【完結】不憫令息を幸せにする。責任を取ったつもりがこういうのはちょっと違うと思います!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
2 / 26

2 「俺」はアンセルを幸せにしたい

 ただの子爵の子供の僕とフェルム公爵家の跡継ぎアンセルが何故友達かと言うと、僕の家はフェルム公爵家の所縁の家だから、歳が近い僕がアンセルの友達になったのだ。
 あとフェルム家は大らかな家柄で下の者にもとても気さくだったし、何と王都のタウンハウスは僕の家とアンセルの家は隣同士で薄い生垣で仕切られただけで簡単に行き来できた。
 何代か前のフェルム公爵夫人とステファン子爵夫人がとても仲が良くてこうなったらしい。
 僕は生まれた時からアンセルと一緒だったけれど、父上からアンセルとの差はきちんと躾けられていたから、他の高位貴族に無礼を働かずに済んでいた。

「ごめんね、ユール。血が出てる……」

 僕が勝手に転んだのにアンセルは泣きそうだ。その天使の涙目に僕の方が罪悪感を覚える。

「いてて、擦りむいちゃった! 僕、家に帰って手当して貰ってくるね。終わったら後で一緒にお勉強しよ?」
「うん……私の事嫌いにならないで」
「なんで僕がアンセルの事嫌いになるの? 僕達友達だろ?」

 僕が笑うとやっと天使は微笑んだ。

「うん!」

 ステファン家の庭で転んだ僕は家に戻り、メイドに傷を洗ってもらい軟膏を塗って貰った。アンセルは生垣の穴を通りフェルム家に戻って行く。後で勉強と言うのは、アンセルがユールも一緒に勉強してって言うもんでアンセルの家庭教師が来る時間に僕も隣で座って話を聞いている。
 僕が分からなくて後でアンセルに教えて貰う、それがアンセルのやる気に繋がっているらしくて、フェルム公爵に頼まれている事だ。
 僕も無料で勉強を教えて貰えて助かっていたりする。

 手当はすぐに終わり、フェルム家の勉強時間までに少し時間がある。

「俺はどうしたらいい……?」

 ここは禁天の世界なんだろうか。そうだとすればアンセルはこれから酷い目に遭う。フィクションなら良かった、でももう今まで幼馴染として過ごして来たアンセルが監禁され犯され、薬も盛られ……禁術の材料にされ、男なのに何人もの男の子供を産まされ……この世を恨んで恨んで壊れて捨てられ死んで行く、そんな風になるなんて。

 しかも間違いなく「俺」のせいで。

「俺は、アンセルを救う為にここに居るんじゃないのか……?」

 自然にそう思えた。もしかしたら神様と言う存在があって、アンセルを憐れんだのではないか?
 確かに禁天の世界に神はいる。だから、これが本当にあの世界なら神はいるんだ。

「俺は……アンセルを救いたい」

 前世で俺は満足に生きた。多分「アンセル」のおかげでだ。だから今度はアンセルを幸せにしてやる。あんな目の焦点があっていない青年のアンセルになんてさせない。

 アンセルには笑顔がよく似合うんだ。

感想 16

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!

木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。 この話は小説家になろうにも投稿しています。

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。 家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。