【完結】不憫令息を幸せにする。責任を取ったつもりがこういうのはちょっと違うと思います!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
10 / 26

10 腹黒王太子はノーサンキュー

しおりを挟む
「なあアンセル。私の夜会に来ないか?」

「折角ですが遠慮させて頂きます、オレルアン殿下」

 何度断っても王太子殿下はアンセルを誘うのをやめない。

「折角東方から珍しい薬を取り寄せたのに」

 オレルアン殿下は一番最初からこうやってアンセルに声をかける。アンセルの父がベッドから起き上がれず、苦労しているのを見越しての言葉。
 何度も何度も言われ続け、とうとうある日了承した。

「ユールも一緒なら」

「良いだろう」

 そして案の定、この腹黒に一服盛られた。

「うっ!」

「ユール!」

 殿下自ら手渡してきた飲み物をユールは素早くすり替えた。そしてその場に蹲る事になる。
 飲んだアンセルが意識を失って

「しまった、アルコールの入っていた物を渡してしまった。どこかで休ませてあげよう」

 そうして、腰巾着達が待ち構えている部屋へ連れ込んで、嫌がり泣き叫ぶアンセルを良いように汚す……予定が全て崩れる。

「アルコール、に、似てますが、違う。ああ、解毒剤飲んできてよか……ごめ、でも立ってられな……」

 アンセルが王太子オレルアンに倒れ込むのではなく、ユールがアンセルに倒れ込む。

「ユール!すぐに帰ろう」

 自分と同じくらいの背格好のユールをさっと横抱きに抱え上げる。非力で可憐と思われるアンセルの力強さにオレルアンはすこし戸惑った。この大輪の花は何か違うと。

「申し訳ありませんが、連れが体調を崩したようです。本日は失礼させていただきます」

 きっぱりと言い切り、大事そうにユールを抱えて踵を返すアンセルを何も言えずに見送るしか出来なかったオレルアン。
 そこからアンセルはオレルアンの誘いをことごとく跳ね除けている。

「全く、殿下の用意するはとんでもないものばっかりだよ」

「本当だよね」

 オレルアンがいなくなりアンセルとユールは溜息を吐く。

「あの時は体が熱くて大変だったなぁ」

「無茶しないでよ?ユール。それにしても先に解毒剤を飲んでおくなんてどれだけ殿下の事を疑ってたの?」

「え?最初から全部だけど」



 オレルアンは良き王太子の顔の裏でアンセルを自分専用の娼婦のようにゲームの中で扱う。そんな王太子にデザインしたのは「俺」だけど。

「あの時、私が君をあの闇から助け出さねば今頃どうなっていたか分かっているよね?」

「うう……」

 そうやってゲームのアンセルの自由を奪ってベッドに押し倒すんだ。そしてアンセルがちっとも善がらず泣いたままなのにいらついて腰巾着達を呼びつけて3人がかりで犯して行く。
 3人分の白濁液に塗れて水色の焦点を失った目のアンセル……。

『ドロドロ多めでお願いします』

 って発注した。差分は泣き顔とか絶望顔とか……大変好評だった。なんて「俺」は思い出していたけれど、あのスチルのような状況になんて絶対しないんだからな!



「大丈夫、アンセルも最初に飲めばいいんだよ、物凄く不味いけど!」

「えーっ……まあそういうものかあ、何か少しでも美味しい解毒剤あるといいんだけど」

 フフ、そう言うのを開発して貰わなきゃな。開発……薬を開発……あ!思い出した、どうせならアイツをこちら側に引き込んでおこう。そうすれば楽になるはず。


 
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!

こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?

会計のチャラ男は演技です!

りんか
BL
ここは山奥に作られた金持ちの学園 雨ノ宮学園。いわゆる王道学園だ。その学園にいわゆるチャラ男会計がいた。しかし、なんとそのチャラ男はまさかの演技!? アンチマリモな転校生の登場で生徒会メンバーから嫌われて1人になってしまう主人公でも、生徒会メンバーのために必死で頑張った結果…… そして主人公には暗い過去が・・・ チャラ男非王道な学園物語

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...