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種の章
15 崩れる
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バール侯爵家をほぼ乗っ取って地盤を固めた。バール侯爵はとてもいい貴族と認識されているし、人付き合いも悪くなく、派閥も安定の第一王子派みたいな感じ。侯爵の息子もそこそこの成績だし、長男は領地経営の基本も覚えてきた。次男はまだ婚約者がいないからできればどこぞの貴族と婚約してほしいけれど……まだ未定だ。
娘のルージュは清楚系美少女に大変身を完了し、婚約者のノルド公爵令息と良い関係を続けている。早めに結婚してもらいたいものだ。
「……フィー、いやな感じがする」
「へ?」
「だよね、最近誰かに見られている」
もちろん、ハル、アンバー、僕の順番のセリフなんだけど、感じが悪いんだ。
その日の夜、すぐに襲撃に遭った。
「まずい!これはまずい!皆、逃げて」
僕は夜の闇の中に逃げ出した。
「ははっ!やっぱり、下僕を庇いやがった!テイマーとしちゃ失格だろう?なあ?ディーオ」
「い、痛い!」
僕は片手で男に吊り上げられた。
「ホントだねぇ?テイムした人間なんて使い捨てにすれば良いのにさ!お人好しだねぇ?」
闇の中から、僕より少し大きいくらいの少年が現れた。
「僕の名前はディーオ。僕も君と同じ神の愛し子でテイマーだ。君を吊り上げてるのが、僕の下僕のレオニー。かなり荒っぽい奴だけど、なかなか強いんだ」
「ディーオ。これ、俺にくれ」
「それの返答次第だね。君の名前は?」
「……フィエル」
答えたくはないけれど、答えなければ何をされるか分からない。なんとなくだけど、分かる。レオニーは強い。アンバー所の騒ぎじゃない。ハルでも足元に及ばないくらい強いだろう。
ハルもだいぶ強かったと思うけれど、レオニーはそれ以上だ。
「そう、フィエルね。じゃあフィエル。僕の物になってよ。一緒に人間を減らそう」
僕は考える。多分そんなに時間はない。最適解を、ディーオという奴が気に入って、僕もそこそこに納得できる、そんな妥協点を!
ディーオと僕はほぼ似た力を持っていて、悔しいが全て能力はディーオの方が高い。万に一つも僕に正攻法であいつに勝てる方法はない。
ついでにいえば、テイムした人間の能力もディーオの方が強い。
なんとか、なんとか、この場を切り抜ける方法を。
「ぶっぶー!フィエル、遅い。僕、もう飽きちゃった」
最悪だ。
「レオニー、フィエルは君にあげる。ただし、殺さない事と、心の底から僕に忠誠を違って助けを求めたら、その時は連れて来て」
「りょーかい、ディーオ」
面倒くさいといった感じでレオニーは僕を吊り上げていない左手をひらひらさせた。
「死なない程度に楽しもうな?フィエル?」
ぞわりと寒気しか走らない。僕はこいつにおもちゃにされる。嫌だ。なんとか逃れる手はないか?!
僕は宙ぶらりんのまま、辺りの探るけれど、何か打開できるようなものは一つも見つからない。
何か!何かないのか?!
「フィー!」
?!馬鹿な!馬鹿だ阿呆だと思って来たけど本当に馬鹿だ!アンバーが僕を吊ったままのレオニーに斬りかかる。
「ふ、雑魚が!」
「やめろ!アンバー!」
馬鹿は止まれない。普通なら良い位置から斬りかかったけど、レオニーには止まってみえるようだったんだろう。
「ふん!」
左手を無造作に振っただけで、拳はアンバーの頬を砕き、血にめり込ませた。
「がはっ!」
剣が届くとか、そう言う次元じゃない。子猫をひっくり返す人間の大人。そう言う所だ。
崩れ落ちるアンバーの影からハルが飛び出すが……だめだ。
「作戦は悪くない。いかんせん、実力不足だな?」
読まれている。アンバーを叩きつけた返す拳の裏で、ハルも大地に埋め込まれる。
「ぐっ……フィー……」
僕を吊り上げている逆の手で、ハルを吊り上げた。ハルは暗殺者らしく細身だけれども、軽い訳じゃない。なのに易々とレオニーはハルの頭を掴んで持ち上げた。
「頭を潰すと、飛び散るんだ。汚ねぇからあんまり好きじゃないんだけどな?」
ああ、きっと出来るんだろうな。この人は。僕の目の前で、ハルとアンバーは殺されてしまう。ずっと一緒にいた2人に僕はテイマーとして以上の愛着を感じてしまっている。
ああ、しょうがない、しょうがない。
「殺さないで。カードにしまわせてください」
「俺に命令できるのはディーオだけだが?」
レオニーの目は冷たくて、そして嗜虐に溢れている。
「だから、お願いしています。アンバーとハルはそのままじゃ死んでしまう。カードに戻させてください」
「いいだろう」
僕はおもちゃだ。
娘のルージュは清楚系美少女に大変身を完了し、婚約者のノルド公爵令息と良い関係を続けている。早めに結婚してもらいたいものだ。
「……フィー、いやな感じがする」
「へ?」
「だよね、最近誰かに見られている」
もちろん、ハル、アンバー、僕の順番のセリフなんだけど、感じが悪いんだ。
その日の夜、すぐに襲撃に遭った。
「まずい!これはまずい!皆、逃げて」
僕は夜の闇の中に逃げ出した。
「ははっ!やっぱり、下僕を庇いやがった!テイマーとしちゃ失格だろう?なあ?ディーオ」
「い、痛い!」
僕は片手で男に吊り上げられた。
「ホントだねぇ?テイムした人間なんて使い捨てにすれば良いのにさ!お人好しだねぇ?」
闇の中から、僕より少し大きいくらいの少年が現れた。
「僕の名前はディーオ。僕も君と同じ神の愛し子でテイマーだ。君を吊り上げてるのが、僕の下僕のレオニー。かなり荒っぽい奴だけど、なかなか強いんだ」
「ディーオ。これ、俺にくれ」
「それの返答次第だね。君の名前は?」
「……フィエル」
答えたくはないけれど、答えなければ何をされるか分からない。なんとなくだけど、分かる。レオニーは強い。アンバー所の騒ぎじゃない。ハルでも足元に及ばないくらい強いだろう。
ハルもだいぶ強かったと思うけれど、レオニーはそれ以上だ。
「そう、フィエルね。じゃあフィエル。僕の物になってよ。一緒に人間を減らそう」
僕は考える。多分そんなに時間はない。最適解を、ディーオという奴が気に入って、僕もそこそこに納得できる、そんな妥協点を!
ディーオと僕はほぼ似た力を持っていて、悔しいが全て能力はディーオの方が高い。万に一つも僕に正攻法であいつに勝てる方法はない。
ついでにいえば、テイムした人間の能力もディーオの方が強い。
なんとか、なんとか、この場を切り抜ける方法を。
「ぶっぶー!フィエル、遅い。僕、もう飽きちゃった」
最悪だ。
「レオニー、フィエルは君にあげる。ただし、殺さない事と、心の底から僕に忠誠を違って助けを求めたら、その時は連れて来て」
「りょーかい、ディーオ」
面倒くさいといった感じでレオニーは僕を吊り上げていない左手をひらひらさせた。
「死なない程度に楽しもうな?フィエル?」
ぞわりと寒気しか走らない。僕はこいつにおもちゃにされる。嫌だ。なんとか逃れる手はないか?!
僕は宙ぶらりんのまま、辺りの探るけれど、何か打開できるようなものは一つも見つからない。
何か!何かないのか?!
「フィー!」
?!馬鹿な!馬鹿だ阿呆だと思って来たけど本当に馬鹿だ!アンバーが僕を吊ったままのレオニーに斬りかかる。
「ふ、雑魚が!」
「やめろ!アンバー!」
馬鹿は止まれない。普通なら良い位置から斬りかかったけど、レオニーには止まってみえるようだったんだろう。
「ふん!」
左手を無造作に振っただけで、拳はアンバーの頬を砕き、血にめり込ませた。
「がはっ!」
剣が届くとか、そう言う次元じゃない。子猫をひっくり返す人間の大人。そう言う所だ。
崩れ落ちるアンバーの影からハルが飛び出すが……だめだ。
「作戦は悪くない。いかんせん、実力不足だな?」
読まれている。アンバーを叩きつけた返す拳の裏で、ハルも大地に埋め込まれる。
「ぐっ……フィー……」
僕を吊り上げている逆の手で、ハルを吊り上げた。ハルは暗殺者らしく細身だけれども、軽い訳じゃない。なのに易々とレオニーはハルの頭を掴んで持ち上げた。
「頭を潰すと、飛び散るんだ。汚ねぇからあんまり好きじゃないんだけどな?」
ああ、きっと出来るんだろうな。この人は。僕の目の前で、ハルとアンバーは殺されてしまう。ずっと一緒にいた2人に僕はテイマーとして以上の愛着を感じてしまっている。
ああ、しょうがない、しょうがない。
「殺さないで。カードにしまわせてください」
「俺に命令できるのはディーオだけだが?」
レオニーの目は冷たくて、そして嗜虐に溢れている。
「だから、お願いしています。アンバーとハルはそのままじゃ死んでしまう。カードに戻させてください」
「いいだろう」
僕はおもちゃだ。
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