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92 ねえ、なんで?
「……し……ずし……かーずーしーさーん?」
声が聞こえる、誰かを呼んでいる……誰だ?えーっと。
「あーもうだいぶディエスが馴染んじゃってますね。魂の色も相当ディエスに染まってしまってる。和志さん、私です、神様ですよー?」
「神!?詐欺神か!」
きゃー酷いっ!なんて言うが目を開けるとあの社畜臭がするイケメンの神が目の前に立っていた。
「まーでも、すいませぇん。スローライフ希望だったのに、世界の理に巻き込まれちゃって!いやあ和志さんがあんまりにあの世界の中に溶け込んじゃって、中々引きはがせなくて!やっとあの衝撃で引っ張れましたよ、良かった良かった」
ふー中々手強い案件でした!と神は首からかけたタオルで汗をぬぐった。イケメンが首にタオル、似合わない。
「お、俺は……」
死んだのか?多分ほぼ赤いドレスの女に刺されたとしか覚えていない。刺された場所は腹だったが、見れば服は血だらけだ。痛みはないがかなり引く出血量に見える。うわっ怖い。
「まあやっと世界から剥がせましたから、ではスローライフの出来る所へお送りいたします!これで約束は守れそうですね!」
「ま、待ってくれ。俺は……ディエスはどうなったんだ!?」
あのほぼ赤いドレスの女に刺されて、神様の前にいる……という事は、まさか。
「ディエスですか?役目を全うしたので輪廻に返そうかと思います」
「死んだ……のか?」
「まだですが、あとちょっとで死にますねー。さあ、死ぬ前に今度こそちゃんとスローライフを送れるように色々決めておきましょ?」
俺、いやディエスは死ぬのか?…‥あのまま、俺は死んでいいのか……?俺が死んだらラムはどうなる?
「な、なあ神様よ。俺が死んだらラムは……帝国はどうなるんだ?」
「帝国は栄えますよ~」
「ホントか?じゃあラムは平気なんだな?」
それならいいか、と少しほっとしたがどうも神様の様子が俺が思っていたものと違う。コテン、と神様は首を傾げてとんでもない事を言った。
「ラムシェーブル?ああこれから帝国始まって最悪の暴君になりますね」
「え……だって、帝国は栄えるって……」
「栄えますよ~?ラムシェーブルとその息子アレッシュは手当たり次第に戦争を仕掛け、辺りの国々を蹂躙、併呑するんです。大陸全てが帝国の物になります!そりゃもう大きな国になるんです~!でもあまりに大きすぎて暴動や戦争が絶えず起っちゃいますけど、ラムシェーブルとアレッシュを殺しイーライが東、ウィルフィルドが西を分断して治めるようになると安定し、2000年の平和が訪れます。いやあ、流石ディエスの見込んだ双子!殺されなくて良かったぁ!良い仕事ありがとうございます!プラス査定しときますね」
「は……?イーライとウィルフィルドが……?ラムとアレッシュを……殺す?な、なにを……何を言ってるんだ?」
ラムとあの子達が殺し合う!?ふざけんな、俺は思わず神様に掴みかかった。首に巻いていたタオルをギュッと締めあげる。
「く、くるしーーー!でもそう言うシナリオなんですから仕方がないですよ。ディエスは死に、ラムシェーブルは孤独に沈みます。もう正妃の言葉も届かない」
「だ、駄目だ……そんなの駄目だ!誰も幸せにならないじゃないか!」
「駄目っていっても~皇帝の血筋なんてそんなもんですよ、血塗られたモンですって~和志さんがどうこういってもディエスはここで死んじゃうんです~」
そういう風に決まってるんです、と神様は口を尖らせる。でもダメだ、そんなの駄目だ……。
「駄目だ、駄目だよ神様……ラムから俺を取り上げないで」
神様はイケメンの癖に頬をぷくっと膨らませる。
「そんなこと言ったってスローライフはどうするんです?貴方のしたい事でしょう?このままスローライフ人生に入った方が良いですって。私も詐欺だって言われたくないですしぃ」
確かにスローライフはしたい。でも……でも、壊れて最悪の皇帝になるラムなんて嫌だ!俺はラムにそんな風になって貰いたくない。
「お、俺は……俺は……」
「良いんですよ、そう言う風になってる運命なんですから。貴方は貴方の望むことをするべきだし、あなたは何も悪くない」
神様の笑顔は神々しい。それが正しいそれが当たり前……運命?ならば仕方がない、一瞬だけそう思ったがでも違う。そんな運命は嫌だ!
「スローライフは……しなくていい、要らない!だから、ラムを壊さないでやってくれ!」
「えーーーーー!嫌ですよう……私は嘘つきになりたくないですし、約束は守る神ですもん。それにあの世界も流れに任せた方が良いし。我がまま言わずスローライフしましょう?和志さん?」
「駄目だ!!駄目ったら駄目だ!!」
「えー……何でですかあ?やりたいんでしょ?スローライフ。好きなんでしょ?スローライフ」
神様はどうしても俺にスローライフをさせたいらしい。でも最初の約束はそうだった、俺にスローライフをさせたいんじゃなくて、約束を守る良い神だというところをアピールしたいようだ。
「でも……でも駄目だ……俺は、俺はラムから離れちゃ駄目なんだ」
「なんで?」
「だって、俺がいないとラムは寂しがる。俺がいないとラムはご飯も食べない……」
「良いんですよ、暴君としてぶっとく短く生きるんですから。多少寂しくても、ご飯を食べなくても。寿命にこだわってませんからね。それ以外何かあるんですか?」
だって、そんな……ラムに辛い人生を歩かせたくない、俺はラムにもっと笑って欲しい、もっと笑って俺の事を
「ディエス」
ってちょっとわかりにくいけど、嬉しそうに呼んで欲しい。
死ぬな、ディエス!死なないでくれ……俺を置いて行くな、俺を一人にするな!頼む、頼むから死なないで……俺を冷たい中に一人で置き去りにしないでくれ!
ラムの声が聞こえる。泣いて叫んで俺を呼んでいる声が聞こえている。やっぱり俺はラムの所に戻らなくちゃいけない。
「ねえ、なんで?」
神様は不思議そうに俺の顔を覗き込む。綺麗で澄んでいるはずの瞳はとても深くて、何か奥から燻って溜まっているモノを引き出すような、気がする……。何を引きだす?何を隠している?神様は何も隠してはいない……かくして、引き出されていないのは、俺か?
「ねえ、なんで?」
響く、声が響く、俺に、俺の奥底にいる何かに直接話しかけて、ソレに名前を付けて引っ張り出すように、神様の言葉が俺の奥を探り出す。
なんでって……それは、俺が……。
俺が、何なんだ?俺は、ラムを助けたい、俺はラムを一人にしたくない。
俺は、俺は、俺は、ラムを?
「ラムを……」
いいのか?これに名を与えて。俺の勘違い、俺の間違いじゃないのか?そして後戻りできなくなるんじゃないのか?
「ラムシェーブルを」
だとしても、俺は……もう突き放す事はできない……。覚悟を決めろ、それが間違いだとしてもそれを押し通す覚悟を……!
「あ……いして、いるから……」
目の前の神様は待っていましたとばかりに、ニィっと目と口を三日月みたいに歪めて笑った。
「その言葉を聞きたかった」
俺は背中を押されて真っ暗な道に押し出された。
「このまままっすぐ歩いて行って。途中で蹲っているおじさんがいるからそいつも連れてってよ。神様からのお・ね・が・い・!」
「きめぇ」
「ひどっ!」
暗い何もない道を歩いて行くとポツンと古臭い電灯が立っていて、その灯りにスポットライトの様に照らされて会った事がないおじさんが蹲っていた。
「おじさん、立って。行くよ」
この人だ、とすぐにわかったから俺は躊躇わず声をかけた。どうも別の偉い女神様がここまで連れて来てしまったらしく、どこへ行くかもわからんが、連れて行くらしい。
「どこへ行くと言うのですか……?私は使えるべき主も、主のお嬢様も失くした男。今更何を導に生きればいいのです?」
「貴方は誰かに仕えたいの?」
「はい、私の人生はもう名前も顔も忘れてしまいましたが、誰かに仕え、尽くす人生でした。そしてそれ以外の生き方を知らぬ者です……」
「……じゃあ、俺に仕えてよ。それならいいでしょう?」
おじさんは伏せていた顔をのろのろと上げた。
「良いのですか?」
「うん、多分……俺の旦那様は俺の事が大好きだからね。俺の言う事を聞いてくれるんだ。きっと駄目って言わない」
「……それでは貴方様と貴方様の旦那様に忠誠を誓いましょう」
そうしよう、と決めるとおじさんは立ち上がり、俺のちょっと後ろをついて歩き始めた。俺達は暗い道を歩いて歩いて……場所の感覚が分からなくなった頃、小さな白い光が見え始める。
「あそこが出口かなあ?」
そちらへ向かって歩こうとしたら、光の方がどんどんこちらに寄って来て大きくなって行き、眩しい光で俺達を包み込んだ。
「わ、まぶしっ!」
「あれぇ……?」
「ディエスッ!!」
「あ、ラムだ」
俺はベッドの上で目を覚ました。
声が聞こえる、誰かを呼んでいる……誰だ?えーっと。
「あーもうだいぶディエスが馴染んじゃってますね。魂の色も相当ディエスに染まってしまってる。和志さん、私です、神様ですよー?」
「神!?詐欺神か!」
きゃー酷いっ!なんて言うが目を開けるとあの社畜臭がするイケメンの神が目の前に立っていた。
「まーでも、すいませぇん。スローライフ希望だったのに、世界の理に巻き込まれちゃって!いやあ和志さんがあんまりにあの世界の中に溶け込んじゃって、中々引きはがせなくて!やっとあの衝撃で引っ張れましたよ、良かった良かった」
ふー中々手強い案件でした!と神は首からかけたタオルで汗をぬぐった。イケメンが首にタオル、似合わない。
「お、俺は……」
死んだのか?多分ほぼ赤いドレスの女に刺されたとしか覚えていない。刺された場所は腹だったが、見れば服は血だらけだ。痛みはないがかなり引く出血量に見える。うわっ怖い。
「まあやっと世界から剥がせましたから、ではスローライフの出来る所へお送りいたします!これで約束は守れそうですね!」
「ま、待ってくれ。俺は……ディエスはどうなったんだ!?」
あのほぼ赤いドレスの女に刺されて、神様の前にいる……という事は、まさか。
「ディエスですか?役目を全うしたので輪廻に返そうかと思います」
「死んだ……のか?」
「まだですが、あとちょっとで死にますねー。さあ、死ぬ前に今度こそちゃんとスローライフを送れるように色々決めておきましょ?」
俺、いやディエスは死ぬのか?…‥あのまま、俺は死んでいいのか……?俺が死んだらラムはどうなる?
「な、なあ神様よ。俺が死んだらラムは……帝国はどうなるんだ?」
「帝国は栄えますよ~」
「ホントか?じゃあラムは平気なんだな?」
それならいいか、と少しほっとしたがどうも神様の様子が俺が思っていたものと違う。コテン、と神様は首を傾げてとんでもない事を言った。
「ラムシェーブル?ああこれから帝国始まって最悪の暴君になりますね」
「え……だって、帝国は栄えるって……」
「栄えますよ~?ラムシェーブルとその息子アレッシュは手当たり次第に戦争を仕掛け、辺りの国々を蹂躙、併呑するんです。大陸全てが帝国の物になります!そりゃもう大きな国になるんです~!でもあまりに大きすぎて暴動や戦争が絶えず起っちゃいますけど、ラムシェーブルとアレッシュを殺しイーライが東、ウィルフィルドが西を分断して治めるようになると安定し、2000年の平和が訪れます。いやあ、流石ディエスの見込んだ双子!殺されなくて良かったぁ!良い仕事ありがとうございます!プラス査定しときますね」
「は……?イーライとウィルフィルドが……?ラムとアレッシュを……殺す?な、なにを……何を言ってるんだ?」
ラムとあの子達が殺し合う!?ふざけんな、俺は思わず神様に掴みかかった。首に巻いていたタオルをギュッと締めあげる。
「く、くるしーーー!でもそう言うシナリオなんですから仕方がないですよ。ディエスは死に、ラムシェーブルは孤独に沈みます。もう正妃の言葉も届かない」
「だ、駄目だ……そんなの駄目だ!誰も幸せにならないじゃないか!」
「駄目っていっても~皇帝の血筋なんてそんなもんですよ、血塗られたモンですって~和志さんがどうこういってもディエスはここで死んじゃうんです~」
そういう風に決まってるんです、と神様は口を尖らせる。でもダメだ、そんなの駄目だ……。
「駄目だ、駄目だよ神様……ラムから俺を取り上げないで」
神様はイケメンの癖に頬をぷくっと膨らませる。
「そんなこと言ったってスローライフはどうするんです?貴方のしたい事でしょう?このままスローライフ人生に入った方が良いですって。私も詐欺だって言われたくないですしぃ」
確かにスローライフはしたい。でも……でも、壊れて最悪の皇帝になるラムなんて嫌だ!俺はラムにそんな風になって貰いたくない。
「お、俺は……俺は……」
「良いんですよ、そう言う風になってる運命なんですから。貴方は貴方の望むことをするべきだし、あなたは何も悪くない」
神様の笑顔は神々しい。それが正しいそれが当たり前……運命?ならば仕方がない、一瞬だけそう思ったがでも違う。そんな運命は嫌だ!
「スローライフは……しなくていい、要らない!だから、ラムを壊さないでやってくれ!」
「えーーーーー!嫌ですよう……私は嘘つきになりたくないですし、約束は守る神ですもん。それにあの世界も流れに任せた方が良いし。我がまま言わずスローライフしましょう?和志さん?」
「駄目だ!!駄目ったら駄目だ!!」
「えー……何でですかあ?やりたいんでしょ?スローライフ。好きなんでしょ?スローライフ」
神様はどうしても俺にスローライフをさせたいらしい。でも最初の約束はそうだった、俺にスローライフをさせたいんじゃなくて、約束を守る良い神だというところをアピールしたいようだ。
「でも……でも駄目だ……俺は、俺はラムから離れちゃ駄目なんだ」
「なんで?」
「だって、俺がいないとラムは寂しがる。俺がいないとラムはご飯も食べない……」
「良いんですよ、暴君としてぶっとく短く生きるんですから。多少寂しくても、ご飯を食べなくても。寿命にこだわってませんからね。それ以外何かあるんですか?」
だって、そんな……ラムに辛い人生を歩かせたくない、俺はラムにもっと笑って欲しい、もっと笑って俺の事を
「ディエス」
ってちょっとわかりにくいけど、嬉しそうに呼んで欲しい。
死ぬな、ディエス!死なないでくれ……俺を置いて行くな、俺を一人にするな!頼む、頼むから死なないで……俺を冷たい中に一人で置き去りにしないでくれ!
ラムの声が聞こえる。泣いて叫んで俺を呼んでいる声が聞こえている。やっぱり俺はラムの所に戻らなくちゃいけない。
「ねえ、なんで?」
神様は不思議そうに俺の顔を覗き込む。綺麗で澄んでいるはずの瞳はとても深くて、何か奥から燻って溜まっているモノを引き出すような、気がする……。何を引きだす?何を隠している?神様は何も隠してはいない……かくして、引き出されていないのは、俺か?
「ねえ、なんで?」
響く、声が響く、俺に、俺の奥底にいる何かに直接話しかけて、ソレに名前を付けて引っ張り出すように、神様の言葉が俺の奥を探り出す。
なんでって……それは、俺が……。
俺が、何なんだ?俺は、ラムを助けたい、俺はラムを一人にしたくない。
俺は、俺は、俺は、ラムを?
「ラムを……」
いいのか?これに名を与えて。俺の勘違い、俺の間違いじゃないのか?そして後戻りできなくなるんじゃないのか?
「ラムシェーブルを」
だとしても、俺は……もう突き放す事はできない……。覚悟を決めろ、それが間違いだとしてもそれを押し通す覚悟を……!
「あ……いして、いるから……」
目の前の神様は待っていましたとばかりに、ニィっと目と口を三日月みたいに歪めて笑った。
「その言葉を聞きたかった」
俺は背中を押されて真っ暗な道に押し出された。
「このまままっすぐ歩いて行って。途中で蹲っているおじさんがいるからそいつも連れてってよ。神様からのお・ね・が・い・!」
「きめぇ」
「ひどっ!」
暗い何もない道を歩いて行くとポツンと古臭い電灯が立っていて、その灯りにスポットライトの様に照らされて会った事がないおじさんが蹲っていた。
「おじさん、立って。行くよ」
この人だ、とすぐにわかったから俺は躊躇わず声をかけた。どうも別の偉い女神様がここまで連れて来てしまったらしく、どこへ行くかもわからんが、連れて行くらしい。
「どこへ行くと言うのですか……?私は使えるべき主も、主のお嬢様も失くした男。今更何を導に生きればいいのです?」
「貴方は誰かに仕えたいの?」
「はい、私の人生はもう名前も顔も忘れてしまいましたが、誰かに仕え、尽くす人生でした。そしてそれ以外の生き方を知らぬ者です……」
「……じゃあ、俺に仕えてよ。それならいいでしょう?」
おじさんは伏せていた顔をのろのろと上げた。
「良いのですか?」
「うん、多分……俺の旦那様は俺の事が大好きだからね。俺の言う事を聞いてくれるんだ。きっと駄目って言わない」
「……それでは貴方様と貴方様の旦那様に忠誠を誓いましょう」
そうしよう、と決めるとおじさんは立ち上がり、俺のちょっと後ろをついて歩き始めた。俺達は暗い道を歩いて歩いて……場所の感覚が分からなくなった頃、小さな白い光が見え始める。
「あそこが出口かなあ?」
そちらへ向かって歩こうとしたら、光の方がどんどんこちらに寄って来て大きくなって行き、眩しい光で俺達を包み込んだ。
「わ、まぶしっ!」
「あれぇ……?」
「ディエスッ!!」
「あ、ラムだ」
俺はベッドの上で目を覚ました。
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