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動物に異様に好かれる手

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 ジェスは絶賛立て篭り中だ。ジェスだけではない。全ての獣人が部屋を占拠して立て篭っている。

「シロウが帰って来るまで、俺たちはここから出ない!」

「そうだそうだ!」

「しかしな、みんな……」

「先生は黙って!」

 マール先生にも威嚇し、獣人達は梃子でも動かない構えだ。

「お前たちにシロウは守れない」

「な、何を!」

 厳しい顔で獣人達の前に立つ隊長に、全員が飛びかからん勢いだった。

「分からんのか?現に今、シロウは連れて行かれ帰ってこない。良いか、これが現実だ。守れないシロウを返して貰ってお前達はどうするつもりだったんだ?シロウを連れて逃げる気だったか?脱走は罪だ。シロウを罪に巻き込むのか!?」

「でも!」

 食い下がるジェスを体調は叱りつける。

「またあの可哀想な子供を心ない者の手に渡すのか!今度こそ本当に死んでしまうぞ!それがお前達の望みか!」

「ぐっ……」

 獣人達はみんな首を垂れた。

「考えろ、大切ならどうやれば守ってやれるか。俺もシロウには同情する。しかし、ここにいるよりはるかに安全な場所にいるんだ。シロウのそばにいたいお前達には辛い事かもしれん」

 獣人達は何も反論出来なかった。

「いいか、シロウは奇跡のレベルでお前達の体を治せる。これがどう言うことか考えた事があるか?シロウを国が取り合うことになる。その時、お前たちはシロウに何をしてやれる?助けてやれるのか?その力はお前達にあるのか!ないだろう。そうしたらシロウはどうなるんだ!」

 その場には静けさだけだった。

「今日の騒ぎは不問にする。各自考えたい事があるだろう。部屋に戻れ」

 隊長はすぐに背を向けたが、獣人達は皆下を向いたまま、立ち尽くしていた。

「お前達に力はない……そして悔しいが俺にも。悔しいよ」

 コツコツと去って行く隊長の靴の音だけが響く。
 
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