【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
12 / 139

12 ある晴れた昼下がり

「……側妃として南の大帝国へ行け……?」

「宰相閣下からのご命令だ。命拾いしたな」

「……側妃……」

 ひ、ひ、妃。つまりは、帝国っつー所の王様の嫁。しかも側妃って事は正妃と言う人がいるんだ。

「俺、男……」

「子は望まれて居ないから問題ない」

「……はぁ……」

「使えないお荷物が国の役に立つんだ。帝国皇帝に感謝するが良い」

 これが酷い案件か。だがこの感じ、断るという選択肢がない奴だろうな。届いたのは手紙ではなくて命令書だもん。一度王都に戻りそこから出荷されるというらしい……。

「すぐに出発する。荷物をまとめろ」

 首都からやってきた騎士達に追い立てられ、俺は馬車に詰め込まれる。

「挨拶……」

「いらん」

 気の毒そうに執事やメイド達は頭を下げて見送ってくれたし、ケビン爺ちゃんも泣きそうな顔で麦わら帽子を脱いで頭を下げた。たった半年だったけれど、ここでの生活は楽しかった。

「貴様ら!ディエス様にあまりにも失礼だろう!」

「マーキス、いい」

「しかし!」

「良いんだ」

 俺は死にたくないし、マーキスとクリスも死んで欲しくない。なら大人しく従った方がいいだろう。馬車での移動は億劫だが仕方がない。来るときは一ヵ月くらいかけてきたけれど、帰りは2週間の強行軍だった。来るとき、マーキスは結構気を使ってくれたんだなあと優しさに感謝した。


「見栄えを整えて」

「……」

 首都につくとほぼ監禁生活と、「花嫁」になる準備に明け暮れた。肌を磨き上げられ、爪を光らせ髪を整えられ……

「ぐえええええええ!」

「黙って!」

 コルセットで胴を締め上げられる。まて、男にそんなもん必要ないだろう!?食事を制限され、強制ダイエットだ。腹が減って夜も眠れない……。美容士が女性なのでその間だけ腕輪を外され、終わるとまた付けられる。

「……死にたくないがここまでする必要があるのか……?」

 男って分かってる奴をご所望なんだろう?ならそんな事しなくても良いじゃないか……。



「レーツィア様がお見えでございます」

「……お通ししてくれ」

 あと数日で出荷されるという時になり、噂の元婚約者が面会を求めてきた。向こうから会いたいと言ったんだ、何か文句を言われるんだろうな。でもディエスは言われても仕方がない最低男だからいっぱい言われることにしよう。

「……ごめんなさい、ディエス。あなたを守れなかったわ」

「へ?どういう事?」

 キラキラと輝く美女のレーツィアは何故か俺に謝った。なんでだ??浮気したし、婚約破棄したのは俺の方なのに???

「この婚約は私の方から望んだものだった。私が5歳の貴方に一目惚れした……。その時は私の家でも大賛成だったのに……エイダン様がお生まれになって貴方は……名ばかりの王太子になってしまった」

 やっぱりそうなんだ。ディエスは邪魔な子として扱われていたんだな。

「私が貴方をしっかり教育して傀儡でもいいから王にしてあげたかった……そうしたらこんな貢ぎ物のように帝国へ贈られる事もなかったのに……ごめんなさい。あの男爵令嬢の事も早めに処分してしまえば良かったのに……私には出来たのに……」

 ポロポロとレーツィアは泣き出してしまった。うわぁーー!美女を泣かせた!?俺はなんとなくしかレーツィアの事を覚えていない。体に残ったディエスの記憶だけ、そんな感じだ。金色の綺麗な髪に青い目の美少女と美女の中間くらいの美しい貴族のご令嬢。そんな子がぽろぽろと涙を零している。綺麗で、でも可哀想で……ディエスの記憶がレーツィアを慰めなくちゃと焦っている。

 ディエスは……レーツィアの事が好きだったんだな、でもミリアーヌと浮気をした。厳しい事を言うレーツィアよりなんでもかんでも認めて褒めてくれるミリアーヌにふらふらとついて行った。でもレーツィアが正しいって思ってた……馬鹿なディエス。10年以上面倒を見てくれたレーツィア、そして今でも泣いてくれるレーツィア。

「レーツィア、君は……幸せになれそう?」

「……分からない。お兄様はあなたを売ってそれなりの利益を得た。でも、私は……」

 傷物令嬢……この歳ではまともな貴族は残っていないだろう……。

「ありがとう、レーツィア。馬鹿なディエスを許してくれて」

「良いのよ、ディエスはいつでもおバカで頭が悪かったんだから……私がついてなきゃ何にもできない子だったもの」

「そんな馬鹿なディエスで良かったの?」

「おバカだから可愛かったのよ……好きだったわ、ディエス」

 レーツィアはディエスの良き理解者でいてくれた。



 
感想 266

あなたにおすすめの小説

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。