【完結】イケボなハムスターと同居中~愚痴聞き神様と枯れ女子の日常

鏑木 うりこ

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9 パーフェクト・ダイフク・ビジュアル

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「誠子……」

「駄目だ」

「誠子ぉ……」

「駄目だって言ってるだろう!」

 わっ!と大福は顔をお腹の下に隠して泣いている。完全に大福パーフェクト・ダイフク・ビジュアルである。

「何が梅酒が飲みたいだ!?ふざけんな!死ぬ気か!」

「うわーーー!初夏のお楽しみではないかーーー!」

 季節は夏になりかけている。

「せめて梅の実をカリカリしたいのだ」

「駄目だ!ハムスターには有害な物質が含まれているって検索結果に出ている!しかもアルコールは駄目っ!ハムスターは水以外飲めん!」

 大福の真っ黒な黒豆みたいな目に水の膜が張って行く。ポロリ、体に似合わぬ大きな涙が真っ白い毛の上を滑って落ちた。

「う……うう……わ、私は酒も飲めんのか……」

「大福……」

 なんだか憐れ。

「だが、駄目だ」

 ピシャリと言い切る私に

「誠子おおおおーーー!」

 今日も大福の叫び声が響く。やめろ、近所に聞こえたら誤解されるじゃないか!



「えー?少しくらい良くないですかぁ?」

 佐倉改め海野美智子はトントンと書類を整えながら言う。良い結婚式だった。一応私も呼ばれたのだ。

 出会い?勿論ないぞ。

「なんでも、ハムスターは体が小さいだろう?だから、人間がほんの少しだと思ってもハムスターにとっては致命傷なんだと」

 へえ!海野さんはまじまじと私を見た。

「朝比奈さんって割と色んなことどうでも良さそうにしてるけど、大福ちゃんに関しては真面目なんですね」

「はは、バレてたか」

 私は真面目な社員とは言えない。普通程度に仕事をして、普通程度に老いて、あまり人に迷惑をかけずに死んで行こうと思っている。
 親ももう居ないし、兄弟もいないからそれで良いと思ってるし、大福だってハムスターだ。確実に私より早く死ぬだろう。

「出来る事なら長生きして、天寿を全うさせてやりたいからな」

 親の介護はできなかったが、大福の介護はしてやる気満々なんだ。

「優しいんですね」



 海野さんはそう言ったが、わたしがそうしたいだけだし、家に帰れば

「うわーーー誠子ぉーー!米が食べたいーーー!」

「駄目だ!頬袋にくっついて腐るって書いてある!」

「うわーーーー!」

 大福は今日も泣き叫んでいる。

 けして虐待ではない!

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