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動物に異様に好かれる手

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「シロウ!シロウ!」

「れ、レオニー様、あの」

「僕の事はレオニーって呼んで!」

「いえ、あの……」

 あの時からレオニーはシロウから手を離さなかった。大袈裟な言い方ではなく、ずっとシロウの手を離さないのだ。

「シロウと寝る!」
「シロウとご飯食べる!」
「シロウとお風呂入る!」

 挙句の果てに

「シロウとトイレ行くーーーー!」

「れ、レオニー様……あの、帰りたいんです」

「シロウ!何処かに行っちゃうの?!ヤダヤダヤダヤダ!うわーーーーん!」

 聞くとレオニーはまだ6歳だと言う。

「こんなに聞き分けのない方ではなかったのですが……」

 侍女も困り顔になりつつもなんとなく嬉しそうだ。何せシロウがいるだけで離宮にレオニーの嬉しそうな声が響く。
 側妃の離宮にしては冷遇されているようだが、シロウにはましな環境であった。

 何せここにいるのはレオニーの母親のミシェルとレオニー、二人の獣人の侍女しか居ない。人間は見張りの騎士が立っているくらいだ。
 騎士は怖いが基本的に無視してくれるので何とか平静を保っていられた。

「シロウ!シロウ!シロウの事は僕が守ってあげるから、ずっと一緒にいて!」

「無理ですよ、レオニーさま。レオニーさまは王子様で、俺は奴隷ですから……」

 そうだ、自分は薄汚れた奴隷なんだ。シロウは全身に刻まれた奴隷の証を思い出していた。

「怪我が治ったら……出て行きます」

「嫌だ!行かないで!お願い!僕、僕、怖いけど陛下にお願いする!シロウ、絶対一緒にいて!」

「レオニーさま……」

 6歳の怪我が治りかけの子供の願いを無碍にするのも可哀想で、シロウは未だ城に留まっている。
 でもここにはいたくない。獣人達は良い。それ以外は悪意しか感じない。みんなみんな睨んでくる。運ばれてくる料理も微量の毒と悪意にまみれていて、侍女に食べられないと伝えた。

「毒……っ!」

 ミシェル様はぶるりと身を震わせた。

「大人は大丈夫かもしれません……でも、怪我が治りかけの子供に……ちょっと……あと、ここの水は……あまり飲まない方が……」

 ここの水は硬水だ。ミネラル分が多すぎで、動物には合わない。

「せめて沸かして……出来ればレオニー様にはしばらく蒸発した水を集めて……」

「分かりました!」

 手間のかかる作業だが、侍女達は任せてくださいと言った。

「食材で受け取って、ここで調理する訳にはいないのですか?」

「そうしましょう……!」

 とにかく、レオニーの怪我が完全に癒えるまで、留まることになった。



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