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種の章

1 僕、世界に立つ

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「痛い!もうちょっと優しく降ろしてよ!」

 僕はお尻を撫でながら立ち上がった。今しがた僕は空から地上に落とされたんだ。

「へへ、休暇だ、休暇だ~!」

 僕はとことこのんびり道を歩き出した。

「おうおう!坊ちゃん!1人かい?!」

「うん、僕1人だよ。おじさん達は5人かい?」

「肝の座った小僧だな!」

「恐怖で頭おかしくなってんじゃないのかぁ?!」

「だが、高く売れそうなガキだぜ!」

 ふーん。でも僕、チート持ちなんだ。


「下級盗賊ねぇ。まぁないよりいいか」

 僕は道をとことこ歩く。村が見えてきたぞ。村の門の所にはお兄さんとおじさんの中間と言った人が2人たっていた。
 何もしていない僕に槍を突きつける。

「怪しいガキめ!うちの村に何のようだ!」

「ガキが1人でうろついてるだと?!怪しいガキだ!殺してしまってもかまねぇな!」

 えー!僕はまだ一言も喋ってない。しかも多分僕は今、7.8歳の人間の姿をしている筈なんだよね。
 で、何にもしてないし、一言も喋ってない僕に槍を突きつけるまでは、まあ……良いだろう。蹴飛ばせば倒れそうな小さな柵で囲まれた村?らしい所に近づいたんだから。
 余所者から守りたい何かがあるのかも知れないもんね。

 でもさ、殺しちゃうはなくない?

 僕は人間……同族の姿形だよ?それをさ、何も聞かないで殺すとか言っちゃう?

「どうして、僕。何もしてないよ」

「うるせぇ!やっちまえ!」 

 あーホントだった。この世界、人間が助長しすぎて「調子に乗ってる」通り越して「世界の秩序」を乱してる。

この世は人間の物と、我が物顔で同族のさえも蔑ろ。

「あー休暇のはずでしょー!」

 でも、槍でつかれたら僕だって死んでしまう。体は普通の人間と一緒なんだからね。しょうがない!

「強制テイム!」

 僕は短く呪文を唱える。

「うわ!」

 僕を威嚇するお兄さん達の足元に人が1人入るくらいの魔法陣がポッと出現し、光の蔦が伸びて絡め取られ

「うわーーー!」

 あっという間に吸い込まれた。そしてその場に2枚のカードが残る。

「ふぅん?村の門番レベル1か。下級盗賊より弱いなぁ」

 僕はカードを拾い上げる。カードの中ではさっきのお兄さん達が出してくれ!と叫んでいるようだが、何も聞こえない。
 そりゃ強制テイムだもんね。嫌だろうなー。でも、こっちも説得する暇も貰えなかったししょうがないよね。

「おっ邪魔しまーす」

 僕は愛想良く村みたいな小さな囲いの中に入ったけど、住民の態度は皆んな同じだった。

「世界が人間の争いのせいで昏くなってるってホントなんだなぁ」

 僕は増えたカードを繁々と眺める。

「村長でレベル3、あとは皆んなレベル1ね。用心棒がレベル2か」

 そう、僕はテイマーだ。ただしヒューマンテイマー。人間を捕まえて使役する方だけどね!

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