【完結】双子の隠キャが踊ります?約束された幸せは幸せでした

鏑木 うりこ

文字の大きさ
96 / 121

97 明のお姫様

しおりを挟む
 私の名前はエリーゼ。エリーゼ・シュラウトと申します。幼少の頃よりこのフィフナー国王太子イオリア様と婚約を結び、将来王妃となりイオリア様と支え、豊かな国を作ろうと努力してまいりました。
 お優しいイオリア様には6つ下に双子の弟がおります。名前をリキュシュとマシェッツという、とても可愛らしいけれど、不思議な弟たちです。

「えりーぜ……チャン」
「なんです?リュキ」
「どしてえりーぜチャンはあんまりこわくないんでござるか?」
「知りませんけど……」
「えりーぜチャンもなにかとくしゅのうりょくがあるでござるか?」
「ないですよ、マシェ」

 初めて自分達の婚約者候補だったご令嬢に会った日に、散々に馬鹿にされ倒れてしまった双子は、女性は怖いものと認識してしまったらしく、常に青褪めているか、震えているか……隠れているかになってしまいました。

「ど、どうしたらいいだろう……エリーゼ嬢」

 イオリア様も手の打ちようがなく、困っていらっしゃいましたが、何を困ることがあるんでしょう。

「良いじゃありませんか。イオリア様がこの国を立派に治めれば、リュキとマシェくらい好きなように暮らさせてやればいいのですから。何も問題ないですわ」
「そ、そういう物だろうか、リュキもマシェも王族の一員なのだよ」
「そこも含めて、私達が何とかしてあげましょう、ね?」

 そう微笑むと、イオリア様もやっと笑顔になってくれました。

「そうだね、エリーゼ嬢。エリーゼ嬢となら一緒に頑張れる気がする」
「ふふ、頑張りましょうね」

 その話をイオリア様は双子にこっそり伝えたようです。そうしてから双子は私には話しかけてくれるようになりました。

「お、女の子って……目がギラギラしてるでしょ……エリーゼちゃんはあんまりしてないけど」
「私だってキラキラくらいしますが?」
「あ、知ってる。兄上さまをみてるときはキラキラしてる」
「そりゃ、世界一かっこいい私の王子様ですからね」

「「のろけ! 」」
「ふふん! 」
「エ、エリーゼ……ありがと」
「きゃっ!? 」

 リュキとマシェに話していたのに、いつの間にかイオリア様に聞かれていて恥ずかしい目に合ったことはちょっと数え切れませんが……。

 そんなリュキとマシェが自分で自分の伴侶を見つけて来たのです!
しかもイオリア様の次くらいにかっこいい騎士様でした。二人ともそれぞれにリュキとマシェしか見ていないようなたっぷりの甘さと類稀なる包容力を持ち合わせた方々で、一目見た時からこれなら任せられると思えるくらいの胸筋でした。凄いですね、顔の次に男性の胸辺りを注視してしまうのは初めてです。
 あまり国王様にも側妃様にも大切にされてこなかったリュキとマシェ。これなら安心できるとイオリア様と一緒に二人の騎士に頭を下げてお願いしました。
 

 もうフィフナー国のことで、リュキとマシェを煩わせるのは……と思ったのですが、未曽有の長雨に我々は打つ手がありませんでした。

「駄目だ……人は飢える一方だ。作物が全滅している」
「……雨はやはり」
「ああ……」

 この国の神官の大半が城に謁見を申し込み、同じようなお告げを持って来ました。

「この空は女神様の……しかも複数の女神様の怒りです。女神様のいとし子をあのような形で追い出したのですから」
「黙れ!ワシが悪いと抜かすのか!! 」

 国王様は王座から神官達を叱り飛ばしますが、そんなことをしても何の解決にもなりません。

「王よ、王位をイオリア王太子殿下へお譲りくだされ!それが女神様の怒りを鎮める唯一の方法です。幸いにもイオリア王太子殿下は女神様よりの加護をお持ちの方、国と民の為にどうか、どうかお願いします!」
「黙れと申しておる!! 」

 謁見を願い出た神官達は全て口をそろえてそういうのです。


「拙者達もそう思うでござるよー。兄上が王様になれば雨はやむでござろうな」
「我らの父上(仮)が権威を振りかざしている間はどう頑張っても無理でござろうな~」
「リュキ!?マシェ!?」
「エリーゼちゃん、おひさ~」

 煩わせたくない、と思っていても話は二人の元に届いてしまっていたようで、突然イオリア様の執務室にリュキとマシェが現れました。この二人はとても不思議な力を持っていて、良くこのような事をしでかします。

「拙者達が「機嫌直して」ってなんかい頼んでも駄目なんでござるよ」
「どうも、この世界は元々捨てられ滅びゆく定めだったから、ちょっと手入れをしないとこんな風になるんだって」

 二人は空恐ろしいことをいいますが、嘘がなさそうなのでさらに恐ろしいです。

「それも恐ろしい話だが、まずは飢える民をなんとかしたいと思っている。二人とも知恵を貸してくれないか」
「その為に来たでごさるよ、ほい」

 2人は持って来た大きな箱をごろりとひっくり返しました。中からは大量の携帯食料が出て来ます。ひっくり返す必要はなくてよ?リュキ。

「このまっずい携帯食料を更に不味くする方法をお教え致します」
「何かあるのだな?教えてくれて、リュキ」

 もそもそしていて食べ辛く、味も美味しくない携帯食料。でも栄養だけは満点。

「これを湯で溶くんです。更に激まずになりますがーー」
「1人分が3人分になります」
「すぐ手配する!」

 イオリア様はイオリア様の命で動いてくれる者たちをかき集め、すぐに炊き出しの用意を始めます。こういうところの決断力の速さは本当に素敵で惚れ直してしまいそう!

「エリーゼちゃん、エリーゼちゃん。エリーゼちゃんならまだジャム持ってるよね?」
「え?あの素晴らしい香りの薔薇のジャムね。皆に振る舞ってしまったからあと一掬いくらいしか残ってないけど」

 そういうとリュキとマシェはにっこり笑った。何かしら?私の性格は見抜いてますよ、と言わんばかりの顔で少しだけむかつきますわ。

「出来上がった鍋に、未来の王妃様からの愛を一掬い。これが秘密のレシピでござる」

 やけに悪戯っ子な顔で笑っていますが、この素晴らしく美味しいジャムの最後のひと匙を民に分け与えろと?

「炊き出しは何箇所でも行うつもりだわ。最初の鍋にしか愛を入れられないのは辛いわ」
「大丈夫でござるよ、女神様は見ているでござる」

 ならば心配ないわね。このエリーゼちゃんにお任せだわ。

「携帯食料はいっぱい持ってくるでござるから、任せて欲しいでござるよ」
「はー父上(仮)も早く引退してくだされば良いのにー」

 リュキとマシェの言うことは最もだけれども、私たちが出来ることは限られている。限られた範囲で、工夫して民を守らなければ。

「ではまたね!」
「ありがとう、リュキ、マシェ」

 二人は何でもないふうに扉から出て行ったが、二人の後ろの空間は廊下ではなかった。二人の恋人がリュキとマシェが帰ってくるのを待っている。
 扉は普通に閉じられるが、次に私が開けたとしても廊下に繋がっているだけで、あのオレンジの光が溢れる暖かそうな場所には繋がっていないだろう。

「よし!私も動き易い服に着替えましょう!」

 炊き出し隊と共に街を回るわよ!

しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。

Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。 満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。 よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。 愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。 だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。 それなのに転生先にはまんまと彼が。 でも、どっち? 判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。 今世は幸せになりに来ました。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった

カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。 ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。 俺、いつ死んだの?! 死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。 男なのに悪役令嬢ってどういうこと? 乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。 ゆっくり更新していく予定です。 設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。

男だって愛されたい!

朝顔
BL
レオンは雑貨店を営みながら、真面目にひっそりと暮らしていた。 仕事と家のことで忙しく、恋とは無縁の日々を送ってきた。 ある日父に呼び出されて、妹に王立学園への入学の誘いが届いたことを知らされる。 自分には関係のないことだと思ったのに、なぜだか、父に関係あると言われてしまう。 それには、ある事情があった。 そしてその事から、レオンが妹の代わりとなって学園に入学して、しかも貴族の男性を落として、婚約にまで持ちこまないといけないはめに。 父の言うとおりの相手を見つけようとするが、全然対象外の人に振り回されて、困りながらもなぜだか気になってしまい…。 苦労人レオンが、愛と幸せを見つけるために奮闘するお話です。

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

処理中です...