【章完結中】神の愛し子な俺、テイマー始めました!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
15 / 29
種の章

15 崩れる

しおりを挟む
 バール侯爵家をほぼ乗っ取って地盤を固めた。バール侯爵はとてもいい貴族と認識されているし、人付き合いも悪くなく、派閥も安定の第一王子派みたいな感じ。侯爵の息子もそこそこの成績だし、長男は領地経営の基本も覚えてきた。次男はまだ婚約者がいないからできればどこぞの貴族と婚約してほしいけれど……まだ未定だ。
 娘のルージュは清楚系美少女に大変身を完了し、婚約者のノルド公爵令息と良い関係を続けている。早めに結婚してもらいたいものだ。

 
「……フィー、いやな感じがする」

「へ?」

「だよね、最近誰かに見られている」

 もちろん、ハル、アンバー、僕の順番のセリフなんだけど、感じが悪いんだ。

 その日の夜、すぐに襲撃に遭った。

「まずい!これはまずい!皆、逃げて」

 僕は夜の闇の中に逃げ出した。

「ははっ!やっぱり、下僕を庇いやがった!テイマーとしちゃ失格だろう?なあ?ディーオ」

「い、痛い!」

 僕は片手で男に吊り上げられた。

「ホントだねぇ?テイムした人間なんて使い捨てにすれば良いのにさ!お人好しだねぇ?」

 闇の中から、僕より少し大きいくらいの少年が現れた。

「僕の名前はディーオ。僕も君と同じ神の愛し子でテイマーだ。君を吊り上げてるのが、僕の下僕のレオニー。かなり荒っぽい奴だけど、なかなか強いんだ」

「ディーオ。、俺にくれ」

の返答次第だね。君の名前は?」

「……フィエル」

 答えたくはないけれど、答えなければ何をされるか分からない。なんとなくだけど、分かる。レオニーは強い。アンバー所の騒ぎじゃない。ハルでも足元に及ばないくらい強いだろう。
 ハルもだいぶ強かったと思うけれど、レオニーはそれ以上だ。

「そう、フィエルね。じゃあフィエル。僕の物になってよ。一緒に人間を減らそう」

 僕は考える。多分そんなに時間はない。最適解を、ディーオという奴が気に入って、僕もそこそこに納得できる、そんな妥協点を!
 ディーオと僕はほぼ似た力を持っていて、悔しいが全て能力はディーオの方が高い。万に一つも僕に正攻法であいつに勝てる方法はない。
 ついでにいえば、テイムした人間の能力もディーオの方が強い。

 なんとか、なんとか、この場を切り抜ける方法を。

「ぶっぶー!フィエル、遅い。僕、もう飽きちゃった」

 最悪だ。

「レオニー、フィエルは君にあげる。ただし、殺さない事と、心の底から僕に忠誠を違って助けを求めたら、その時は連れて来て」

「りょーかい、ディーオ」

 面倒くさいといった感じでレオニーは僕を吊り上げていない左手をひらひらさせた。

「死なない程度に楽しもうな?フィエル?」

 ぞわりと寒気しか走らない。僕はこいつにおもちゃにされる。嫌だ。なんとか逃れる手はないか?!
 僕は宙ぶらりんのまま、辺りの探るけれど、何か打開できるようなものは一つも見つからない。

 何か!何かないのか?!

「フィー!」

 ?!馬鹿な!馬鹿だ阿呆だと思って来たけど本当に馬鹿だ!アンバーが僕を吊ったままのレオニーに斬りかかる。

「ふ、雑魚が!」

「やめろ!アンバー!」

 馬鹿は止まれない。普通なら良い位置から斬りかかったけど、レオニーには止まってみえるようだったんだろう。

「ふん!」

 左手を無造作に振っただけで、拳はアンバーの頬を砕き、血にめり込ませた。

「がはっ!」

 剣が届くとか、そう言う次元じゃない。子猫をひっくり返す人間の大人。そう言う所だ。
 崩れ落ちるアンバーの影からハルが飛び出すが……だめだ。

「作戦は悪くない。いかんせん、実力不足だな?」

 読まれている。アンバーを叩きつけた返す拳の裏で、ハルも大地に埋め込まれる。

「ぐっ……フィー……」

 僕を吊り上げている逆の手で、ハルを吊り上げた。ハルは暗殺者らしく細身だけれども、軽い訳じゃない。なのに易々とレオニーはハルの頭を掴んで持ち上げた。

「頭を潰すと、飛び散るんだ。汚ねぇからあんまり好きじゃないんだけどな?」

 ああ、きっと出来るんだろうな。この人は。僕の目の前で、ハルとアンバーは殺されてしまう。ずっと一緒にいた2人に僕はテイマーとして以上の愛着を感じてしまっている。
 ああ、しょうがない、しょうがない。

「殺さないで。カードにしまわせてください」

「俺に命令できるのはディーオだけだが?」

 レオニーの目は冷たくて、そして嗜虐に溢れている。

「だから、お願いしています。アンバーとハルはそのままじゃ死んでしまう。カードに戻させてください」

「いいだろう」

 僕はおもちゃだ。



 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

処理中です...