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43 ヤヴァイものらしい
早く帰りたい一心で私はオルフェ団長に目配せをする。団長もこくりと頷いてくれた。ここに来るのにリュキとマシェから預かってきたものがあるのだ。
「なんか言われた時のために袖の下を用意しておきました……というかなんか拙者達、ヤヴァイものを作ってしまったようでござって……」
「ヤヴァイものってなんですか?」
二人が顔を見合わせながらござるござる言っていたので、相当ヤヴァかったらしい。ヤヴァイとは多分とても素晴らしい効果があることなんだろうな。
「これなんでござるが」
手渡されたのは両手の中にすっぽり入って隠れてしまうほど小さな小瓶だった。とても可愛らしく若い女性が好みそうな布で封をされ、小花までついている本当に可愛らしくて小さな瓶。中身は紫のとろりとした物が入っている。
「何か面倒があったら王妃様にこっそりお渡しくだされ、きっとなんとかなりまする」
「マジでどうしましょうぞ……兄者ぁ」
「うーん……本当にどうしようでござるなあ」
とにかくこれを渡してさっさと帰りたいのだ。駄々をこねるしかしない王とその王に文句を言う王妃をもう見ていたくない。
「王妃殿下。双子王子よりお預かりしてきたものがあります。お渡ししても宜しいでしょうか?」
「まあっなにかしら!?新しい美容クリームかしら??」
王妃は美容のことになるととてもうるさく敏感だから……きっとこれもそういう類のものなのだろう。
「一応確認しても?」
「もちろんでございます、宰相様」
宰相様を含め、我々男性が持つには少し可愛らしすぎる小瓶を恭しく差し出した。
「失礼して開けてみますね」
当然だ。中身を確認するのは当たり前だ。宰相様が可愛い蓋を外す……ふわりと花の香りと甘い香りが辺りに広がった。これは嗅いだことがある……ああ、ライルとリックの結婚式の花の匂いだ。これは……あの時の花びらを煮て作ったジャムか。そういえば花びらを大量に集めてジャムを作ると厨房でワイワイやっていたなあと思い出した。
「なんて……いい香り……!」
「空間が清浄化されたような……?」
そう言われてみればなんだか空気が澄んでいる気がする。かび臭い城の部屋がとても快適な空間に変わった。
「危険ではなさそうですね。これは何でしょう」
「花びらのジャムだと思います」
何の花かはあえて伝える必要はないだろう。花びらのジャムと聞いて宰相様は納得されたようだ。ジャムならば甘い匂いもするし、花びらが材料ならば花の匂いがして当然だ。
「なるほど、これは女性が好みそうですね。双子王子は女性の心を掴むのがお上手だ……あんなに苦手なのに」
「苦手だから克服しようと頑張っているようなのです」
克服しなくてもいいのにな、なんて少しだけ思ったことは内緒にしておこうと思う。
「まあ!素敵な香りね。ほんの少ししか入ってないけれど素敵だわ。ジャムね、パンに一塗りしたらもうなくなってしまいそうよ?本当にこれだけ?」
「ええ、それだけです」
「そう……」
ケチね、そう呟いたように聞こえたけれど聞かなかった事にした。
「……本当にうっとりするくらい良い匂い。ジャム、ね?ちょっと失礼」
王妃様は侍女を伴ってそそくさと消えて行った。どんな味がするか試してみたくて仕方がないと言ったところだろうか。
「王妃殿下も戻られましたし、双子王子もお元気だと言うことで今日の報告会はこれまでに致しましょう」
「はっ!」
私と団長は勢いよく頭を下げる。
「して、スカーレットはいつ帰国するのだ?宰相よ」
「さあ?まだではないでしょうか?帰りたいとの書状も来ておりませんし」
私は知っている。実は毎日スカーレット王女から手紙が届いている事を。そしてそれは宰相府のみならず全ての場所で丁重に炎の中に破り捨てられ始末されていることを。
「きっと自由を満喫されておるのでしょう」
「そうかのう、わしは寂しい。早く帰って来て欲しいのう」
宰相様すらそれに返事をしなかった。我々も失礼にならない程度の速度で部屋から出て、大股で廊下を歩き抜ける。
「嫌な予感がします。早く城を出ましょう」
「ええ、それが良いでしょうね」
私達は全速力で厩へゆき、愛馬に飛び乗り尻に鞭を入れる。
「エボニー、マシェの所に帰るぞ」
「ゴルディもリュキが待ってますよ」
2頭は待ってました!と言わんばかりに嘶き、急足で王城から脱出した。間一髪、我々が城を出るとともに王妃殿下の叫び声が上がったらしい。
「な、な、な、にこれっ!美味しい!美味しすぎる!しかも、つるつる、艶々?!あーー!うそっ!もうないなんて!もっと、もっとちょうだい!!」
女神がご下賜くださった花を煮詰めたジャムなど食したらそうならざるを得ない、といった所なのだろうか?
「なんか言われた時のために袖の下を用意しておきました……というかなんか拙者達、ヤヴァイものを作ってしまったようでござって……」
「ヤヴァイものってなんですか?」
二人が顔を見合わせながらござるござる言っていたので、相当ヤヴァかったらしい。ヤヴァイとは多分とても素晴らしい効果があることなんだろうな。
「これなんでござるが」
手渡されたのは両手の中にすっぽり入って隠れてしまうほど小さな小瓶だった。とても可愛らしく若い女性が好みそうな布で封をされ、小花までついている本当に可愛らしくて小さな瓶。中身は紫のとろりとした物が入っている。
「何か面倒があったら王妃様にこっそりお渡しくだされ、きっとなんとかなりまする」
「マジでどうしましょうぞ……兄者ぁ」
「うーん……本当にどうしようでござるなあ」
とにかくこれを渡してさっさと帰りたいのだ。駄々をこねるしかしない王とその王に文句を言う王妃をもう見ていたくない。
「王妃殿下。双子王子よりお預かりしてきたものがあります。お渡ししても宜しいでしょうか?」
「まあっなにかしら!?新しい美容クリームかしら??」
王妃は美容のことになるととてもうるさく敏感だから……きっとこれもそういう類のものなのだろう。
「一応確認しても?」
「もちろんでございます、宰相様」
宰相様を含め、我々男性が持つには少し可愛らしすぎる小瓶を恭しく差し出した。
「失礼して開けてみますね」
当然だ。中身を確認するのは当たり前だ。宰相様が可愛い蓋を外す……ふわりと花の香りと甘い香りが辺りに広がった。これは嗅いだことがある……ああ、ライルとリックの結婚式の花の匂いだ。これは……あの時の花びらを煮て作ったジャムか。そういえば花びらを大量に集めてジャムを作ると厨房でワイワイやっていたなあと思い出した。
「なんて……いい香り……!」
「空間が清浄化されたような……?」
そう言われてみればなんだか空気が澄んでいる気がする。かび臭い城の部屋がとても快適な空間に変わった。
「危険ではなさそうですね。これは何でしょう」
「花びらのジャムだと思います」
何の花かはあえて伝える必要はないだろう。花びらのジャムと聞いて宰相様は納得されたようだ。ジャムならば甘い匂いもするし、花びらが材料ならば花の匂いがして当然だ。
「なるほど、これは女性が好みそうですね。双子王子は女性の心を掴むのがお上手だ……あんなに苦手なのに」
「苦手だから克服しようと頑張っているようなのです」
克服しなくてもいいのにな、なんて少しだけ思ったことは内緒にしておこうと思う。
「まあ!素敵な香りね。ほんの少ししか入ってないけれど素敵だわ。ジャムね、パンに一塗りしたらもうなくなってしまいそうよ?本当にこれだけ?」
「ええ、それだけです」
「そう……」
ケチね、そう呟いたように聞こえたけれど聞かなかった事にした。
「……本当にうっとりするくらい良い匂い。ジャム、ね?ちょっと失礼」
王妃様は侍女を伴ってそそくさと消えて行った。どんな味がするか試してみたくて仕方がないと言ったところだろうか。
「王妃殿下も戻られましたし、双子王子もお元気だと言うことで今日の報告会はこれまでに致しましょう」
「はっ!」
私と団長は勢いよく頭を下げる。
「して、スカーレットはいつ帰国するのだ?宰相よ」
「さあ?まだではないでしょうか?帰りたいとの書状も来ておりませんし」
私は知っている。実は毎日スカーレット王女から手紙が届いている事を。そしてそれは宰相府のみならず全ての場所で丁重に炎の中に破り捨てられ始末されていることを。
「きっと自由を満喫されておるのでしょう」
「そうかのう、わしは寂しい。早く帰って来て欲しいのう」
宰相様すらそれに返事をしなかった。我々も失礼にならない程度の速度で部屋から出て、大股で廊下を歩き抜ける。
「嫌な予感がします。早く城を出ましょう」
「ええ、それが良いでしょうね」
私達は全速力で厩へゆき、愛馬に飛び乗り尻に鞭を入れる。
「エボニー、マシェの所に帰るぞ」
「ゴルディもリュキが待ってますよ」
2頭は待ってました!と言わんばかりに嘶き、急足で王城から脱出した。間一髪、我々が城を出るとともに王妃殿下の叫び声が上がったらしい。
「な、な、な、にこれっ!美味しい!美味しすぎる!しかも、つるつる、艶々?!あーー!うそっ!もうないなんて!もっと、もっとちょうだい!!」
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