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動物に異様に好かれる手

7 狼のご主人様

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「シロウ、なでて」

 最近は人目が無ければ、どこでもこの調子だ。30越えのご主人様を膝の上に乗せて頭をなでなでしている。

……でも逆らうなんてできなかったし、する気力も湧いてこない。ただ、いう事を聞いていれば殴られない。殴られないという事だけが俺には重要な事なんだから。

「シロウ!頼む」

「……」

 目の前にふさふさの毛にまみれたおっさんが仰向けにひっくり返っている。狼男みたいな状態で顔は狼なのに二足歩行だ。一応ズボンは履いている。

 俺は言われるままに手入れを始めた。

「俺は獣人の母と人間の父から生まれた。この辺りの獣人差別は酷くてな……。俺は人型になるのは得意だったから人として通した。耳は隠し切れたが、尻尾は自分で切り落とした」

 人間より大きめな体にブラシをかけていく。狼の硬い毛の下の柔らかい所がふわふわしてくる。

「隠して生きてきたのに、どうも我慢がならん」

 言われるままに、毛を整えてゆく。見る見る間に灰色の毛並みはつやつやと輝き始め、手触りも良くなっていった。

「最初はな、売られて酷い目にあってる仲間を助けたかっただけなのに、どうして立派な奴隷商になってしまったのか」

 治せと言われたので、尻尾も治してやったら千切れるほど振りまくっていた。流石になんで立派な奴隷商になったかは俺には分からないが、人間より狼男の方が怖くない事に気が付いた。

「シロウ、ヤるぞ。お前好きだろう?」

 嫌だという台詞は怖くて出せなかった。大きな舌で舐められて、後ろから押し倒された。

「あっ!」

 太いモノを押し込まれて、声が出る。なんでご主人様は俺がセックスが好きだと思ったんだろう。恐怖で断れないとは考えなかったんだろうか。

「シロウ、シロウ!可愛い。俺のモノ」

 恐怖で言葉に詰まる俺はただ喘ぐしかない。首の後ろを噛まれ、痛みが走るが唇を噛んで我慢するしかない。もう少し、もう少しだけ我慢すれば離して貰える。



「てめぇ!やっぱり犬っころだったか!」

「くそっ!」

 いつも間にか気を失っていたのか、大きな男達の声で気がついた。ご主人様は命からがら窓から飛び降りる所だった。

「シロウ!必ず!必ず助けに戻るから!」

 その一言で男たちの目が全部オレに向く。俺はご主人様の大切な物と認識されてしまったようだ。

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