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マリナデット・ウィフラート
18 ざまぁ5 リリアナ
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「離して!離して!どうしてわたしがこんな目に!」
衛兵に引きずられるように連れて行かれ、馬車に押し込まれた。
「気を付けろ、毒婦だぞ」
「学生で男を取っ替え引っ替え?汚いあばずれだな」
かっと頬が羞恥で赤くなる。そう、それが世間の反応……。外側から鍵をかけられた馬車は中の人を逃がさないようにするため。
え?私ってそんな犯人扱いなの??何も悪い事、してないじゃない!
「助けて……ダレン様、ニコラ様、ベルナルド様、リュジール様……」
祈ってみても誰も現れなかった。
そのまま汚い牢に入れられて、鍵がかかると、ゾッとした。ここは令嬢がいて良い場所じゃない。
「ちょっと!こんな所に!せめてどこか部屋にしなさいよ!」
衛兵に声をかけると、汚いのを見る目だった。衛兵は2人で、どちらも私のほうを向かず歩き去る。
「あの歳で何人もの男とねぇ」
「街角の娼婦より酷いな」
「学生の頃は何かと飢えてるから何でも良かったんだろう」
「違いない。穴が開いてりゃ木のウロでも気になる年頃だもんな」
なんでも良かった?!木のウロ?!違う、私たちは愛し合っていた!
「ダレンさま……」
最初はただ、驚いた。こんな粗暴な人が王子だなんて。貴族になりたての私から見ても、ダレン様のマナーは悪かった。
レッスンの先生から1番やってはならない事を必ずやっている。えっ?!良いの……?
でも彼の身分が全ての言葉を封じさせた。
「俺を誰だと思っている!」
凄い!王子って凄い!でも夢に見た王子様像とはかけ離れていた。きれいな所作で女性をエスコートするのが王子様と思っていたら、下町のちょっと金がある店屋のボンボンと大して変わらない。
着ているものこそ、質の良い学園の制服だが、やっている事は私でも呆れそうだ。
そのダレン様が見つめる先、舌打ちをしながら見る先には本物の王子様がいた。王子様にしては美しすぎるから、お姫様だ。
銀色の長い髪をさらりとなびかせ、きれいな澄んだ紫色の瞳。誰にでもにこやかに微笑みかける。
見つめていたら、目が合った。私にもにこりと笑う。自分の顔が赤くなったのが分かった。
「マリナデット・ウィフラート……っ!」
ダレン様が憎々しげに呟く。あれ?貴方の婚約者のお名前では……?
「いつもいつも、俺に見せつけるように歩き回りやがって……くそっ!何で俺より背が高いんだ!」
ああ、王子様と勘違いしたのは背の高さか。隣にいたケイトニー・ランズ公爵令嬢と並んで歩いていたのが絵になり過ぎたから、背の高いマリナデット様を王子様だと思ったのだ。
見せつけてはいないと思ったが、そっとダレン様の腕にしな垂れかかった。
「ダレン様は素敵です」
「リリアナは分かってくれるのだな!」
この王子を落とすことは簡単そうだ。リリアナは
「はい……」
とほくそ笑みながら、しおらしく返事をした。
実際、ダレン王子は簡単に味方になった。
「リリアナ、最高だ」
「ダレン様だけです……ダレン様だから……」
もちろん大嘘だ。貴族の子息と言うものは「貴方だけ」にどうしてこうも弱いのか。そして
「ダレン様には逆らえません……本当は貴方を……」
簡単だった。誰も疑わない!裏切られた事がない人間の反応……いや、想像すら出来ないのかも!
普段から、ダレン様は私を隣に置いた。気分が良かった。誰しも私に注目する。こんな事は人生で初めて!
そして
「マリナデット!」
「……ダレン様、そちらのご令嬢との距離が近すぎるように感じます。学園は公共の場でありますから……」
「お前は俺の顔を見るたびに説教するのだな!!」
ダレン様は、マリナデット様に自分から声をかけてかけて、怒鳴りつける。マリナデット様は形の良い眉を寄せて、困っている。
ダレン様は何をしたいのだろう。マリナデット様を困らせたいのかな?
「マリナ、次の授業に遅れるわ、失礼します。ダレン様」
ケイトニー様にすっと連れ去られるマリナデット様を見て舌打ちをする。私は気づいた。
ダレン様はただ、マリナデット様を貶めたいだけなのだ。ならば……
「ダレン様ぁ……怖かった……」
「ど、どうした?リリアナ??」
ふん、わたしがいる事を忘れていた癖に。
「私とダレン様が仲良くしているの、あの方はお気に召さないのですね……あんな目で睨まれるなんて怖いですっ」
「リリアナっ!それは怖かったね、オレがいるから大丈夫だよ!マリナめ、リリアナを怖がらせるとは……許さん」
うまく行ったわ!これでダレン様はさらにマリナさまを疎んじるだろうし、わたしを可愛がるわ!
やった!これで私は第二王子の妻になるのよ!王族の仲間入りなんだわ!
私の計画は完璧よ!
衛兵に引きずられるように連れて行かれ、馬車に押し込まれた。
「気を付けろ、毒婦だぞ」
「学生で男を取っ替え引っ替え?汚いあばずれだな」
かっと頬が羞恥で赤くなる。そう、それが世間の反応……。外側から鍵をかけられた馬車は中の人を逃がさないようにするため。
え?私ってそんな犯人扱いなの??何も悪い事、してないじゃない!
「助けて……ダレン様、ニコラ様、ベルナルド様、リュジール様……」
祈ってみても誰も現れなかった。
そのまま汚い牢に入れられて、鍵がかかると、ゾッとした。ここは令嬢がいて良い場所じゃない。
「ちょっと!こんな所に!せめてどこか部屋にしなさいよ!」
衛兵に声をかけると、汚いのを見る目だった。衛兵は2人で、どちらも私のほうを向かず歩き去る。
「あの歳で何人もの男とねぇ」
「街角の娼婦より酷いな」
「学生の頃は何かと飢えてるから何でも良かったんだろう」
「違いない。穴が開いてりゃ木のウロでも気になる年頃だもんな」
なんでも良かった?!木のウロ?!違う、私たちは愛し合っていた!
「ダレンさま……」
最初はただ、驚いた。こんな粗暴な人が王子だなんて。貴族になりたての私から見ても、ダレン様のマナーは悪かった。
レッスンの先生から1番やってはならない事を必ずやっている。えっ?!良いの……?
でも彼の身分が全ての言葉を封じさせた。
「俺を誰だと思っている!」
凄い!王子って凄い!でも夢に見た王子様像とはかけ離れていた。きれいな所作で女性をエスコートするのが王子様と思っていたら、下町のちょっと金がある店屋のボンボンと大して変わらない。
着ているものこそ、質の良い学園の制服だが、やっている事は私でも呆れそうだ。
そのダレン様が見つめる先、舌打ちをしながら見る先には本物の王子様がいた。王子様にしては美しすぎるから、お姫様だ。
銀色の長い髪をさらりとなびかせ、きれいな澄んだ紫色の瞳。誰にでもにこやかに微笑みかける。
見つめていたら、目が合った。私にもにこりと笑う。自分の顔が赤くなったのが分かった。
「マリナデット・ウィフラート……っ!」
ダレン様が憎々しげに呟く。あれ?貴方の婚約者のお名前では……?
「いつもいつも、俺に見せつけるように歩き回りやがって……くそっ!何で俺より背が高いんだ!」
ああ、王子様と勘違いしたのは背の高さか。隣にいたケイトニー・ランズ公爵令嬢と並んで歩いていたのが絵になり過ぎたから、背の高いマリナデット様を王子様だと思ったのだ。
見せつけてはいないと思ったが、そっとダレン様の腕にしな垂れかかった。
「ダレン様は素敵です」
「リリアナは分かってくれるのだな!」
この王子を落とすことは簡単そうだ。リリアナは
「はい……」
とほくそ笑みながら、しおらしく返事をした。
実際、ダレン王子は簡単に味方になった。
「リリアナ、最高だ」
「ダレン様だけです……ダレン様だから……」
もちろん大嘘だ。貴族の子息と言うものは「貴方だけ」にどうしてこうも弱いのか。そして
「ダレン様には逆らえません……本当は貴方を……」
簡単だった。誰も疑わない!裏切られた事がない人間の反応……いや、想像すら出来ないのかも!
普段から、ダレン様は私を隣に置いた。気分が良かった。誰しも私に注目する。こんな事は人生で初めて!
そして
「マリナデット!」
「……ダレン様、そちらのご令嬢との距離が近すぎるように感じます。学園は公共の場でありますから……」
「お前は俺の顔を見るたびに説教するのだな!!」
ダレン様は、マリナデット様に自分から声をかけてかけて、怒鳴りつける。マリナデット様は形の良い眉を寄せて、困っている。
ダレン様は何をしたいのだろう。マリナデット様を困らせたいのかな?
「マリナ、次の授業に遅れるわ、失礼します。ダレン様」
ケイトニー様にすっと連れ去られるマリナデット様を見て舌打ちをする。私は気づいた。
ダレン様はただ、マリナデット様を貶めたいだけなのだ。ならば……
「ダレン様ぁ……怖かった……」
「ど、どうした?リリアナ??」
ふん、わたしがいる事を忘れていた癖に。
「私とダレン様が仲良くしているの、あの方はお気に召さないのですね……あんな目で睨まれるなんて怖いですっ」
「リリアナっ!それは怖かったね、オレがいるから大丈夫だよ!マリナめ、リリアナを怖がらせるとは……許さん」
うまく行ったわ!これでダレン様はさらにマリナさまを疎んじるだろうし、わたしを可愛がるわ!
やった!これで私は第二王子の妻になるのよ!王族の仲間入りなんだわ!
私の計画は完璧よ!
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