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2 アネモネ、17歳に戻る
「わ……私……」
暗く暗い淵に落ち、どこまでもどこまでも落ちて……そして目を覚ますとベッドに寝ていた。もしかして九死に一生を得たのかしら? それにしても私の大好きな香りがするふかふかのベッドだわ。しかも体もどこも痛くないなんて……あの高さから落ちてそれはあり得ない。
「お嬢様、お目覚めですか?そろそろお支度をしないと朝食に遅れてしまいますわ」
「……ルシー……? 」
「はい、ルシーでございますよ、アネモネお嬢様」
優しい声をかけられ、私はそちらを向いた……優しい知っているメイドが少し眉を下げて立っていた……ルシーだ。ルシーは私より少し年上のメイドで子供の頃から親身になって色々話を聞いてくれた子だった。ナルクがこのウィンフィールド公爵家に入ってしばらくしてから辞めさせられた……ナルクを閨に誘ったと疑いをかけられたのだ。
実際は素行の良くないナルクを注意して辞めさせられたのだ。私がそのことを抗議してもナルクはルシーが悪いとの一点張りで、ルシーとナルク……私はナルクの言い分を信じてルシーを辞めさせてしまった。簡単に考えてもルシーがそんなことする訳ないのに、あの当時の私はナルクを盲目的に信じていたんだ。
そのルシーがどうしてここに? それにお嬢様? 私はもう結婚して子供はできなかったけれど、お嬢様って呼ばれる年じゃないわ。
「ルシー……どうして? 私あの時あなたを」
「お嬢様? ああ、ティーカップの件ですよね。あれは私のせいじゃなくて新人の子が落としてしまって」
「そうじゃないわ!」
そこまで言ってルシーの顔を見て気が付く。若いわ……ルシーが私の知るルシーより少し若い……私が学生時代こんな感じだった。
「お嬢様、早く朝食を召し上がらないと、学園に遅れてしまいますわ」
「が、学園……ルシー……私は今何歳なのかしら」
「17歳でございますね。次の誕生日で18歳になられますよ」
「ほ、本当に……?」
「え、ええ……」
私、過去に戻ってきたのだわ!! どうしても今すぐ会いたい人がいる。なれた部屋で身なりを整え、急いで食堂へ向かうと、懐かしい、お父様がいらっしゃった。
「アネモネ、遅いぞ」
「お、おとうさま……」
ああ、お父様が生きている! 喜びのあまり抱き着きたい衝動に駆られたけれど、ぐっと我慢して食事を始めた。他愛ない会話、いつも通りでつまらない政治の話、領地の話と思っていたけれど遊び惚けていたナルクの代わりにすべてを取り仕切ったことを覚えている今は……とても素晴らしい考えだ。
お父様はこう見えて中々のやり手だわ。あと1.2年もすれば伸びる商会に資金を提供したり、もしもに備えて食料の備蓄をしたり、領内に流れる川に気を配ったりして領民を守っていく素晴らしい政策をいくつも打ち出していく。
「……アネモネ、どうした? いつもこんなつまらない話とため息をついていたのに」
「いえ、お父様。素晴らしいです……お父様のお話は本当に素晴らしいって思っていたんです」
「む? う、うむまあ……アネモネ本当にどうしたのだ?」
この流れなら言えるわ、絶対に阻止したいあのことを。私は早急に処分しなければならない話をお父様に訴えた。
「お父様。私、ナルク様との婚約を解消したいです」
流石に突拍子もなさ過ぎたのかお父様の眉がピンと跳ね上がる。近くに控えていた執事達も音なくザワリと揺れた。
「何を突然言い出すのかと思えば。ナルク・デニスとの婚約は我が家の地位を固め、更なる飛躍に必要な物。お前もそれに納得し、5つの頃からの付き合いではないか。それをもうすぐ結婚もしようというこの時に言い出すとは」
確かにそうなのだ。お父様のいうことに一つも間違いはない……それでもナルク・デニス侯爵令息という男の本性を知っている私はこの婚約を今すぐに捨て去らなければならないのだ。
「我が家を食い荒らす悪虫を招き入れてはいけないのです。そうではくてもナルク様は頭が悪い……デニス侯爵家という家柄をもってしてもあの方の金遣いの荒さ、女性関係、すべて許せるものではないのです。お父様、まずは性急にナルク様と私の親友気取りのダリア・マリクス子爵令嬢の関係をお調べ下さい。私はもうあの二人に良いように使われるのはこりごりなのです」
「……どういうことか? 」
私は過去の記憶の中の二人についてお父様に洗いざらい話した。
暗く暗い淵に落ち、どこまでもどこまでも落ちて……そして目を覚ますとベッドに寝ていた。もしかして九死に一生を得たのかしら? それにしても私の大好きな香りがするふかふかのベッドだわ。しかも体もどこも痛くないなんて……あの高さから落ちてそれはあり得ない。
「お嬢様、お目覚めですか?そろそろお支度をしないと朝食に遅れてしまいますわ」
「……ルシー……? 」
「はい、ルシーでございますよ、アネモネお嬢様」
優しい声をかけられ、私はそちらを向いた……優しい知っているメイドが少し眉を下げて立っていた……ルシーだ。ルシーは私より少し年上のメイドで子供の頃から親身になって色々話を聞いてくれた子だった。ナルクがこのウィンフィールド公爵家に入ってしばらくしてから辞めさせられた……ナルクを閨に誘ったと疑いをかけられたのだ。
実際は素行の良くないナルクを注意して辞めさせられたのだ。私がそのことを抗議してもナルクはルシーが悪いとの一点張りで、ルシーとナルク……私はナルクの言い分を信じてルシーを辞めさせてしまった。簡単に考えてもルシーがそんなことする訳ないのに、あの当時の私はナルクを盲目的に信じていたんだ。
そのルシーがどうしてここに? それにお嬢様? 私はもう結婚して子供はできなかったけれど、お嬢様って呼ばれる年じゃないわ。
「ルシー……どうして? 私あの時あなたを」
「お嬢様? ああ、ティーカップの件ですよね。あれは私のせいじゃなくて新人の子が落としてしまって」
「そうじゃないわ!」
そこまで言ってルシーの顔を見て気が付く。若いわ……ルシーが私の知るルシーより少し若い……私が学生時代こんな感じだった。
「お嬢様、早く朝食を召し上がらないと、学園に遅れてしまいますわ」
「が、学園……ルシー……私は今何歳なのかしら」
「17歳でございますね。次の誕生日で18歳になられますよ」
「ほ、本当に……?」
「え、ええ……」
私、過去に戻ってきたのだわ!! どうしても今すぐ会いたい人がいる。なれた部屋で身なりを整え、急いで食堂へ向かうと、懐かしい、お父様がいらっしゃった。
「アネモネ、遅いぞ」
「お、おとうさま……」
ああ、お父様が生きている! 喜びのあまり抱き着きたい衝動に駆られたけれど、ぐっと我慢して食事を始めた。他愛ない会話、いつも通りでつまらない政治の話、領地の話と思っていたけれど遊び惚けていたナルクの代わりにすべてを取り仕切ったことを覚えている今は……とても素晴らしい考えだ。
お父様はこう見えて中々のやり手だわ。あと1.2年もすれば伸びる商会に資金を提供したり、もしもに備えて食料の備蓄をしたり、領内に流れる川に気を配ったりして領民を守っていく素晴らしい政策をいくつも打ち出していく。
「……アネモネ、どうした? いつもこんなつまらない話とため息をついていたのに」
「いえ、お父様。素晴らしいです……お父様のお話は本当に素晴らしいって思っていたんです」
「む? う、うむまあ……アネモネ本当にどうしたのだ?」
この流れなら言えるわ、絶対に阻止したいあのことを。私は早急に処分しなければならない話をお父様に訴えた。
「お父様。私、ナルク様との婚約を解消したいです」
流石に突拍子もなさ過ぎたのかお父様の眉がピンと跳ね上がる。近くに控えていた執事達も音なくザワリと揺れた。
「何を突然言い出すのかと思えば。ナルク・デニスとの婚約は我が家の地位を固め、更なる飛躍に必要な物。お前もそれに納得し、5つの頃からの付き合いではないか。それをもうすぐ結婚もしようというこの時に言い出すとは」
確かにそうなのだ。お父様のいうことに一つも間違いはない……それでもナルク・デニス侯爵令息という男の本性を知っている私はこの婚約を今すぐに捨て去らなければならないのだ。
「我が家を食い荒らす悪虫を招き入れてはいけないのです。そうではくてもナルク様は頭が悪い……デニス侯爵家という家柄をもってしてもあの方の金遣いの荒さ、女性関係、すべて許せるものではないのです。お父様、まずは性急にナルク様と私の親友気取りのダリア・マリクス子爵令嬢の関係をお調べ下さい。私はもうあの二人に良いように使われるのはこりごりなのです」
「……どういうことか? 」
私は過去の記憶の中の二人についてお父様に洗いざらい話した。
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