【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

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113 腹を壊す前に

「……ひ、ど、い……」

「お前が悪い」

 ニコラスが何も言ってないのに訪問客を全員追い返し、「空白の1日」を恙なく過ごして指一本動かすのも億劫な俺に美味そうなフルーツジュースを持ってきてくれた。
 ご丁寧にストローもついていたのに、ストローはラムに投げ捨てられるし、ジュースも取り上げられた。飲みたければラムに「お願い」しろってことらしい。

「仲が良い事は良い事です」

 ニコラスはニコニコ笑って屋敷の仕事に戻っていった。うっ!もっと助けて下さいよ!!

「だ~か~らぁ……」

「……」

 まだ変な顔してる。喋るのも怠いのに!

「俺が、だよ……」

「……」

「俺が、気持ち悪いだろ……」

 どんなに抗ってみても、俺はもうおっさんだ。歳を重ねてカッコいいおじ様が見えて来そうなラムとは違う。
 どんどん劣化していくだけの存在なのに。

「お前は、ディエスは気持ち悪くなどない」

「そうは言ってもさぁ」

 見ないフリしてくれてんだろ?何かツヤツヤになるとか言う軟膏塗っても若い頃とは程遠い。あちこちに茶色の点々が出て来る。よく寝ても疲れが取れない……良く寝てない日が多いけど。分かってるんだ、俺の側妃としての賞味期限は切れてるんだって。ただ、まだ消費期限内だから、食べても大丈夫なだけであって無理して食うものじゃないし、そろそろその期限も終わって腹を壊すようになるぞ。
 そしたらゴミ箱にポイだ。

「流石に、ポイされるのは……辛い」

「……」

 ラムを恨むつもりはない。こっちの世界に来てからまあひっくるめれば楽しかった。わがままにも付き合ってくれたし、アイリス領には「イザカヤ通り」って言うこの世界に似つかわしくない飲み屋街まである。俺の好みだ。

「だからせめて突然だけは勘弁して……」

 俺、出て行けって言われたらいく所ないから、先にどこか手配しておかなくちゃ……王都から離れた所が良いな。近くだったら楽しかった頃を思い出しちゃうから。ああ、元ソルリアの隅っこなんかどうだろう?人気のない荒れた領地があったような気がするし。

「……まだ理解していないな?私達はもう少しが必要なようだな?」

「え?何が……」

 今度は壁の剣に手をかけなかったから少し安心?だが、話し合いってえーと?

「ラ、ラム、さん……?顔が怖いです……」

 真顔を少しだけ悪そうに歪めて、近寄って来るのは何故でしょうか!俺はベッドの上から動けないと言うのに!

「なぁに、分かるまでじっくり教え込むだけだ。今度は二晩で済むと良いな?」

「ひっ?!」

 ど、どう言う事だ?!やっと泣いて許して貰ったのに!

「ラ、ラム!止めて、やめーーーあーーーっ!」



「今日もラムシェーブル殿とディエス殿にお会い出来ぬとはどう言う事ですかな?!執事よ!」

「重大な事案をじっくり話し合っておられます故、お帰り願います」

 鮮やかに客を追い返すニコラスに会えたのはそれから一週間後だった。

「うぇえぇ……俺ぇ、おじいちゃんになってもラムと一緒にいるぅ」

「分かれば良い」

 どうやら俺の賞味期限はだいぶ長いらしい。




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