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動物に異様に好かれる手

5 俺に羽はない

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「そういう訳で、こいつで勘弁してくれねでか?良い拾い物だと思うぜ?ちょっと生意気だったんで躾けたら、この通り可愛いもんだ」

「あっ……」

 俺は首についた鎖を引かれ、床に手をついた。やめてやめて怖い。殴らないで、蹴らないで。いう事聞くから……。

「名前はシロウと言うらしい。見た目も悪くないし、何せ動物を治せるらしい」

「ふむ……あのライオンを逃したのは大きいですが……まぁその分働いて貰いましょうか。その子供、買い取りましょう」

 俺は奴隷商に売られ、

「焼きごてなんて、野蛮で実用性がない。最近は隷属魔法でしょ」

 この男の所有物になってしまった。右腰の上あたりに大きな呪印が刻まれる。一目で奴隷と分かる印だ。

 男は30代半ばほどで、やり手の男だった。

「色は薄いが金髪碧眼、シロウは可愛いね」

「あ、ありがとうございます……」

 俺は人間が怖い。俺の見た目はこの世界に来た時に女神カスタムされたようで、色の薄い金髪に水色の目をしていた。見た目もまあ、大体は可愛い部類に入るのか?歳はもともと若くみられがちだったが、10代だと思われているだろう。
 人間がとても、怖い。奴隷商の男は俺を撫でる。俺はこの男に逆らえない。こっちへ来いと言われれば行くしかないし、ベッドへ来いと言われれば行くしかない。

「今日は留守番をしていなさい」

 部屋に閉じ込められて、大人しく従う。男は俺に動物を治せとは言わなかった。よく分からないが、男に従う。だって怖い。殴られたら嫌だ。無理矢理入れられるのも嫌だ。
 言うことを聞いていれば、そこまで痛くない。助けてくれる人もいない。この世界には俺の事を気にかけてくれる人はいない。

「げんきない、げんきない?」

「ありがとう、元気ないけど生きてる」

 窓の外の鳥が話しかけてくれた。この世界で俺に優しいのは動物だけだ。

「げんきない、おなかすいた?」

「お腹を空いてるのは君だろう?クッキーあるよ」
 
 砕いてばら撒くと喜んでついばむ。

「うま、うま。ここくさくない、むこうくさいにんげんたくさんくる。おまえにげない?」

「とべないから」

「おまえ、いきのこれ。おれ、いく。またな」

「うん……」

 人間には羽はない。俺はどうして人間なんだろう。
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