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81 ありがとう、大好きなのにごめんな?

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 冬は本当に厳しい物になった。とにかく寒い。

「獣害が出始めた」

 暖を取るのに木を切りに行く者。毛皮や肉で食い扶持を稼ごうと言う者。そして山での食糧不足。

「冬籠りする熊類が秋の実り不足で冬籠り出来なかったり、途中で目覚めてしまったりしています。討伐部隊を編成します」

「そうだな」

 クロードからの報告が上がって来る。予想通りだし、その分の装備や資金は確保してある。

「でなぁ……ラム、ごめんなぁ」

「構わんと言っているだろう?」

「……ありがとう、大好きなのに……」

 俺はラムに謝るしかない。


 騎士団の半分に当たる人数が各地で起こっている害獣退治に出る事になった。ただの獣だけなら良いけれど、魔獣と呼ばれる強い物も混じり始めた地域があるようで、やはり精鋭の騎士団が必要になったのだ。

「存分に務めを果たして参れ」

「はっ!必ずや陛下に吉報をお持ちいたします」

 先頭にクロードがいる。出立式は執り行われ、皆寒い中ラムの前に整列していた。

「ディエス」

「はい。プリネラ・リスター侯爵令嬢」

 ラムが俺に声をかけ、俺がプリネラを呼ぶ。そう言う作法なんだからしょうがない。

「心得まして」

 凛としてクロードに真っ直ぐ歩いて行くプリネラと、登場するとは思って居らず驚いている騎士団の面々。
 プリネラの後ろには騎士達の婚約者、家族、近親者がいたからだ。

「クロード様、ご無事をお祈りしております。陛下よりの賜り物です、寒い中くれぐれも御身を大切に」

 あまり大きくない水筒を手渡した。

「これは……?」

「度数の高いお酒です。私達で携帯に便利な水筒に詰め直しました。ふふ、陛下の蔵酒は無くなってしまったそうですよ?」

 寒さに震える事もあるだろう。そんな時体を少しでも暖めてくれると良いなとラムの酒蔵からブランデーなんかを全部出しちゃったんだ。お酒大好きなラムには申し訳ないけど、許して欲しい……ごめんね、ラム。

「陛下……ありがとうございますっ!!」

 気をつけて、頑張って。怪我なく帰って。婚約者や妻、家族。願いと祈りを込めて水筒を手渡している。たったこれだけの事だけど、もしかしたら役に立つかも知れないからね。

「必ず皆戻るように」

「はっ!!」

 騎士達は士気も最高潮に出かけて行った。誰も欠けるとこなく帰ってきて欲しい。頼もしい背中を見送った。

「皆様も騎士達の見送りに来てくれてありがとう。愛する大切な人に励まされ、彼らは無事に戻る事でしょう」

「はい!」

 長い間離れ離れにさせてしまうからね……申し訳ないや。

「さて、寒い中集まってくれた皆には暖かいお茶を振る舞うよ。飲んだり持って帰ったりしてね」

「ありがとうございますっ!!」

 うん、元気な返事だ。そして厨房に頼んで作ってもらった蜂蜜生姜ティーを振る舞って解散になる。

「か、辛いっ……けれど甘いですのね?」

「ジンジャーが入っているんだよ。ジンジャーは体を暖めるから、皆も食事に取り入れて欲しいな」

「不思議ですが美味しいですね」

 うんうん。なんつーか生姜湯とか良いよねぇ。年寄りの知恵は大事だよ??

「皆、無理はせず風邪をひかない事。病気になるのが一番駄目だからね?」

「はいっ!」

 良い返事も聞けたし、出立式も話題になるだろうし……人気取りも大事なんだよね。

 まあクロードの水筒を詰めたのはセイリオスだったみたいだけどな!!



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