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 お姉様の手を引いてほぼ強引に馬車に乗り込んでしまいます。

 良し、まずは状況整理だ。最悪の自体は避けられた筈だし。

 まずここは小説「最高の花束を君に」の中の第1章だ。私がなってしまったベルローズは最低な妹で、理不尽に姉の物を奪うのを生き甲斐にしている頭のおかしい女だ。
 小さな頃は体が弱く、両親に心配をかけ二人の愛を独占していた。それに味をしめてしまった馬鹿ローズは元気になってもやらかしまくっていた。
 ええ、ついさっきまで……馬鹿か!?ベルローズは今年16歳なんだぞ!恥を知れ!恥を!……私だけど。

「お姉様のハンカチ素敵ですわ……私は一枚も持っていませんのに」だの

「私は体が弱くてお友達も満足にできませんのに……ううっ」

 6歳辺りから知恵も回るようになって、噓泣きも覚えた。それに両親はコロッと騙される。

「おお、ベル……可哀想に」

「アマリエ、貴方はお姉ちゃんなんだから、ベルに譲ってあげなさい」

「で、でもこれはジョルジュ様が……」

「お前の婚約者はウェルズ殿下なのだから、他の殿方からいただいたものなど持っているのは」

「……分かりました……」

 おもちゃの指輪だったが、お姉様の手にあったそれはとてもとても美しく輝いてみえた。でも貰って数日で色あせてやっぱりそれはおもちゃだったと気が付いて、興味を失ったわね。たしかどこかの隅に仕舞い込んであったかしら?
 8歳の頃から王子妃教育だと城へ呼び出されるお姉様。私は我が儘放題し始め、お姉様を王家に取られる両親は私を甘やかしたし、お姉様に厳しく接した。
 阿呆かな?そしてベルローズの要求は激しさを増していく。

「ネックスレスを」「ドレスを」「髪飾りを」

 とどめの

「お姉様の婚約者のウェルズ殿下を私にくださいませ?うふふ……殿下も私の方が……あら失礼」

「ベルローズ、何を言っているの?あなたは王子妃教育も受けてはいないでしょう?今から受けるにしてもあれは学ぶべきことが多いのですよ」

「お姉様に出来て私にできないとおっしゃりたいの!?ひ、酷いわ!お姉様は私を虐めて楽しい!?」

「ベルローズ!?何を言っているの??」

 そんな言い争いをしていれば、お父様とお母様が飛んできて

「アマリエ!またベルローズに酷い事を」

「貴方は姉なのよ、そして殿下の婚約者なの。もっと優しくしてあげられないの!?」

 最悪だ……。お姉様がよく今までこの家にいたのか不思議でたまらない。まあでもこれからお姉様もいい方向に進んで行けるはずだ。だからと言って私があの王子と心中なんて絶対嫌だ。

「ねえ、ベル。本気なの?あの、後妻なのよ……あなた死んでも嫌だって言ってたじゃない」

 お姉様、婚約破棄なんてとんでもない目にあったのに、ここまで来ても馬鹿ローズの心配をするの?なんて……なんて出来た姉!ごめんなさい、ごめんなさい。馬鹿ローズは今日で卒業です。これから良き妹になりますわわわわわ!

「本気よ、お姉様あのパプリー頭の王子には付き合えないわ」

 パプリーはピーマンの事よ。中身がほとんど入ってないスッカラカンのエアヘッド。見た目はまあ、王子様だけど、ウェルズ様って何にも考えてないのよね。だからあんな夜会の場でお姉様に婚約破棄を突き付けて、その妹の私を婚約者に据えようとしてたのよ。
 ……そういう風に話を持って行ったのは馬鹿ローズだったけど、ごめんね、ウェルズ王子様! 

「ぱ、パプリー頭って……ベルローズ、流石に不敬よ……でもあなた、ウェルズ様と真実の愛を見つけたのではなかった?」

 お姉様の問いに答える前に我が家についたので馬車から降りることにした。

 お姉様、「真実の愛」でご飯は食べられませんし、生活は出来ませんのよ?



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