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22 魔王と勇者の紳士同盟
しおりを挟む「泣けよぉ」
「リン、ただ普通に私が泣いても駄目なのだ。何かとても嬉しかったとか感動した時でなければ」
「じゃあ何か嬉しいんだよ!」
「そうだなぁ……生涯の伴侶ができた時とか?」
「それはお嫁さんのことだね?! どんなお嫁さんが好みなんだ?」
「うーん、少し強引でも可愛らしく、背は私より低くて髪の毛は茶色で目は緑が良いかな?」
「お? かなり具体的だ、すぐ探そう茶髪に緑目? 兄ちゃんかな??」
「レンは私のですから他を当たってください」
ん? 何で俺、また殿下に抱き締められてるんだ? まあいつもの事だから気にすることないか。殿下って良い匂いするし、あったかいし、くっついてても別に嫌じゃないしね。
リンのせいで少し元気になってしまった魔王は死なないらしい。俺達はしばらく魔王の様子を見極める為に近くで過ごすことにした……というかリンが魔王にくっ付いて離れない。
「なあなあ! 涙が駄目なら鼻水は? 唾液は??」
「普通だと思うが……」
「じゃあ血とか?!」
「痛いのはあまり……」
「うーん! 何ならいいんだ?!」
リンは魔王のことを魔王素材生産所だと認定してしまっているような気がするぞ、すまない、魔王! 生まれたばかりのひよこのようにずっと魔王の後をつけ回している。もう一度いう、弟がすまない! 魔王。
「レン、神聖コインですよー」
「わぁい! それ初めてみましたー!」
殿下は今日も珍しい金属でできたコインを俺にくれた! 良い人だぁ。ホクホクと殿下のそばに戻ってホワンと白い光を纏っているコインを眺めたり明かりに透かしたり引っ掻いてみたり。楽しいなー! あれ? なんか誰かに謝らなきゃいけない気がしたけどなんだっけ? まあいいか!
「レン、私の側にいるように」
「? わかったー」
俺達は魔王城の一角を整備してしばらく滞在することにした。何せリンがあの調子でずっと魔王に張り付いているし、殿下や騎士達も魔王の語ったことが本当か見定める必要があったからだ。
でも黒い魔力を吹っ飛ばしてしまった後の魔王城には魔物が一匹も現れない。魔王も普通の人間のように追いかけ続けるリンをあしらっている。ただ、魔王は人間大の大きさに戻っているがら巨大化していた時の名残なのかなんなのか大きな角とドラゴンみたいな尻尾が残っていた……もしかしたら魔王はああ見えて人間のじゃないのかもしれない。
「魔王城というが実際にここは墓地なのだ。狂った黒い魔力に抗えなくなった代々の魔王が勇者に倒される為に……つまりは死ぬ為にやってくる場所。それがここになる。魔王がいれば同じく黒い魔力に汚染された魔物達もどんどん集まってきて、あのような集団を作ってしまう……あの魔物達は私が呼び寄せた訳ではなく、勝手に集まってきていたものなのだ」
「だから、黒い魔力がなくなった今、魔物は寄り付かないと?」
「その通り。今は私が魔王として行っていたかつての仕事……黒い魔力から邪気や負の感情を取り去って元の魔力に戻すという力が戻っている……凶暴化している魔物達も徐々に元に戻って行くと予想される」
「なるほど……」
殿下は魔王の話を聞いて考え事をしている。確かに今の所は平和だけれど、勇者である殿下はきちんと自体を把握しないといけないもんな。なら俺は殿下が一番大好きなビーフシチューをいっぱい作ってあげないとな!
黒い禍々しい金属じゃなくてちょっと良い鋼で大きな鍋を作ったんだ! 蓋が重くてロックがかかるようになってるから、煮込み料理が捗るんだぞー!
今日もいっぱい愛情込めて作るぞ!
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