【完結】油揚げの動画配信サービス始めます。妖怪はwebの海を行く。

鏑木 うりこ

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5 汚い葉っぱ

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「おっとっと……あっ!」
  
 カレー皿をトコトコ歩いて途中で横倒しになり、私が箸で助け起こすほんの短い動画が拡散されている。
 
なにこれおもしろー

このいなり寿司生きてる笑笑

 本当に一人で動いて喋るのだが、今の時代、全て技術で作ってあると認識され、誰も何も言わない。

「そんなでも、心のどこかで不思議だなーって思ってる。その不思議だなーが私達神様の力になるんです」

 油揚げは皿に出した寿司酢をぺろりと舐めた。酸っぱかったようだ。

「でも一番はカナさんの力です。不思議だなーって思いながら、私のお世話をしてくれるでしょう?」

「だって!ほっとけないよ。すぐ倒れるし!」

 現に今も油揚げはバランスを崩して、あわあわとカレー皿の上に転がった。しょうがないなあ。箸でつまんで起こしてやる。
 ありがとうございます。と油揚げは頭を下げる。こういうところも放っておけないところなんだよね。


 しばらくカレー皿で歩き回る油揚げを見ていた。油揚げは黒ゴマの目を細めて、窓の方を見た。

「カナさん」

「どうしたの?油揚げ」

「あの……ご面倒かとは思うのですが、私以外も……この家に入れてもらえないでしょうか?」

 私はとにかく話を聞いてみることにした。


 カサカサ、カサカサ。油揚げの言う通り、茶色くて枯れて汚い木の葉が一枚窓の枠に引っかかって揺れている。

「その汚い葉っぱです」

「油揚げェ……知り合いなんでしょ?知り合いを汚いというのは可哀想でしょ」

 でも、的確でしょ?と油揚げは首を多分傾げ、私は窓を開けてやる。汚い葉っぱが風と共に室内にひらりと入り込んだ。

「いなりぃ……」「ぽんた!名前は呼ぶな馬鹿たぬき!」

 やっぱり油揚げはキツネなんだね。そしてこの汚いはっぱはタヌキ。カサリ、少ししか動けないみたい。

「ぽんた?可愛い名前だね」

 油揚げはむっとしたようだが、カサカサの葉っぱはポン!と音を立てて、変化した。

「わーわーありがとうありがとう!君が僕の存在を認めてくれたから葉っぱから少し上がれたよ。このままじゃ僕もカサカサのバラバラになって消えちゃうところだったんだ」

「う、うん。でもそんなのでいいの?」

「え?」

 多分ぽんたというたぬき的な何かしらの存在はちょっと色の濃いいなり寿司の姿になっていた。

「えええええええ!誇り高い化け狸一族の僕が狐と同じになるなんてー!」

「ぽんた!お前喋りすぎだ!」

 普通のいなり寿司と濃い味っぽいいなり寿司がけんかを始めてしまった。これは可愛いなあ。

「もう!しょうがないじゃない!いなりはこんな優しい人の所にいたからいいけど、僕はさっきまで外で死にかけてたんだよ!」

「私だってカナさんに迷惑をかけてるんだから、ぽんたもちゃんとカナさんにお礼をしろよ!」

 二つのいなり寿司はこっちをみた。

「あ」

 動画を撮っているのがバレた。

いなり寿司増えてんじゃんwwwwww
濃い味wwwwwwあっはwwwww
黒糖だっけ?うまそー!

 私のツイッツーはイイッスが過去最高値を記録し、音声なしでぽんたと油揚げ……がじゃれついている動画はフォロワーのいなり寿司マニア達の間に拡散されていった。

「ほら、油揚げ、ぽんた見てよ。イイッスがいっぱいついたよ」

 ぽんたは目をキラキラさせている。

「僕たち人気ですか?」

「そうだよ、ぽんた。美味しそうって言われてるけどね!」

「て、照れます~~~~!」

 いつの間にかぽんたにも尻尾が生えていた。可愛いなあ。

「カナさん!わ、私だって!私だってええええ!」

 油揚げはまたぽてりと横倒しになっている。可愛いよ、油揚げもね。ひょいっと箸で元に戻してあげる。

「うう~~~~!」

 油揚げは不満そうだった。

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