敵だわ……一体アメシスはどこでこんな事を思い付くのかしら?」

「分かりません」

 これにはサフィールも苦笑するしかない。二人の視線の先のアメシスは令嬢が投げつけたティーカップを華麗に避けて

「私はテーブルマナーにも疎いのですが、言い負けた相手にティーカップを投げつけて良いとは知りませんでした。ふふ、怖い怖い」

 嫌味たっぷりに言い返してニヤリと意地悪く笑う姿にもう一度苦笑するしか無かった。

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