【完結】やり直した令嬢は幸せを摑まえる。あばずれ?言いたければ言わせておけばよいのです。

鏑木 うりこ

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1 令嬢、裏切られ、突き落とされる

 私は素晴らしい令嬢だった……はずだった。

「あははっいい気味だわ!」
「ダリア……どうして、こんな」

 私は今、崖の先端にいて後ろは深い谷。落ちたらひとたまりもない。そして目の前でニヤニヤ笑うのは親友のダリア。

「早くしろよ、こんなところ誰かに見られたら厄介だ」
「ナルク……っいったいこれはどうしたの? ダリアを止めて、助けてナルク!」
「ダリア! 早く始末しろっ。俺は馬車に戻ってるからな」

 ダリアより向こう側に私の夫がいてこちらに背を向けた。どうして? 貴方は私の夫なのに私の隣にいてくれないの?どうしてダリアの傍にいるの? どうしてそんな恐ろしいことをいうの!?

「ナルク! 助けて」
「早くやれ! ダリア」
「ふふっ分かったわよ」

 ナルクは振り返らず遠ざかって行く。どうして? 何故なの? 私は努力したわ、家のことを何もせず、遊び回っていたあなたに代わって家を取り仕切ったし、あなたの作って来る借金も払い続けたのよ? 帰ってこないあなたを家で待ち続けたのよ? それなのにどうして私に背を向けるの?

「仕方がないじゃない? いつまで経っても跡継ぎができないんですもの」

 いやらしい笑顔を浮かべ勝ち誇ったようにダリアが嗤う。

「だからアンタは捨てられるのよ、アネモネ。みじめなものね、哀れな公爵夫人? まあアンタがいなくなったあと、私がぜぇ~んぶ貰ってあげるから安心して地獄へ落ちなさい! いい気味よッ」
「ダリア待って、私達は親友じゃなかったの? あなただから私は……」
「こんな状況でもそんなことを言えるなんて、アネモネ、アンタは相当馬鹿ねぇ! アハハハッ」

 ダリアにドンッと強く肩を押され、私は後ろへ数歩よろけ……そこにもう大地はなく、深い地獄へ続くような暗い裂け目の中に飲み込まれていく。ビュオオオオオッと鳴る風の音に紛れて勝ち誇ったダリアの声が聞こえてきた。

「さようなら! お馬鹿なアネモネ! 学生の頃から大っ嫌いだったけど、いっぱい利用させてくれてありがとうね!」

 醜悪な笑い顔のダリア……私は、私はどこで間違ったの? ダリアがナルクの子供を連れて来た時に容認したこと? ナルクの生活を改めるよう強く言わなかったこと? お父様が不可解な死を遂げられたこと? そもそもナルクと結婚したこと? 学園時代にダリアと友達になったこと?

いいえ、それよりもっと先……きっとナルクと婚約してしまったから、婚約者としてあり続けたからだ。

悔しい悔しい悔しい。我がウィンフィールド公爵家はナルクとダリアにこの先乗っ取られるんだ。私達の先祖が大事にしてきた土地も民もあの人達に食い荒らされる……悔しい……っ!

 ああ、神様。あの二人に相応の罰をお与えくださいませ……! 私は涙と共に祈り、そうして死んだ。18歳でナルクと結婚し、23歳の若さで崖から突き落とされて殺されてしまったのだ。




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