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28 辛いものですね

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 やはり、リース様はわたくしのことは王太子になる為だけの道具とお考えだったのですね。
 気づいてはおりました。致し方ない事と、割り切ったつもりでもありました。しかしこのようにはっきりと口にされると、わたくしも平然としてはいられませんでした。
 目眩がして、足の力が抜けていきます。

「アルカ!」

「レイさま……」

 わたくしの体を支えて下さったのは、ナイトレイ殿下でした。

「リース殿。貴方はご自分が何を仰ったか顧みるべきです!」

 わたくしを支えながら強い口調で抗議をして下さいます。

「何と言う事を……っ!失礼します!」

 怒りに震えたお兄様がリース様に背を向け、わたくしとナイトレイ殿下の側までやって来ました。

「いくら婚約者とは言え、少し外聞が悪いですからね。アルカンジェル、私が医務室まで運ぼう。顔が真っ青だ……ナイトレイ殿下一緒にご足労願えますか?」

「勿論ですとも」

 昔とは全く違うしっかりと鍛え上げられたお兄様に抱え上げられ、

「良く耐えたね」

 と、優しくナイトレイ殿下に微笑まれ、わたくしは張り詰めていた糸がぷっつり切れるように気を失ってしまったのでした。


「ま、待て!ノルド。私はまだアルカンジェルに話がある……っ!」

「良い加減になさいませ!!リース殿下っ!」

 わたくし達がいなくなった中庭で、リース様を止めたのはミカエラお姉様とラファエラお姉様でした。

「貴方は!貴方と言う方は!アルカンジェルをなんだとお思いなのですか!確かに貴方とアルカンジェルは家の思惑の絡んだ婚約者であったかも知れません!それでも婚約者として最低限の心を砕く事すらしなかったのに!その思惑すら全て投げ捨てたのに、まだ王太子になる為だけに殿下に仕えよと申すのですか!」

「そ、そのような事は……わ、私にはアルカンジェルが必要なんだ……」

 言い淀むリース様にラファエラお姉様が

「王太子になる為だけに必要なのでしょう?先程仰られましたものね!?アルカンジェルにもう貴方は必要ないのです!二度と近寄らないで!」

「し、しかし……っ!」

 まだ食い下がるリース様でしたが、やっと周りの空気に気がついたようでした。

「なんと……これが上に立つであろう王族のする事か」

「確か婚約破棄だと一方的に叩きつけたのは殿下の方でしたよね。それをまた必要だからと……」

「マリリー子爵令嬢のお噂はかねがねですが……だからと言ってああまでしたアルカンジェル様に」

「人の心を持たぬのか……?恐ろしい」

 右を見ても左を見てもリース様に向けられる視線に、一つも好意的な物はありません。

「くっ……きょ、今日の所は……」

「二度とアルカンジェルの前に現れないで下さいませ!」

 ミカエラお姉様とラファエラお姉様により這々の体で逃げ出した、らしいです。

 
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