【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
107 / 113
オマケ リサイクル再び

8 ピンチに駆けつけるって言ってたもんな

しおりを挟む
「ぎゃっ!」

 くそっ!悪態をついてもこんな華奢な靴じゃ走れねえし、コルセットはきつくて息はつけないし、ドレスは重いし!俺はあえなく地面に転がった。かぶっていたヴェールも枝に引っかかって取れている。女性のふりをしているから、髪は長く伸ばしている。それが顔にかかって邪魔くせえ!いつもみたいにひとくくりにできないからうざってえよ。

「深窓の姫君…‥は!良くもまあ夜会になど出て来れたものだな!」

 俺を嫌な目つきで見下ろしているのは、何番目かわからん兄の一人だろう。顔が側妃の誰かに似ているから王太子じゃないな。王太子ならあの会場で味方作りに精を出しているはずだ。というか全員味方作りに必死になるはずなのに、こんな中庭の奥まった所にまで俺を追いかけてやってくる馬鹿兄。
 国王の寵愛が傾いているのに、自分の地盤固めに必死になっていないのは、母親の後ろ盾が堅固なのか、こいつ自体馬鹿なのか、きっとこいつ自身、頭が悪いんだろう、そんな顔してる。

「もう逃げないのかぁ?ん?ん?つまらんなぁ?お前の侍女はさっさと逃げ出したぞ!」

 ティリーには助けを呼びに行ってもらったんだ馬鹿!二人で隠れるように中庭を歩いていたのに、途中からこいつが追いかけて来たんだ。訳が分からん。

「兎だってもう少し素早く逃げるぞ、ほら!逃げてみろよ!」

 俺、体力ねえし!ついでにドレスの裾をこの馬鹿に踏まれて立ち上がる事も出来ない。クソ野郎が!もげちまえ!!

「捕まったら毛皮を剥がされちまうんだぞぉ!兎チャンよお!」
 
 こいつほんとに馬鹿だ!俺は一応血のつながった妹だぞ!?それを兎とか呼んで更になんだよ!ドレスでも破ろうってのか!クソ変態死ね!
 多分俺が泣いて声を上げて許しを請えばいいんだろうけど、なんでこいつなんかにそんなこと言わなきゃならん!俺はヤツが手を振り上げるのをぎりっ睨みつける。

「睨んだってこわかねえし!平民出で側妃に登っただけはあるなあ?あの女とそっくりな顔だ!」

 割にビビってるじゃねえか!あの父さんの血が入っているのに、俺なんかに睨まれて、怖いのか!ばーかばーか!お前なんて怖くねえんだよ!俺はよ!

「その顔が醜くゆがむところが見てみてぇなあ!」

 拳が振り下ろされる。一応王女の俺の顔をゲンコツで殴りつけるつもりか?クソ変態野郎!それでも俺はギリギリまでヤツを睨みつける、負けてたまるか!

「おっと、失礼」

 ゴッと鈍い音がして、ヤツの体がくの字に折れたまま真横に吹っ飛んだ。そしてそのままかなり遠くの噴水まで吹き飛んでゆき、ゴガッ!といい音がして噴水が壊れた。あり得ない高さまで噴き出る水と、水の中に気絶して沈む名前も覚えていない兄。誰か、ひき上げてやらないとアレ、死ぬんじゃね?

「大丈夫ですか?姫、立てます?」

 きれいなキックのフォームから体制を戻し、俺に手を差し出す。ああ、うん。お前はなんて言うか王子様だよな、フラン。流石だぜ、俺のピンチに駆けつけるっていっつも言ってたもんなあ。

「あ、ありがとうございます……」

 あんまり喋りたくないな、痩せっぽっちだから俺達はまだ声変わりはしていないけど、バレると色々面倒だ。でも差し出された手を払いのける事も出来ないから、素直に掴まる。ゆっくり抱き起されるが、

「あ、あの……」

 手を放してもらえなかった。


しおりを挟む
感想 207

あなたにおすすめの小説

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが

カシナシ
BL
聞いてくれ。 騎士科学年一位のアイツと、二位の俺は同じ部屋。これまでトラブルなく同居人として、良きライバルとして切磋琢磨してきたのに。 最近のアイツ、俺のシャワー中に絶対入ってくるんだ。しかも振り向けば目も合う。それとなく先に用を済ませるよう言ったり対策もしてみたが、何も効かない。 とうとう直接指摘することにしたけど……? 距離の詰め方おかしい攻め × 女の子が好きなはず?の受け 短編ラブコメです。ふわふわにライトです。 頭空っぽにしてお楽しみください。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

処理中です...