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61 怖かったのか?

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「どうしてフランをあんなにしたんだ?レント。すぐわかっただろ?フランが戦士じゃないってことくらい」

 俺はこの城の中で俺の部屋として与えられている場所へレントと向かっている。レントは王子だが戦士だ。戦いで遅れをとる男じゃない。父さんや脳筋達とやりあう実力の持ち主なのに、なんでだ。

「なあ、リーヤ。フランはどうして俺の前に立ったんだ?」

「え……」

「リーヤの父さん、皇帝は「リーヤと結婚したければ私を倒してからだ!」って言った。だから俺は全力であの皇帝を叩きのめした。強かった……あそこにいた奴ら全員「リーヤを連れて行きたければ俺達を倒せ」って言った。だから戦った。あの連中は俺の腕とか性格なんかを見たくてリーヤを方便に使った奴らも多かったし……ただ、単に殴り合いたかった奴らもいた」

 はは、脳筋らしいや。とりあえず勝負して勝った方が強いみたいな、単純明快なやつら。父さんもそのくくりなんだな。

「俺はどう見てもフランはお前の為に俺の前に立ったとは思えなかったんだ。だからムカついた」

「え……どういうことだ?」

「あいつは、フランはリーヤを選びきれなかった自分の後悔の為、お前への思いを断ち切る為……自分の為に俺の前に立って、最初から負けることを選んだようにしか感じられなかったんだよ。最初から勝つ気もなく、やられるためだけに俺の前に立つなんて。俺はそれも許せないし」

 まだなんかあるのか、レント。なんだなんだ。

「あいつ、どうしてお前をまっすぐ見ない?」

「……」

 俺とフランはあの日、貧民街で別れてから会話らしい会話をしていない。フランから形式だけの挨拶をされただけだ。ただ、それだけだ。

「……多分、俺とフランはそういう運命だったんだよ……」

 すれ違う、そういう運命のだったんだ。

「ふうん?それでいいならそれでいいが。なら、俺はもうフランを恐れなくても良さそうだ」

「え?レントってフランが怖かったのか?」

 驚いて聞き返すと、少しバツが悪そうな顔で視線を逸らした。なんだなんだ?俺様ラインはどこいった??

「そりゃ……まあ、嫁が気になっていたとかいう奴がいたら、警戒して何が悪い……」

「警戒……」

「しかも会った事もない奴だからな。絶対に負けない自信はあっても、どうなるか分からん事はある」

 意外なレントの内心を知って、俺はちょっと面白くなった。

「なんだぁ?俺を無理やり手籠めにした奴の言葉とは思えんな!」

 これ、一生レントに言い続けてやるつもりのやつ。なんかあったらこれで言う事を聞いてもらうぜ。

「……自信があたったら無理やりとかしねえし……」

「ん?」

「なんでもねえよ!」

 耳があがったり下がったり忙しく動いている。それを見ながらなんだか少し笑ってしまった。

「俺さ、でかい犬を飼いたいって思ったことあったんだ。まあでかい猫で我慢するかって思うんだけどどうよ?」

「ぁあん!?誰がペットだコラァ!泣かすぞ」

 へっ!やれるもんならやってみろってんだ。眼鏡か脳筋に頼んでマタタビ持ってきてもらうぞ!情けないにゃんこ姿でもみんなに晒してしまえばいい!……この世界にマタタビ生えてるか知らないけど。

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