【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
125 / 139
番外編

3 利口者には花束を3

「冬季の療養地として、山間の温泉地がいいらしいんだよね!調査お願い!」

 また突拍子もない指令が降り、セイリオスは北の果てまで視察に来なければならなくなった。

「セリー!」

「?!ケリ、クロード!?」

 その温泉地とやらに着くと何故かクロードが馬から降りて駆け寄ってきた。
 人前なのでギリギリ二人だけの愛称を避けたセイリオスだったが、喜色満面で駆け寄ってくるクロードに嬉しさを隠し切れなかった。

「なんでセリー……ん、セイリオスがここに?」

「ディエス様に温泉地の調査に行けと言われてな」

 皇帝陛下のデカデカとした印が押された指令書では無視するわけには行かない。

「私も、この温泉地の周りの魔獣と地形調査を依頼されたんだ!偶然だな」

「……偶然の訳ないだろう。全くあの方は!」

 いつの間にか指令書にはもう一枚紙が挟み込まれており

「冬季休暇の取り方について~まずは上司から~」

 と言う謎の指南書と、一週間の休暇申請が受理されていると言う物だった。

「調査に一週間、休みが一週間ですか……」

「うわっ!何だこの紙!この前までこんなのついてなかったぞ??」

 クロードも勝手に休暇申請されているらしく驚いている。

「んじゃ!騎士団長!私達はこれで!!」

「は?お前達、調査はどうした?」

 ウキウキと手を挙げてバラバラに解散しようとする部下に声をかけるが、部下達はまた紙を出す。

「着いたら、解散していーよ。2週間の冬季休暇楽しんできて!」

 ディエスの字で書かれ、やっぱり皇帝印が押された紙を持っているのだ。

「調査は前に派遣した部隊が済ませてまーす!じゃ!隊長もごゆっくり~!」

「あ、こら!」

 止める間もなく騎士達はばらばらと解散して行く。

「もしかして」

 セイリオスが自分の部下を振り返れば

「はい!」

 キラキラした瞳で同じ紙を全員持っている。

「では、宰相殿~~」

 セイリオスの部下達も文官にあるまじき足の速さと身のこなしで消えた。

「側妃様が高級宿に泊まっても良いって!」

「やったな!」

 数名の文官は騎士と手を取り合って居なくなった。そう言えばあいつ、この視察について行きたいと駄々を捏ねたっけ。とクロードは思い出し、セイリオスもこの視察はやけに人気があったな、なんて思い出しつつ溜息をついた。

 その場にポツンと2人は残されたが

「……宿にでも行くか」

「ああ」

 手配済みの宿へ向かい、当然ながらベッドが一つしかない部屋に案内されたし、

「他の部屋を頼む」

「全て予約て埋まっております」

「ちっ」

 あの御仁はこう言うところには知恵が回ると諦めるしか無かった。

「怒っているのか、セリー……」

「そう見えるか?ケリー」

 部屋に着き、扉を閉めて鍵を下ろせば呼び慣れた愛称が口から溢れ出す。

「未だ、自分の都合の良い夢を見ているようだと錯覚するんだ」

 北だが室内は空調が効いてとても快適で、衣服を脱いでも何の問題もなかった。

「私もだ。絶対にあり得ない都合の良い話を永遠と見せられ続けている、そんな気持ちになるよ」

 宿のベランダはとても大きくて、露天風呂まで設置されているが、外からは絶対に見えない造りで、ここが秘密の恋人達に重宝されるだろうなと感じる。
 秘密でなくとも、恋人との逢瀬を誰かに見せる趣味がないなら、嬉しい仕様だ。

「……妻と子供達は?」

「南方の海だそうだ。サファイアは寒いのが苦手だ」

「流石の手腕だな、舌を巻きそうだ」

 いつの間にそんな紙を挟んで来たのか。リンツ家やラグデール家にもディエスの手のものが紛れ込んでいるに違いない。

 2人は笑い合い、ふかふかの大きなベッドに倒れ込む。

「悔しいのでいつか纏めてあの方をギャフンと言わせたい」

「確かにな。そうだな、ソレイユ様に相談してみるか。あの方も悔しいと溢しておられたからな」

 そして、2人はお互い以外の事を暫しの間忘れる事にする。

「学園最期の旅行を思い出したよ」

「ああ、あれは酷かったな。セリーがベッドから一歩も動けなくなった」

 思い出して、懐かしさに目を細める。

「あの時の、続きをしよう」

「良いのか?」

「良いさ、何せ2週間もあるんだからな」

 愛している、と何度も呟き互いを堪能し合う。



「んー、温泉行きたい、温泉ー!でもなぁ」

「仕方がなかろう」

「俺一人で」

「1週間は寝られないと思え」

「ひい!」

 冬の日、俺はとてつもなく温泉に行きたくなった。リゼロに賄賂を渡して調べて貰うとすんごい良い温泉地があるんだって!

「温泉ーー!」

「ディエス様、無理です。陛下が王都を離れてそのような所にまでは許されませんよ」

「えーーー!」

 すんごくがっかりしたけど、セイリオスとクロードに行って貰った。

「あいつらがイチャイチャ出来るくらいの警備がちゃんとしてる所ならさ、ラムが引退後に行けるだろ!」

「そうだな」

 そういう訳でラムの判子を使って調査に行って貰ったんだ!冬季休暇の件もあったし、第二資料室の使用も多くて、ここでイッパツすっきりして貰おうかなって!

「はー!俺、また良い仕事しちゃったー!」

「楽しみだ」

 何だろう?今、妙な寒気を感じたんだけど?ラムはいつも通り黙々と仕事してるし?

「ま、いいか!」

 いつかいけるはずの温泉、楽しみだなーー!


感想 266

あなたにおすすめの小説

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。