【完結】妹ざまぁ小説の主人公に転生した。徹底的にやって差し上げます。

鏑木 うりこ

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26 ないとは言えない血の繋がり

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「な、なんだと……!?」

「てかね、もうあんたら全員死ぬまでコキ使ってやるから安心しなよ。いいか?はっきり言えばそれでも全く足りない。分かる?それくらいものすごい金額だって事。別に嫌ならいいよ、鉱山奴隷っていう最後の売り先に一直線だけどね?」

 おい、と男が指を鳴らすと、数人の屈強な男たちが現れる。

「やめろ、離せ!」

「おいおい、やっぱり鉱山奴隷が良いのかい?その若い娘だけは娼館に売れるだろうけどね」

「い、嫌よ!娼婦だなんて!!絶対嫌!」

「じゃあ真面目に働くんだな。借金が返し終わったら自由にしてやるよ」

「わ、ワシは……ワシは関係ない!ワシは貴族だぞ!」

「あんたの息子の嫁がこさえた借金だ。関係あるだろう?それに貴族じゃねえよな」

「ひい!離せ!」

 もがいても敵うはずもなく、4人は粗末な馬車に詰め込まれた。

「おーお。たった1日しかいねーのに、随分とまあ買い込んで。メイドも見えねーとはもう逃げたのか?」

 自称金貸しは呆れ顔で家の中を見渡す。壊れた食器以外何もなく、人の気配はしなかった。

「もっと派手な立ち回りがいるかと、郊外の空き家を使ったけど必要なかったなぁ」

 ボリボリと頭を掻く。流石にその辺りまでアンゼリカは読めなかったようだ。

「あんな奴らに仕事を仕込めとは……お嬢の無茶振りは相変わらずだなぁ~」

 あなたなら出来るでしょ?と充分すぎる支度金と共に言われちゃ何とかするしかない。

「……爺さんは駄目かもな。頭は回るが自尊心のせいで多分人に頭を下げる事は出来んだろうな」

 

「う、うう……」

 仕事を仕込まれる中、やはりトレントだけは殴られようが頑なに嫌がり、連れ去られる。

「鉱山奴隷として売ったよ。もう二度と会うこたぁねえだろうよ。しかも爺さんじゃ支払いの足しにもなんねぇ」

 そう吐き捨てられ、残されたタティオとドロシー、リルファはガタガタと震えるしか無かった。

「明日からは工事現場に行ってもらうからな!ここで食う飯代だってきっちり借金に上乗せされてんのを忘れるなよ!」

「ひ、酷い……」

 

「……そう……」

 祖父が奴隷に落ちたと知ってもアンゼリカは表情を変えなかった。それはトレントがアンゼリカの母親のアントワーヌの窮状を伝えられた時にした表情と一緒だった。
 そしてそうなる事は最初から知っていた。何故なら小説でトレントはやはり鉱山奴隷として連れ去られ、その後の事は何も触れられていなかった。
 一つ違う事は小説ではアンゼリカの元祖母ハンナも共に奴隷として鉱山に送られるのだが、今ハンナは実家の領地で大人しく過ごしている事だろう。
 それが良かったのか悪かったのかアンゼリカには分からない。変わる事、変わらない事、どちらが自分にとって幸せなのか分からない……。

「……なあ、アンゼリカ。何でお前がついていながら、ザザーランの領地はあんなに赤字だったんだ?」

 また遊びに来ていたセルドアが不思議そうに尋ねる。アンゼリカの手腕があれば領地を赤字にしておくなんてするはずもない。

「区画整理と、工場移転、住民の住居移動なんかをやってたのよ」

「あ、なるほど。街道拡張のアレか」

「ええ。ザザーラン領の側を通すでしょう?宿や、店の手配もね。セルドアも早めに土地を押さえておかないと高くなるわよ」

 人の往来が多くなればそれだけ金が落ちる。それを見越してアンゼリカは領地収入が赤字まで落ちるのに躊躇わずに整理を行っていた。

「それも終わって軌道に乗り始めたからね。そろそろ黒字になるわ」

「ザザーランのお荷物を始末し終わると同時にか?狙いすぎだろ」

「想定内と言って欲しいわね」

 悪戯っぽく、くすりと笑うアンゼリカは普段の鋭さが減って年相応の女性に見える。

「あ、うん……」

「何よ!その気の抜けた返事!気持ち悪いわ」

「はは、それでこそ」

 こんな軽口がずっと続くとセルドアは思っていた。だから幼馴染が誰かに取られるなんて、予想しなかったのに。

「馬鹿な失敗は二度しない」

 そう決意を小さく呟く。地盤を固めるのはセルドアも得意なのだから。

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