【完結】悪役二人にヒロイン一人でどこへゆく?私の推しは貴方じゃないの!

鏑木 うりこ

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5 なんでも楽しい!

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「完璧令嬢に、わたしはなる!」

 海賊王に負けないほどの強い決意で、私は立ち上がります。

「お兄様は第二王子ですけど、今のキャロラインではちょっと……いえ、かなり無理ですわ、分かりますね」

「大丈夫ですわ、ミシェール様。わたくしは推しの為なら命を張れる女ですから!」

 流石キサラ、いえキャロラインですわ。バンバン行きますわよ。ええ、バンバン来てください!


 それまでの遅れを取り戻すべく恐ろしい速度で、全てを学んだ。生オスカー様に会えるなら何も怖くはない~♪!

「睡眠は必ずとります。徹夜など絶対にしてはいけません!」

「はいっ!」

「口にするものすべて、貴女の体を作るものです。手抜きはいけません」

「はいっ!」

「ダンスをしながら暗記をしましょう!」

「はいっ!」



 楽しい!とても楽しい!勉強もダンスもマナーも。本気でやればなんでも楽しい。全てがオスカー様に繋がっていると考えると何時間でもコルセットを嵌めたままでいられる!

「キャロライン嬢の頑張りは鬼気迫るものを感じます。何が彼女をあそこまで駆り立てるのでしょう?」

「ほほ……何なのでしょうね。私も友人として生まれ変わった彼女の事を誇らしく思いますわ」

 ミシェール王女はキャロラインにつけた教育係からそんな報告を受けていた。流石キサラですわ。やる時はやりすぎる能あるオタクは色々隠す。バイト代は全部推しに捧げる女!わたくしの親友ですわ!

 美しい所作で少しだけお茶を飲み、ミシェールは微笑む。ミシェールも完璧で美しい王女として名前が通っている。

『ああ、何とかしてレイジット様を隣の国から狩って来なくては……あーん!策謀策謀っと♪』

 輝くような笑顔の裏でとても素敵な事を考えて、ゆるむ頬をきゅっと引き締めるのであった。


 たった三か月でキャロラインは相当なレベルに達した。元々背も高く、スタイルも良いキャロラインは肌がターンオーバーし、ケアに手抜きもしなかった為、内側から溢れ出る美しさが身についた。

「おはようございます、伯爵様」

 鍛えた体幹で動いても姿勢がブレず、歩みも美しい。不自然ではない笑みを常に浮かべ、少しきつめの瞳をカバーするようにしている。元々悪役令嬢なので、やっぱり顔の造りはきつめなのだ。

「ああ、おはよう。キャロライン。今日もきれいだね」

「ふふ、ありがとうございます。伯爵様。今日は何かお手伝いしましょうか?」

「ああ、じゃあ書類の清書を頼もうかな?」

「分かりましたわ」

 和やかに会話をしながら朝食をゆっくりと食べる。全てバランス良く。パンは白い物ではなく、全粒粉の茶色いものを、少しのジャムをつけて。お茶は体が目覚めるようにハーブを入れて。野菜スープに果物も、よく噛んで食べる。新鮮な卵の目玉焼きも好きだし、ヨーグルトも存在しているので、いただく。
 貴族の食事にしてはあまり豪華ではないが、朝からこってりお肉はちょっと無理だ。最初はラヴァール伯爵も肉ばかり食べていたが、最近キャロラインに付き合って同じ朝食になっている。

「この方が調子が良いのが不思議ですな」

「ふふ、でも我慢せずに好きな物を食べるのが一番ですわ。食べる楽しみは人生を豊かにしますものね」

 最後に小さなプリンを一つ。小説に書くより完璧な朝食をキャロラインは毎日摂っている。


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