23 / 80
動物に異様に好かれる手
23
しおりを挟む
レオニーはけして弱い訳ではなかった。ただ、それは6歳にしてはというだけだ。いくら獣人の血を濃く引いた獅子の子でも何人もの大人に囲まれては太刀打ちはできなかった。殴られ、蹴られても立ちあがったが、とうとうレオニーの目の前でシロウは連れ去られた。
「お母様!」
マナーも何もなく、レオニーが王城の廊下でほかの側妃とにらみ合っていたミシェルの元に飛び込んでいく。尋常でない様子に、ミシェルは察した。祖国からの護衛は今日の午後には到着する予定だったのに!
「リッテ。レオニー。私の名において許可します。犯人を殺しなさい。地の果てまで追いつめて、恐怖に打ち震わせたのち、四肢を引き裂いておやり」
「分かりました。ミシェル様」
リッテは狼獣人の侍女だ。深々と礼をし、顔を上げた時にはすでに剣呑な光を放つ目に変わっている。
「レオニー、シロウが何者かに連れ去られた、そうですね?」
「はい、私達の離宮の庭に、男が5人忍んできました」
わかりました、ミシェルはそういい
「レオニー、あなたも探しなさい。そして今度は負けてはなりません。貴方には牙も爪もあるのですから」
「はい、母上!」
リッテとレオニーは静かにその場を去った。しかし来た時よりうんと落ち着いて。それでいて全身に殺気をみなぎらせながら。
「フルー。警備にあたっていた騎士を全員処刑します。それから外に国からの商人がついているはずです。賊が一歩でも城から出たら、捕まえてすべてを吐かせるように伝えておいで」
「かしこまりました、ミシェル様」
フルーはアライグマの獣人の侍女。素早い動きで命令を実行に移す。
「……首謀者は誰かしらね。まさかこんなことをしでかして首が胴体と繋がっていられると思っているのかしら?必ず殺してあげるから、覚悟して待つことね」
いつも束になって蔑んでくる3人の側妃をギロリと見下す。
「ヒッ!」
「獅子の尾を踏むだけでは飽き足らず、このような暴挙。貴方たちの命だけで済めばいいわね?」
ぺたんと座り込み、失禁をするものもいる。側妃たちの侍女も立っていられたものは一人もいない。この国の、この城の人間は獣人を甘く見過ぎたのだ。
「汚い奴隷を一匹、下町に捨ててきてくれないかしら?」
簡単な依頼だと思った。さる高貴な方よりの依頼で、金払いもいい。依頼主の名前は伏せられていたが、なんと王城の離宮の一つに忍び込み、汚い奴隷を一人拉致してこい、それだけだった。
しかも王城には手引する者がいて、簡単に入れる。入っても罪には問われない、口には出さなかったが、場所が場所だけに良くない噂のある側妃達の諍いだな、と雇われた男たちは思った。
そして簡単に入ることが出来た。例の奴隷は子供と楽しそうに遊んでいた。膝の上に獣人の子供を乗せ、緑の芝生の上で歌を歌っている。
仕事は簡単だった。無理やりに腕をつかんだだけで、奴隷はあっさり気を失い、とびかかって来たのも子供だったから、殴って蹴ってやればうずくまった。奴隷を確保したら長居は無用。男たちは指定された道を通り逃げ出した。
簡単な依頼だったはずなのに
「グワッ!!た、たすけ……ギャアアアアア!」
一番後ろを走っていた仲間が追いすがられた。絶叫と血の匂い。ゴキリ!ブチッ!何かを引きちぎる音。
「汚い人間ッ!」
喋ったが、それは人間の形をしていなかった。美しくしなやかな狼の姿で、引き倒した男の上に乗っている。口の周りと前足は真っ赤に染まっている。何をかみ砕いたか、想像したくない。
「レオニー様!」
「シロウを返せッ!」
「うわっ」
もう一人賊を引き倒す。しかしシロウが詰め込まれているであろう大きな袋を担いだ男には届かなかった。
「レオニー様!確実に仕留めるのです!その男は殺してしまって構いません!」
まだ小さなライオンであったが、レオニーはその男の喉にかみつき、引きちぎった。
「お母様!」
マナーも何もなく、レオニーが王城の廊下でほかの側妃とにらみ合っていたミシェルの元に飛び込んでいく。尋常でない様子に、ミシェルは察した。祖国からの護衛は今日の午後には到着する予定だったのに!
「リッテ。レオニー。私の名において許可します。犯人を殺しなさい。地の果てまで追いつめて、恐怖に打ち震わせたのち、四肢を引き裂いておやり」
「分かりました。ミシェル様」
リッテは狼獣人の侍女だ。深々と礼をし、顔を上げた時にはすでに剣呑な光を放つ目に変わっている。
「レオニー、シロウが何者かに連れ去られた、そうですね?」
「はい、私達の離宮の庭に、男が5人忍んできました」
わかりました、ミシェルはそういい
「レオニー、あなたも探しなさい。そして今度は負けてはなりません。貴方には牙も爪もあるのですから」
「はい、母上!」
リッテとレオニーは静かにその場を去った。しかし来た時よりうんと落ち着いて。それでいて全身に殺気をみなぎらせながら。
「フルー。警備にあたっていた騎士を全員処刑します。それから外に国からの商人がついているはずです。賊が一歩でも城から出たら、捕まえてすべてを吐かせるように伝えておいで」
「かしこまりました、ミシェル様」
フルーはアライグマの獣人の侍女。素早い動きで命令を実行に移す。
「……首謀者は誰かしらね。まさかこんなことをしでかして首が胴体と繋がっていられると思っているのかしら?必ず殺してあげるから、覚悟して待つことね」
いつも束になって蔑んでくる3人の側妃をギロリと見下す。
「ヒッ!」
「獅子の尾を踏むだけでは飽き足らず、このような暴挙。貴方たちの命だけで済めばいいわね?」
ぺたんと座り込み、失禁をするものもいる。側妃たちの侍女も立っていられたものは一人もいない。この国の、この城の人間は獣人を甘く見過ぎたのだ。
「汚い奴隷を一匹、下町に捨ててきてくれないかしら?」
簡単な依頼だと思った。さる高貴な方よりの依頼で、金払いもいい。依頼主の名前は伏せられていたが、なんと王城の離宮の一つに忍び込み、汚い奴隷を一人拉致してこい、それだけだった。
しかも王城には手引する者がいて、簡単に入れる。入っても罪には問われない、口には出さなかったが、場所が場所だけに良くない噂のある側妃達の諍いだな、と雇われた男たちは思った。
そして簡単に入ることが出来た。例の奴隷は子供と楽しそうに遊んでいた。膝の上に獣人の子供を乗せ、緑の芝生の上で歌を歌っている。
仕事は簡単だった。無理やりに腕をつかんだだけで、奴隷はあっさり気を失い、とびかかって来たのも子供だったから、殴って蹴ってやればうずくまった。奴隷を確保したら長居は無用。男たちは指定された道を通り逃げ出した。
簡単な依頼だったはずなのに
「グワッ!!た、たすけ……ギャアアアアア!」
一番後ろを走っていた仲間が追いすがられた。絶叫と血の匂い。ゴキリ!ブチッ!何かを引きちぎる音。
「汚い人間ッ!」
喋ったが、それは人間の形をしていなかった。美しくしなやかな狼の姿で、引き倒した男の上に乗っている。口の周りと前足は真っ赤に染まっている。何をかみ砕いたか、想像したくない。
「レオニー様!」
「シロウを返せッ!」
「うわっ」
もう一人賊を引き倒す。しかしシロウが詰め込まれているであろう大きな袋を担いだ男には届かなかった。
「レオニー様!確実に仕留めるのです!その男は殺してしまって構いません!」
まだ小さなライオンであったが、レオニーはその男の喉にかみつき、引きちぎった。
35
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる