【完結】不憫令息を幸せにする。責任を取ったつもりがこういうのはちょっと違うと思います!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
3 / 26

3 もうそれなのか! アンセル

しおりを挟む
「お父様とお母様が領地に視察に行くんだ。でも、私はもう7歳だし、留守番くらい出来る……けど、寂しくなったらユールが泊まりに来てくれる?」
「もうなのか!アンセル!」
「えっ?! どうしたのユール??」

 もう最初の不幸だ。アンセルは不幸のオンパレードだから詰め込むにはスケジュール過密なんだ。
 間違いない、アンセルは7歳の時に両親を馬車の事故で失う。更に母親のお腹には双子の弟がいていっぺんに4人の家族を失うのだ。

 シトシトと冷たい雨に打たれて、涙が枯れ果てた7歳のアンセルが墓の前で立ち尽くすスチル。

「凄く暗くお願いします」

 俺はそこそこ絵は描けたが、BLのキツいのは無理だったからビジュアルは外注した。そのクリエイターにそんな発注をしたのを思い出した。

「分かりました」

 短いメールのやり取りだったけれど、クリエイター予想より哀しい場面の下絵をくれたので1発OKした。そして出来上がりも最高でこれからのアンセルの不幸な未来が滲み出ていて最高だった。

「駄目だ、アンセル! 中止にして貰うんだ! それも駄目ならせめて日にちをずらして貰って!!」
「な、何を言ってるの?? ユール」

 このまま出発したら、隘路に仕掛けられた罠が作動してアンセルの家族は殺されてしまう。

「良いから! 俺がフェルム公爵に言う、一緒に来て!」
「ユール? ユール??」

 僕はアンセルの腕を引いて失礼だけど、フェルム公爵に突撃した。後で怒られるかもしれないけど、死ぬよりマシだ!

「公爵様! 視察に行かないで!」
「ユール? 礼儀は0点だけど理由があるのかな?」

 しまった、そこまで考えてなかった!アンセルが寂しがるなんて人のせいにしたくないし……あ! そうだ、この時点で公爵は知らないだ。

「マルグリット様のお腹に赤ちゃんがいませんか!?」
「へ?」
「ふぇ?」

 アンセルも公爵も変な声を上げる。そりゃそうだろ。何せアンセルのお母様、マルグリット様が妊娠していたのは亡くなってから気がついたんだもんな。

「お腹に赤ちゃんいる女性の旅行は危険が伴うと聞きました!」

 押し通せ、俺!

「ど、どうしてそう思ったんだい? ユール」
「去年のお母様みたいになってた気がしますから!」

 僕のお母様のリースさんは去年妹を産んで居る。とても可愛い。だから押し通す!

「しかし、マルグリットは何も言っていないぞ……?」
「お医者様に聞いてみて!」

 うーん、と公爵様は唸ったが

「もしユールの話が本当なら……そうだな、医者の診察などすぐ終わるし。何かあれば私は悔やんでも悔やみ切れないものな」

 僕はほっと胸を撫で下ろす。そうしてマルグリット様の妊娠は確認されて

「私も全く気が付きませんでしたわ」

 と、頭を撫でて貰い、公爵様からは

「ユール! お前は我が家の救世主だな!」

 と高い高いされてから、ずっと狙ってた初級魔導書を買って貰い

「ユール! 私、お兄様になるんだよ!」

 アンセルの輝くばかりの笑顔を貰った。

「ユール!よく分かったね!」
「えへへ……」

 ステファン家のお父様達にも褒められて、頑張って良かったと思う。いい仕事をした!

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。 追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。 きっと追放されるのはオレだろう。 ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。 仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。 って、アレ? なんか雲行きが怪しいんですけど……? 短編BLラブコメ。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

ざまぁされた悪役令嬢の息子は、やっぱりざまぁに巻き込まれる

たまとら
BL
ざまぁされて姿を消した令嬢の息子が、学園に入学した。

【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。 自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。 番外編はおまけです。 特に番外編2はある意味蛇足です。

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...