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30 誰だ?それは

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「でねー聞いてよ~カリウス様ったら私と添い遂げられなきゃ、こんなもの要らないって切っちゃったんですって!そして昨日でしょ?ないんですもの!慌ててリーヤを呼んじゃったわよ~ウフフ!でね、切ったのだいぶ昔だから大きさが良く分からないって言うもんで、私の好きな大きさにしてもらっちゃった~」

「やめて母さん。いろんな人の心が削れて行くから……」

 朝食を食べて、俺とフローラ傭兵団の全員はカリウス皇帝の前に集められた。集められた、というか集まって貰ったと言うべきだ。

「エル……エルフローラ。その話は後でゆっくり。まず聞きたいことがあるだろうから、答えられる限り答えよう。そして私も色々知りたい事がある」

 カリウス皇帝の隣に母さんが座り、その隣に俺が座らされている。高い所から見下ろす感じではなくて、会議室のような場所で皆同じ高さだ。
 落ち着いている時のカリウス皇帝の器は大きいと思う。

「何故、戦争を?」

「エルフローラを陥れたヤツは王女だった。王女を断罪すると、王家の矛先は当然私に向いた。それを跳ねのけて続けるといつの間にか皇帝と呼ばれていた……王家が他国の王家に助けを求め……婚姻による血のつながりがそうさせたらしい」

 こんな大規模な戦いは結局起点がそこだったんだ。カリウス皇帝怖い。そして確信に迫る質問が飛んできた。

「あなたの腹心、デズモンド・ザサード公爵についてですが」

「誰だ?それは」

「「「「は!?」」」

 フローラ傭兵団のほとんどは大きな声を張り上げた。

「あの男がどれほど残忍な事をしているかご存じないのか!」

「あの男と言われても、私の部下にそんな奴はいない」

「皇帝の腹心でしょう!?」

「違うが……」

 そこでカリウス皇帝はやっと城の従者を呼び出した。

「お前はデズモンド・ザサードという男を知っているか?」

「ええ……陛下とずいぶん懇意にしておられるかと……」

「私はそのような男に一度もあったことがない。面会記録を出せ」

「は、はい!」

 おかしい……。カリウス皇帝の態度を見て、フローラ傭兵団の眼鏡たちの眼鏡がギラリと光った。

「陛下、陛下は我々を信じていただけますか?」

「エルフローラの信を置く者たちであろう。お前たちを信じることはエルフローラを信じる事と変わらない」

 眼鏡たちは数人立ち上がり、スッと礼をして部屋を後にした。残った眼鏡は会議を始める。

「腐敗……」「戦争にしか興味を持たない皇帝」「取り入った」「誰が?」「ご存じないとは」「いつからあの男が?」

「まさかとは思うが、あの「切断公爵」の噂も知らないとか?」

 脳筋の代表格みたいなやつが声を上げるが、カリウス皇帝は怒る事もせず

「知らんな。手足でも切るのが好きな奴がいるのか?おぞましい」

「ああーーーー……あんたの名を笠に着てやりたい放題のデブがいるぞ」

 フローラ傭兵団の人間たちはあるものは天を見上げ、あるものは項垂れ、あるものは怒り……やりきれない思いを抱えていた。

 そして皇帝はと言うと、母さんに平手打ちをされている。

「カリウス様がしっかりなさらないから!とんでもない不幸がこの大陸を覆いました!わたくしはとても悲しく、情けないです!」

「ご、ごめん!エルフローラ!まさかそんなことが起こっているなんて知らなくて」

「知らないで済む事ではありません!しっかり責任を取らねばなりませんよ!」

「わ、分かったから、分かったから殴るのはやめてくれ」

「わたくしが殴っても何もなくなりませんわ!皆がどれだけ大変な目にあったか!ちんちんが切られたんですよ……って貴方も切ってましたわね?」

「だってエルと結婚出来ないならこんな物要らないと……」

「お馬鹿さんねぇ!」

 うちの父と母がどうもすみません。俺は心の底からみんなに詫びた。治すから!しっかり先っぽまで!何なら一回り大きくしておくからなんとか怒りを収めて欲しい……無理かな……。
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