【完結】双子の隠キャが踊ります?約束された幸せは幸せでした

鏑木 うりこ

文字の大きさ
97 / 121

98 暗のお姫?様

しおりを挟む
 私はどこで間違えた?いえ、この私が間違えるはずがない!悪いのは、私じゃない!悪いのはフィフナーよ!フィフナーの王太子が私と結婚しなかったのが悪い!フィフナーの宰相が私に交換留学を勧めたのが悪い!フィフナーに紫の髪の双子の無能がいたのが悪い!その片方と結婚しなければならなかったのが悪い!
 全部フィフナーが悪いのよ!

 私は住み慣れた自分の国の自分の部屋に戻って来たけれど、気分は晴れなかった。晴れなかったどころかすべてが真っ暗だった。

 本当に最初のうち、フィフナーでの暮らしは最高だった。用意された部屋も家具も皆新品の手の込んだ一流のものだったし、侍女やメイドも洗練されていて、完璧だった。食事も毎回華やかで彩が豊かであり、ドレスも靴も何もかも新しくてピカピカしていた。

「来てやった甲斐があったわ」

 ただ、イオリア王太子に会う事はできなかった。常に忙しいと言われ、面会時間も貰えない。

「王太子の地位では側妃として第二夫人を迎えることはできません。スカーレット様はごゆるりとすごして、イオリア殿下が王位を譲られた暁に……」
「ふむ、なるほど。分かったわ」

 フィフナーの宰相がそう言ったので、それもそうかと信じた。だから買い物で好きなように過ごしていたのに……どんどん食事の質が落ちて行った。

「……なんだか品数が減ってない?」
「分かりかねます」

 部屋に運ばれてくる食事の皿の数がどんどん減って行った。仕えている侍女やメイドの数も減ってゆく。そして侍女達の質もどんどん下がって行った。

「なによっ!お前はクビよ!クビ!! 」
「かしこまりました」
「なっ!頭を下げて這いつくばって許しを請うなら考えてもいいのよ」
「お断りいたします。私とて伯爵家の出、いわれなき理不尽に這いつくばる矜持はございません」
「ッ……な、なまいきっ!出てお行きっ」

 前は一人クビにすれば補充がされていたのに、新しい侍女は入って来なくなった。私の世話をする侍女やメイドはどんどん減ってゆく。フィフナー城の人間は私を冷たい目で見始める。何とか捕まえた宰相も面倒くさいものを見る目で見始める……あんたが、あんたが来いって言ったのに!

「今、フィフナーの財政状況は良くありません。たくさんのメイドを雇っている余裕がないのです」
「はあ?それは私に何か関係がある!?私は招かれて来た王女なのよ! 」

 宰相は何かブツブツ言っていたが、「忙しいので」とすぐに足早に消える。フィフナーでの生活はどんどん悪くなってゆき、買い物も満足にできなくなり……そのイライラをメイドに向けるとメイドも減る。そしてメイドすらほどんど見なくなり……。

「甘いお菓子の差し入れです」
「そんなものっ……あら?美味しいわね」

 最初は甘いクリームたっぷりのケーキだったと思う。私はイライラを鎮めるためにお菓子を食べ始めた。そして気が付くと胴回りの緩い、ゆったりした服ばかり着るようになっていた。だって外に出かけるにしてもお金はほどんとないし、誰も見に来ない……ならゆっくり寝れるように締め付けのない服を着ていたっていいでしょう?
 パーティや夜会に呼ばれたらドレスは着ますけどね。

「……どれも入らないと思いますが」
「何か言ったかしら?」
「いいえ?それよりも料理長渾身のたっぷりの油で揚げてたっぷりのはちみつとバターを練り込んだ上にシュガーシロップをたっぷりしみこませたドーナツケーキをどうぞ?追いはちみつも用意しておりますのでご自由に」
「これくらい食べておいてやるわ……もう行っていいわよ」
「かしこまりました」

 食べることが楽しみになっていた、それしか自由にできなかったから。でもやっぱり買い物もしたいし……私の騎士団の男達がどうなったかも気になりだしていた。イオリア王太子殿下の側妃となるならば、と男を近くに寄せ付けない生活をしていたけれど、殿下が王になるにはどうも時間がかかりそう。

「なら少しくらい……そうだわ。ルゼンに一度帰りましょう、それが良いわ」

 何度も何度も宰相を呼びつけたのに、帰ることができないと渋い返事しか来ない。挙句の果てに帰るには無能王子の兄の方と結婚しろ?意味が分からないわ!!私は当然暴れたけれど、国の取り決めだからと言い含められる。

「リキュシュ王子が帰ってこれば、また贅沢が出来ますよ……多分」
「贅沢……! 」
「結婚したのち、それぞれに恋人を持つ高位貴族はたくさんおりますし」
「……そうね、少し我慢すれば」

 あの時手放した私の騎士達はきっと寂しくて涙を流しながら私の帰りをルゼンで待っているはずだもの。国の為にも彼らの為にも私が我慢してやらなくちゃいけないのだ。そうやって条件を飲んでやったのに!

 じっくり見たフィフナーの無能王子は割と可愛い顔をしていた。本当にきれいな紫の髪ですらりと細い体が印象に残る。王子というよりどことなく女性っぽくて、姫といっても通ってしまう位の顔立ちをしていた。でも私がカチンと来たのはその無能王子の傍に私の騎士団たちがいることだった。

「どういうことなの!? 」
「私に聞かれても分かりかねますが……彼らは騎士ではなく、双子王子に雇われた傭兵団らしいですよ」
「よ、傭兵……?ま、まさかオルフェアもレイクリフも騎士を辞したの……?」

 フィフナーの宰相を捕まえて尋ねるとそんなことを言われた……間違いないわ、私が彼らを解雇したから、行き場を失ってしまったんだ。仕方がなく騎士を辞め、傭兵なんかにならなくちゃいけなかったんだわ。

 私が、私が悪いのね……ならば、あなた達を救うのは私でなくちゃいけないわ。国に帰って早速お父様にお願いすることができた様ね。安心して、オルフェア、レイクリフ。あなた達をすぐに騎士に戻してあげるわ。だって私は王女ですもの、ルゼン国の王女スカーレットですもの!

しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。

Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。 満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。 よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。 愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。 だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。 それなのに転生先にはまんまと彼が。 でも、どっち? 判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。 今世は幸せになりに来ました。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった

カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。 ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。 俺、いつ死んだの?! 死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。 男なのに悪役令嬢ってどういうこと? 乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。 ゆっくり更新していく予定です。 設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。

男だって愛されたい!

朝顔
BL
レオンは雑貨店を営みながら、真面目にひっそりと暮らしていた。 仕事と家のことで忙しく、恋とは無縁の日々を送ってきた。 ある日父に呼び出されて、妹に王立学園への入学の誘いが届いたことを知らされる。 自分には関係のないことだと思ったのに、なぜだか、父に関係あると言われてしまう。 それには、ある事情があった。 そしてその事から、レオンが妹の代わりとなって学園に入学して、しかも貴族の男性を落として、婚約にまで持ちこまないといけないはめに。 父の言うとおりの相手を見つけようとするが、全然対象外の人に振り回されて、困りながらもなぜだか気になってしまい…。 苦労人レオンが、愛と幸せを見つけるために奮闘するお話です。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...