6 / 121
6 騒がしい双子 レイクリフ視点
「でね、それで……ぜーぜー!聞いておりマスカッ、レイ殿!」
「もちろん聞いてますよ、リュキさん」
俺に必死に訴えてくるのが兄の方、名前はリュキと呼んでくれと言われたのでそう呼んでいる。
「拙者たちは別にそんな幼女な婚約者が欲しかった訳じゃないんですよ!それなのに向こうから無理やり申し込んできてそりゃないでしょう!オル殿もそう思いますよね!?」
「そうですね、私も同意ですマシェ殿」
団長に涙目で訴えているのが弟のマシェ。本当にそっくりな兄弟で割と見分けがつかない。ただ、弟の方が少し涙もろいようだ。二人の飛び飛びの話をまとめると、二人とも幼児の頃に婚約を打診され、こっぴどく振られそれから引きこもり生活を始めたらしい。
「理不尽!あまりに理不尽!! 」
うおおおお、と叫ぶ勢いのリュキさんだけれど、周りの人達は苦笑いをしている。どうやらこの二人の訴えはこの酒場で知らぬ人はいないといった所なんだろう。リュキとマシェはこの酒場の常連のようだった。
「それから女子と触れ合うことなく過ごして既に20歳……今度こそモテモテウハウハ人生だと思ったのにィ~~~」
度数が低い酒のコップを持って机に突っ伏してマシェが泣いている。団長は隣で慰めているけれど、目が合って国リと頷きあう。俺達がなんとなく察したのはこの双子の身分だ。
まず、小さな頃に婚約者……となると貴族だろうと察せられる。平民は婚約者を持つことは少ないし、持っても年頃になる。そして貴族の中でも何らかの責任を持つ者……高位であるか、家督を継ぐ存在になり得るものなのか……。私や団長のように高位貴族の出身であっても家督を継げる順位もなければ婚約者など決めることもしない……現に私にも団長にも婚約者はいない、そんなものだ。
「はは……それは難儀でしたね」
団長はおかしなやぶを突かぬよう、気をつけながらマシェ殿を慰める。後で何か文句をつけられてはたまったものではない……が、マシェもリュキもそんなそぶりはまったくない。
「でもねええ、聞いてくださいよ!俺達はぁあねえ~幸せなウハウハな未来が約束されてるんですぅ~」
「そうなんだよ~俺達はおっぱいのおっきいお姉ちゃんと結婚して幸せに暮らすんです~~~」
「だぁからいま、ちょ~っと酷い扱いを受けたって明るい未来が待ってるんですよ~えへへ!」
「そうなんですそうなんです。あの約束があるから~無能扱いされたってぇ頑張れるんですよ~!」
どうやら二人はあまり良い人生を送っていないようだった。話が少し湿り気を帯びてきた……というより周囲の酒場の客達が笑うのをやめ、どんよりと曇り顔になっていったのだ……これは周りは訳知りだということだ。
周囲が暗く沈んでいるのに酔っ払ったリュキとマシェは気が付いておらず、酒だと偽られて出された黒い飲み物を飲んで陽気に笑い転げている。
「なぁにが無能だばーろーめ!」
「ホンットだよ、俺達がぁ~本気を出したらあいつらなんてぇ……ボン!なのにー!」
「確かにさアちょっとおお、運動はダメだよお?前世から運動神経は死滅してるもん~~~」
「その代わり高難度古代語の解読とかしてやったしぃ、回復術だってぇええ凄いんだからねぇえええ失礼しちゃうでござるよおお」
相当鬱憤が溜まっているのかリュキとマシェは饒舌に喋り続ける。どうやら父からは最初から見放されていて、母親も寄り付かない。そんな二人の態度を見ている使用人達からもコソコソと陰口をたたかれ続け……二人は下町に逃げ込んだらしい。そしてお屋敷と下町を行き来するようになり、こうして下町の人間に見守られながら成長していった。
私達の方が幸せな暮らしであった。父も母もいくら三男や四男だからといって蔑ろにすることはしなかった。それより、爵位も継げない私達のために将来騎士となって生計を立てられるように学園も騎士科へ入れてくれたし、騎士団への入団も口を利いてくれたらしい。配属先は酷かったが、両親は心を砕いてくれたしいつ遊びに行っても暖かく迎えてくれる。
騒ぎ喚きつかれるとリュキとマシェはテーブルに突っ伏して寝てしまった。
「赤い騎士さん達、リュキとマシェを部屋に連れてってやってくれないか?この酒場の2階の宿に彼等の部屋があるんだ」
「部屋ですか?」
ずっと泊っているんだろうか?不思議に思い聞き返してみると店の主人は優しい笑顔を見せ、思い出話のように語ってくれた。
「この酒場兼宿屋はな、潰れる寸前だったんだ。でも二人が新しいメニューを開発してくれてね。あの黒いシュワシュワした飲み物、二人の考案なんだけどアレをはじめ、色んな酒を作り出してくれてね……持ち直したんだ。それに借金も肩代わりしてくれてね……返しても返しきれない恩があるんだよ」
店の主人の話を静かに聞いていると、数人の客がウンウン、と深く頷いている。どうやらそいつらもこの二人に良くしてもらったクチなんだろう……この二人は……。
「騎士様達に随分気を許しているようだ、仲良くしてやってください。二人は……二人が話している以上に孤独なんです。俺達平民じゃしてやれることは全然ないんだ……」
「頼んます、騎士様」
「二人ともすげえいい奴なんです!口は悪いけど」
「俺、病気で……二人が薬を持って来てくれなかったら今頃この世にはいなかった」
「私は借金で売り飛ばされる寸前だった」
「俺も」
どうやらこの騒がしい双子は街の人から相当好かれているようだった。
「もちろん聞いてますよ、リュキさん」
俺に必死に訴えてくるのが兄の方、名前はリュキと呼んでくれと言われたのでそう呼んでいる。
「拙者たちは別にそんな幼女な婚約者が欲しかった訳じゃないんですよ!それなのに向こうから無理やり申し込んできてそりゃないでしょう!オル殿もそう思いますよね!?」
「そうですね、私も同意ですマシェ殿」
団長に涙目で訴えているのが弟のマシェ。本当にそっくりな兄弟で割と見分けがつかない。ただ、弟の方が少し涙もろいようだ。二人の飛び飛びの話をまとめると、二人とも幼児の頃に婚約を打診され、こっぴどく振られそれから引きこもり生活を始めたらしい。
「理不尽!あまりに理不尽!! 」
うおおおお、と叫ぶ勢いのリュキさんだけれど、周りの人達は苦笑いをしている。どうやらこの二人の訴えはこの酒場で知らぬ人はいないといった所なんだろう。リュキとマシェはこの酒場の常連のようだった。
「それから女子と触れ合うことなく過ごして既に20歳……今度こそモテモテウハウハ人生だと思ったのにィ~~~」
度数が低い酒のコップを持って机に突っ伏してマシェが泣いている。団長は隣で慰めているけれど、目が合って国リと頷きあう。俺達がなんとなく察したのはこの双子の身分だ。
まず、小さな頃に婚約者……となると貴族だろうと察せられる。平民は婚約者を持つことは少ないし、持っても年頃になる。そして貴族の中でも何らかの責任を持つ者……高位であるか、家督を継ぐ存在になり得るものなのか……。私や団長のように高位貴族の出身であっても家督を継げる順位もなければ婚約者など決めることもしない……現に私にも団長にも婚約者はいない、そんなものだ。
「はは……それは難儀でしたね」
団長はおかしなやぶを突かぬよう、気をつけながらマシェ殿を慰める。後で何か文句をつけられてはたまったものではない……が、マシェもリュキもそんなそぶりはまったくない。
「でもねええ、聞いてくださいよ!俺達はぁあねえ~幸せなウハウハな未来が約束されてるんですぅ~」
「そうなんだよ~俺達はおっぱいのおっきいお姉ちゃんと結婚して幸せに暮らすんです~~~」
「だぁからいま、ちょ~っと酷い扱いを受けたって明るい未来が待ってるんですよ~えへへ!」
「そうなんですそうなんです。あの約束があるから~無能扱いされたってぇ頑張れるんですよ~!」
どうやら二人はあまり良い人生を送っていないようだった。話が少し湿り気を帯びてきた……というより周囲の酒場の客達が笑うのをやめ、どんよりと曇り顔になっていったのだ……これは周りは訳知りだということだ。
周囲が暗く沈んでいるのに酔っ払ったリュキとマシェは気が付いておらず、酒だと偽られて出された黒い飲み物を飲んで陽気に笑い転げている。
「なぁにが無能だばーろーめ!」
「ホンットだよ、俺達がぁ~本気を出したらあいつらなんてぇ……ボン!なのにー!」
「確かにさアちょっとおお、運動はダメだよお?前世から運動神経は死滅してるもん~~~」
「その代わり高難度古代語の解読とかしてやったしぃ、回復術だってぇええ凄いんだからねぇえええ失礼しちゃうでござるよおお」
相当鬱憤が溜まっているのかリュキとマシェは饒舌に喋り続ける。どうやら父からは最初から見放されていて、母親も寄り付かない。そんな二人の態度を見ている使用人達からもコソコソと陰口をたたかれ続け……二人は下町に逃げ込んだらしい。そしてお屋敷と下町を行き来するようになり、こうして下町の人間に見守られながら成長していった。
私達の方が幸せな暮らしであった。父も母もいくら三男や四男だからといって蔑ろにすることはしなかった。それより、爵位も継げない私達のために将来騎士となって生計を立てられるように学園も騎士科へ入れてくれたし、騎士団への入団も口を利いてくれたらしい。配属先は酷かったが、両親は心を砕いてくれたしいつ遊びに行っても暖かく迎えてくれる。
騒ぎ喚きつかれるとリュキとマシェはテーブルに突っ伏して寝てしまった。
「赤い騎士さん達、リュキとマシェを部屋に連れてってやってくれないか?この酒場の2階の宿に彼等の部屋があるんだ」
「部屋ですか?」
ずっと泊っているんだろうか?不思議に思い聞き返してみると店の主人は優しい笑顔を見せ、思い出話のように語ってくれた。
「この酒場兼宿屋はな、潰れる寸前だったんだ。でも二人が新しいメニューを開発してくれてね。あの黒いシュワシュワした飲み物、二人の考案なんだけどアレをはじめ、色んな酒を作り出してくれてね……持ち直したんだ。それに借金も肩代わりしてくれてね……返しても返しきれない恩があるんだよ」
店の主人の話を静かに聞いていると、数人の客がウンウン、と深く頷いている。どうやらそいつらもこの二人に良くしてもらったクチなんだろう……この二人は……。
「騎士様達に随分気を許しているようだ、仲良くしてやってください。二人は……二人が話している以上に孤独なんです。俺達平民じゃしてやれることは全然ないんだ……」
「頼んます、騎士様」
「二人ともすげえいい奴なんです!口は悪いけど」
「俺、病気で……二人が薬を持って来てくれなかったら今頃この世にはいなかった」
「私は借金で売り飛ばされる寸前だった」
「俺も」
どうやらこの騒がしい双子は街の人から相当好かれているようだった。
あなたにおすすめの小説
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
別れたはずの元彼に口説かれています
水無月にいち
BL
高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。
なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。
キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。
だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?
「やっぱりアレがだめだった?」
アレってなに?
別れてから始まる二人の物語。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。
みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。
愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。
「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。
あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。
最後のエンドロールまで見た後に
「裏乙女ゲームを開始しますか?」
という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。
あ。俺3日寝てなかったんだ…
そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。
次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。
「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」
何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。
え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね?
これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。