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41 ベタ惚れ、ではない(皇帝ラムシェーブル視点)
「ディエス様の故国より数人間者が入り込んでおります」
「ディエスの良い噂だけ掴ませて適当に追い出せ」
「母君達にはそれとなく護衛をつけてございます」
「手間のかからぬように」
「は」
ディエスは「使える側妃」になってしまった。私としてはどちらでも構わなかったのだが、ディエスが有能だとあの国が煩くなるだろう。ディエスの後釜に座った弟はあの国に相応しい王太子だという。
「凡庸以下でも治めることが出来る程度の国に相応しい王太子」
それが見た事もない王太子エイダンに抱いた私の感想だ。実際あの国には何の旨味もない。鉱山があるわけでもないし、産業もこれと言ってなければ物流も弱い。ただディエスの故郷である、それだけの国だ。
「宰相が少し賢しいが、その程度」
リゼロも静かに頭を下げる。同じ意見だと言う事だろう。
「して、陛下。文官と武官のいざこざの件はいかが致しますか?」
「もう少し様子をみよう」
隣の部屋にレーツィア嬢が来ている。ディエスが頼んだケーキの試作品を持ってきているようだ。一体二人で何を話しているやら。
「ま、街のスイーツ店を……食い尽くしそうなんだ!!」
「ほう」
「それでレーツィアに新しいケーキを開発してもらおうと思ってアイディアをいくつか手紙で送ったんだ。その試作品を持ってきてくれたって」
なるほど、ディエスがソレイユに毎月贈る菓子か。ソレイユに贈る為に最高級の物を選ぶから選択肢が物凄く狭くなっているのだろう。
二人は一体どんな話をしているのか。あの二人は小さい頃からの婚約者であると言う。私とソレイユの関係と似ているのだろうか。
「……陛下」
「なんだ」
「もう大丈夫です。お隣に行っても結構です」
「……」
私はそんなにディエスにべったりとくっついている訳ではないし、二人の会話など特に気にかけている訳ではない。なのに何故、リデルは呆れ顔なのだ。仕事量が少ないのか?仕方がない、増やしておいてやろう。きっと泣くほど喜ぶに違いない。
「あ、ラム。見てくれこのケーキ凄いだろう。ブルーブルーベリーのケーキにダークチョコレートをかけてあるんだ。色合いがラムっぽいだろ?」
「ほう」
「これに砂糖細工のソレイユ様をちょこんと乗せる、どうだ?!」
「悪くないな」
「良し!レーツィア、これで行こう!」
今月はこれで決まりだ!とはしゃいでいるディエス。全くソレイユの事ばかり懸命になって何やら腹立たしい。
「ディエス、書類の不備があった」
「えっ?!マジか。すぐ直さなきゃ。レーツィア、これで進めてくれる?俺、書類やってくるよ」
「わ、分かったわ。完成したらそのままソレイユ様にお贈りしておくわね」
「助かるー」
ディエスを連れて執務室に戻る後ろでレーツィア嬢と騎士リンダが
「ほらね……ベタ惚れなのよ、心配ないでしょう?」
「そうみたいね……」
そんな会話をしていたが、まあ聞かなかった事にした。
「ラム、訂正しないといけない書類はどれだ?」
「……どれだったかな……」
「ちゃんと訂正書類は訂正の箱に入れろって言ってるだろ!どれか分かんないなんて時間の無駄だぞ!」
「すまんな」
本当は訂正書類なんてなかった。ただそう言えばディエスは仕事をしにこの部屋に戻ってくる。
「すまんな」
「もー良いけど。見つかったらすぐ出せよ。折角だ、別の仕事も終わらせちまうか」
「ああ、そうだな」
伸ばしかけの髪がサラリと揺れて私の隣の机に当たり前の如く座る。あまり見ない紫色の髪は誰が最初に言ったのかあやめの様だと。すっと立つ姿は確かにアイリスを思い起こさせる。
最近庭師が中庭にあやめを植えたな、褒美でも取らせるか。
「とは言え、ちゃんと振り分けてあるから、かなり余裕あるなー。すぐ終わりそう。この後どうする?飲みに行っちゃう?」
「東の国から良いワインが届いている。アレを開けよう」
「今日は宅飲みか。良いだろう受けて立つ!」
タクノミとは何のことか分からないが、ディエスが来る前は私は殆ど酒は飲まなかった。飲んでも美味いとは思わなかったし、何よりつまらなかった。
食事も出てくるから食べる、そんな感じだったのに。
「ワインかー!やっぱり肉欲しいよな、肉!料理長、ステーキ出してくれないかなー?急だからないかなぁ」
「あるだろう、聞いてみると良い」
「やった!何が良いかなぁ~こっちの肉って何でも美味いから好きだーラムも肉、好き?」
「ああ」
ディエスと食べれば何でも美味いと感じる。心底楽しそうに夕食に思いを馳せているディエスを見ると私も同じ物を食べようと思う。
「だよなー!お前、肉食って感じするもん。肉食は良いんだけどよー毎晩噛み付くの止めろよー!結構痛いしびっくりするんだよ!」
仕方がないではないか、一番美味そうなのはお前なんだから。
「ついな」
「ついじゃねーよ!」
数枚の書類をとんとんと揃え、処理済みの箱に入れた。少し待てば侍従の誰かか文官が来て持っていくだろう。喋りながらでも仕事は早い。流石「使える側妃」だ。
「今日のワインが不味かったら承知しねーからな!」
それは私に言っても仕方がない事だろう、意味が分からないが。
「ああ、善処しよう」
「絶対だからな!」
「ああ」
私が立てばディエスも立つ。腰に手を添えて歩き出せば素直に歩を進める。少し前までは近いと文句ばかり言っていたのに、お前も慣れたのだな。
「ディエスの良い噂だけ掴ませて適当に追い出せ」
「母君達にはそれとなく護衛をつけてございます」
「手間のかからぬように」
「は」
ディエスは「使える側妃」になってしまった。私としてはどちらでも構わなかったのだが、ディエスが有能だとあの国が煩くなるだろう。ディエスの後釜に座った弟はあの国に相応しい王太子だという。
「凡庸以下でも治めることが出来る程度の国に相応しい王太子」
それが見た事もない王太子エイダンに抱いた私の感想だ。実際あの国には何の旨味もない。鉱山があるわけでもないし、産業もこれと言ってなければ物流も弱い。ただディエスの故郷である、それだけの国だ。
「宰相が少し賢しいが、その程度」
リゼロも静かに頭を下げる。同じ意見だと言う事だろう。
「して、陛下。文官と武官のいざこざの件はいかが致しますか?」
「もう少し様子をみよう」
隣の部屋にレーツィア嬢が来ている。ディエスが頼んだケーキの試作品を持ってきているようだ。一体二人で何を話しているやら。
「ま、街のスイーツ店を……食い尽くしそうなんだ!!」
「ほう」
「それでレーツィアに新しいケーキを開発してもらおうと思ってアイディアをいくつか手紙で送ったんだ。その試作品を持ってきてくれたって」
なるほど、ディエスがソレイユに毎月贈る菓子か。ソレイユに贈る為に最高級の物を選ぶから選択肢が物凄く狭くなっているのだろう。
二人は一体どんな話をしているのか。あの二人は小さい頃からの婚約者であると言う。私とソレイユの関係と似ているのだろうか。
「……陛下」
「なんだ」
「もう大丈夫です。お隣に行っても結構です」
「……」
私はそんなにディエスにべったりとくっついている訳ではないし、二人の会話など特に気にかけている訳ではない。なのに何故、リデルは呆れ顔なのだ。仕事量が少ないのか?仕方がない、増やしておいてやろう。きっと泣くほど喜ぶに違いない。
「あ、ラム。見てくれこのケーキ凄いだろう。ブルーブルーベリーのケーキにダークチョコレートをかけてあるんだ。色合いがラムっぽいだろ?」
「ほう」
「これに砂糖細工のソレイユ様をちょこんと乗せる、どうだ?!」
「悪くないな」
「良し!レーツィア、これで行こう!」
今月はこれで決まりだ!とはしゃいでいるディエス。全くソレイユの事ばかり懸命になって何やら腹立たしい。
「ディエス、書類の不備があった」
「えっ?!マジか。すぐ直さなきゃ。レーツィア、これで進めてくれる?俺、書類やってくるよ」
「わ、分かったわ。完成したらそのままソレイユ様にお贈りしておくわね」
「助かるー」
ディエスを連れて執務室に戻る後ろでレーツィア嬢と騎士リンダが
「ほらね……ベタ惚れなのよ、心配ないでしょう?」
「そうみたいね……」
そんな会話をしていたが、まあ聞かなかった事にした。
「ラム、訂正しないといけない書類はどれだ?」
「……どれだったかな……」
「ちゃんと訂正書類は訂正の箱に入れろって言ってるだろ!どれか分かんないなんて時間の無駄だぞ!」
「すまんな」
本当は訂正書類なんてなかった。ただそう言えばディエスは仕事をしにこの部屋に戻ってくる。
「すまんな」
「もー良いけど。見つかったらすぐ出せよ。折角だ、別の仕事も終わらせちまうか」
「ああ、そうだな」
伸ばしかけの髪がサラリと揺れて私の隣の机に当たり前の如く座る。あまり見ない紫色の髪は誰が最初に言ったのかあやめの様だと。すっと立つ姿は確かにアイリスを思い起こさせる。
最近庭師が中庭にあやめを植えたな、褒美でも取らせるか。
「とは言え、ちゃんと振り分けてあるから、かなり余裕あるなー。すぐ終わりそう。この後どうする?飲みに行っちゃう?」
「東の国から良いワインが届いている。アレを開けよう」
「今日は宅飲みか。良いだろう受けて立つ!」
タクノミとは何のことか分からないが、ディエスが来る前は私は殆ど酒は飲まなかった。飲んでも美味いとは思わなかったし、何よりつまらなかった。
食事も出てくるから食べる、そんな感じだったのに。
「ワインかー!やっぱり肉欲しいよな、肉!料理長、ステーキ出してくれないかなー?急だからないかなぁ」
「あるだろう、聞いてみると良い」
「やった!何が良いかなぁ~こっちの肉って何でも美味いから好きだーラムも肉、好き?」
「ああ」
ディエスと食べれば何でも美味いと感じる。心底楽しそうに夕食に思いを馳せているディエスを見ると私も同じ物を食べようと思う。
「だよなー!お前、肉食って感じするもん。肉食は良いんだけどよー毎晩噛み付くの止めろよー!結構痛いしびっくりするんだよ!」
仕方がないではないか、一番美味そうなのはお前なんだから。
「ついな」
「ついじゃねーよ!」
数枚の書類をとんとんと揃え、処理済みの箱に入れた。少し待てば侍従の誰かか文官が来て持っていくだろう。喋りながらでも仕事は早い。流石「使える側妃」だ。
「今日のワインが不味かったら承知しねーからな!」
それは私に言っても仕方がない事だろう、意味が分からないが。
「ああ、善処しよう」
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