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7 アンセルの腰巾着
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「アンセル、もう先輩から見えないよ」
「え? うん」
あんまりにも私達がぴったりくっついて歩いているもんだから、他の生徒の視線を集めてしまっている。そう言う目立ち方はしたくないんだけどな。
「ねえ、ユール。相談なんだけど」
「何?」
「しばらく私の恋人のフリして欲しい」
「えっ?!」
何言ってんだ?? と、思ったけれど。
「もしかして結構言い寄られてるんだっけ?」
「うん。王太子もなんだかちょっかいかけてくるし、一々避けるのも面倒でね。ユールには申し訳ないけど」
「アンセルには婚約者もいるのになあ」
名前も顔も知らないけれど、少し離れた国の貴族のお嬢様と婚約しているとフェルム公爵からも聞いている。
それでもこの美貌の天使を傍に侍らせたいと言う不埒者が後を断たない。
「だから、ね?」
「うーん、良いよ」
その方が守り易いかも。私が傍にいる事でアンセルの苦労が減るならお易い御用だ。
因みに私には婚約者がいない。弱小子爵家の息子ならこんなもんだろう?いや、他の人は知らないけれど、適当な時にお見合いでもして誰かお嫁さんに来てくれたら嬉しいと思う。今はアンセルを幸せにすることが一番大事だ。
「ありがとう、ユール。ユールはずっと傍にいてくれるし、嬉しいな」
天使が天使の微笑みを浮かべた! 眩しい!
「ダメダメ、その笑顔向けられたら誰でもアンセルの事好きになっちゃうよー!」
「えー!ホント? じゃあユールに向けておくね!」
「うわー! アンセルー大好きー愛してるー」
「ふふふ!」
私達は凄く近い距離で冗談を言いながら笑い合う。うん、これなら恋人同士に見えるかもしれないね。
この世界の恋愛観は「俺」がいた世界とほぼ一緒だ。同性同士の恋愛は「ある」が「推奨」はされていない。特に高位貴族は跡継ぎを残す義務もあるから、大っぴらにはしない。
そこの微妙なラインを意識しつつ、そんな感じを演出して行くんだ。
「……腰巾着」
そう、ユールはアンセルのフェルム家の威を借る狐と認識されている。そんな事もないし、そんなつもりも無いんだけれど、別に何を言われたって構わない。
「俺」はアンセルを守るって決めたんだから。それにアンセルの涙は18歳から本格的に始まるんだから……これからが本番だ。その為に出来る事はしたつもりだ。
「今度は幸せにしてやるからね」
「わあ、結婚の誓いみたいだねぇユール。でも私はそこまで頼りない男じゃないよ? 幸せは2人で掴み取るものだよ」
「まあ、そうかもしれないけれど」
繊細な温室の花のようだったゲームのアンセル。無理矢理王太子に手折られることもあった。
「嫌だ! 嫌だ、離して、離してぇ!!」
「本当はこうして貰いたかったんだろう? いやらしいなぁ、アンセル!」
「いや、いやっ!や、やぁーーーー!」
アンセルの初めての男は王太子オレルアンでヤツの私室で襲われた。
「しっかり押さえつけろ!」
「はっ!」
「離して、離してぇ!!」
王太子の腰巾着共に両手を押さえつけられ、無理矢理ベッドに組み敷かれ乱暴に突っ込まれる。
「痛い、痛いぃーーー!」
「ははっ! アンセルはココも繊細だったか!」
容赦なく嬲られ、痛みだけを刻まれる行為。血と精液塗れたアンセルを連れて帰るのがユールの役どころだったな。
アンセルはこの王太子にグレッグ一家を追い出して貰った恩があったので、ほぼ言いなりになっていた。焦点の定まらない目のアンセルは、好きな人には大いに刺さったらしい。
「ユール?」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」
「大丈夫? 次の剣術の授業でぼーっとしてたら私が勝っちゃうね! 勝ったら何か貰おうかなー?」
「えっ?」
このアンセルは温室の可憐な花じゃない。ユールがアンセルを守る為に体を鍛え始めたら
「私も負けない!」
と、一緒に修練を始めてしまったのだ。同じくらい修練し、フェルム公爵が呼んでくれた師匠に2人で弟子入りし、体も鍛えたので、アンセルはかなりの剣士になっている。
「守る必要なさそうな……いや、何が起こるか分からないから!」
鍛えても鍛えてもアンセルは天使のままだったし、ユールも鍛えてもムキムキにはならない体質だったらしくて、絵面的に暑苦しくならなかった。
「良かった……ムキムキ天使はちょっと嫌だもんなぁ」
「ん? ユールはムキムキまっちょが好きなの? 私は鍛えてもそうならないみたいなんだよねー……」
贅肉はないけれど、スルッとしたお腹を撫でながらアンセルは残念そうに呟くけど
「いや? ムキムキにならなくて良かったなって思ってる。アンセルは今のままの方が良いと思うよ」
「そ、そう? ユールが今で良いなら私も嬉しいな!」
あっ! また眩しい天使の微笑みだ! こんな眩しい微笑みの持ち主がムキムキマッチョじゃない方が全世界的に平和だと思うんだ!
「え? うん」
あんまりにも私達がぴったりくっついて歩いているもんだから、他の生徒の視線を集めてしまっている。そう言う目立ち方はしたくないんだけどな。
「ねえ、ユール。相談なんだけど」
「何?」
「しばらく私の恋人のフリして欲しい」
「えっ?!」
何言ってんだ?? と、思ったけれど。
「もしかして結構言い寄られてるんだっけ?」
「うん。王太子もなんだかちょっかいかけてくるし、一々避けるのも面倒でね。ユールには申し訳ないけど」
「アンセルには婚約者もいるのになあ」
名前も顔も知らないけれど、少し離れた国の貴族のお嬢様と婚約しているとフェルム公爵からも聞いている。
それでもこの美貌の天使を傍に侍らせたいと言う不埒者が後を断たない。
「だから、ね?」
「うーん、良いよ」
その方が守り易いかも。私が傍にいる事でアンセルの苦労が減るならお易い御用だ。
因みに私には婚約者がいない。弱小子爵家の息子ならこんなもんだろう?いや、他の人は知らないけれど、適当な時にお見合いでもして誰かお嫁さんに来てくれたら嬉しいと思う。今はアンセルを幸せにすることが一番大事だ。
「ありがとう、ユール。ユールはずっと傍にいてくれるし、嬉しいな」
天使が天使の微笑みを浮かべた! 眩しい!
「ダメダメ、その笑顔向けられたら誰でもアンセルの事好きになっちゃうよー!」
「えー!ホント? じゃあユールに向けておくね!」
「うわー! アンセルー大好きー愛してるー」
「ふふふ!」
私達は凄く近い距離で冗談を言いながら笑い合う。うん、これなら恋人同士に見えるかもしれないね。
この世界の恋愛観は「俺」がいた世界とほぼ一緒だ。同性同士の恋愛は「ある」が「推奨」はされていない。特に高位貴族は跡継ぎを残す義務もあるから、大っぴらにはしない。
そこの微妙なラインを意識しつつ、そんな感じを演出して行くんだ。
「……腰巾着」
そう、ユールはアンセルのフェルム家の威を借る狐と認識されている。そんな事もないし、そんなつもりも無いんだけれど、別に何を言われたって構わない。
「俺」はアンセルを守るって決めたんだから。それにアンセルの涙は18歳から本格的に始まるんだから……これからが本番だ。その為に出来る事はしたつもりだ。
「今度は幸せにしてやるからね」
「わあ、結婚の誓いみたいだねぇユール。でも私はそこまで頼りない男じゃないよ? 幸せは2人で掴み取るものだよ」
「まあ、そうかもしれないけれど」
繊細な温室の花のようだったゲームのアンセル。無理矢理王太子に手折られることもあった。
「嫌だ! 嫌だ、離して、離してぇ!!」
「本当はこうして貰いたかったんだろう? いやらしいなぁ、アンセル!」
「いや、いやっ!や、やぁーーーー!」
アンセルの初めての男は王太子オレルアンでヤツの私室で襲われた。
「しっかり押さえつけろ!」
「はっ!」
「離して、離してぇ!!」
王太子の腰巾着共に両手を押さえつけられ、無理矢理ベッドに組み敷かれ乱暴に突っ込まれる。
「痛い、痛いぃーーー!」
「ははっ! アンセルはココも繊細だったか!」
容赦なく嬲られ、痛みだけを刻まれる行為。血と精液塗れたアンセルを連れて帰るのがユールの役どころだったな。
アンセルはこの王太子にグレッグ一家を追い出して貰った恩があったので、ほぼ言いなりになっていた。焦点の定まらない目のアンセルは、好きな人には大いに刺さったらしい。
「ユール?」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」
「大丈夫? 次の剣術の授業でぼーっとしてたら私が勝っちゃうね! 勝ったら何か貰おうかなー?」
「えっ?」
このアンセルは温室の可憐な花じゃない。ユールがアンセルを守る為に体を鍛え始めたら
「私も負けない!」
と、一緒に修練を始めてしまったのだ。同じくらい修練し、フェルム公爵が呼んでくれた師匠に2人で弟子入りし、体も鍛えたので、アンセルはかなりの剣士になっている。
「守る必要なさそうな……いや、何が起こるか分からないから!」
鍛えても鍛えてもアンセルは天使のままだったし、ユールも鍛えてもムキムキにはならない体質だったらしくて、絵面的に暑苦しくならなかった。
「良かった……ムキムキ天使はちょっと嫌だもんなぁ」
「ん? ユールはムキムキまっちょが好きなの? 私は鍛えてもそうならないみたいなんだよねー……」
贅肉はないけれど、スルッとしたお腹を撫でながらアンセルは残念そうに呟くけど
「いや? ムキムキにならなくて良かったなって思ってる。アンセルは今のままの方が良いと思うよ」
「そ、そう? ユールが今で良いなら私も嬉しいな!」
あっ! また眩しい天使の微笑みだ! こんな眩しい微笑みの持ち主がムキムキマッチョじゃない方が全世界的に平和だと思うんだ!
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