53 / 80
動物に異様に好かれる手
53 みぎゃーーーー
しおりを挟む
「ねーアリルレオン様、俺って魔法使える?」
「わたくし由来の神聖魔法なら何でも使えますよ。シロウのその手から漏れてる緑の光も治癒の魔法の一つですもの」
「えっ!そうなの?!」
「シロウの持つ獣を癒す手で何倍にも効果が高くなってるけどね。ふふ、ありがとう。今日も頑張れそうよ」
女神らしい波打つ金の髪を梳き終わり、シロウはお気に入りのブラシをポケットにしまった。これが一番しっくりくる。
「じゃあヒールとか、バリアとか?!」
「出来るわよ。どうして出来ないと思ったのかしら?解毒、解呪なんでもござれよ?こんなに可愛くて才能があるんですもの。でもげえむみたいに人は生き返らないからね?」
「肝に銘じて起きます」
「あにさま!」
「シロウさま!」
「うわああ!凄い!」
「え?」
魔法が使えると聞いたシロウは、神殿の治療院に足を運んだ。
「すぐ帰ろう」
と、渋るレジールはレンテドールが宥めてくれた。
そこにはたくさんの人間と少しの獣人が詰めかけていて、神官はバタバタと走り回っていた。不意にやって来たシロウを最初に見つけたのは羊の聖女マリルで
「もお!遠くからシロウあにさまが近づいてくるの分かりますから!しかもアリルレオン様にお会いしたあとなのでしょう?もお、ピッカピカですよ!」
「えっ!なにが?!」
「シロウあにさまですよー!眩しいです!あにさまがお顔を出しただけで病魔が昇天しました!」
「嘘」
「どうしてマリルがあにさまに嘘をつかなきゃならないのです??いっぱい仕事が減りました!ありがとうございます!あにさま!これで次の患者さんを見てあげられます!」
本当に嬉しそうに笑うマリルだが、よく見ると目の下にはくまがあり、肌もカサカサだった。
「マリル、ちゃんと休んでる?」
「はひぃ!交代で寝てぇいますぅ~よぉ?」
あにさまに嘘はつかないんじゃなかったのか?とシロウは言いたかったが、言葉を飲み込んだ。
ここまで来る廊下にはたくさんの人間が転がっていた。全員ぜぇぜぇと荒い息。咳病でどうしようもなくアリルレオン神殿に駆け込んだ人達。
ここにいる人達は幸せな方だ。国境付近で力尽きる人間の数は数えるのをやめたようだ。放置も出来ず、衛生のため毎日焼いているとレオセントは頭を抱えている。
「マリル、一つ魔法を教えてほしいんだ。なんか一回で病気も怪我も疲れも取れちゃう治癒魔法ってある?」
「んー……完全回復の事でしょうか?私は力が足りなくて発動出来ませんが、命がつながっていれば一人の人を完全に癒す事が出来ると聞いた事があります」
へえ、便利!と思いつつマリルに尋ねた。
「どう言うのか出来る?」
「発動はしないと思いますが、手順と祝詞なら覚えてますよ」
やってみせて?そう聞くとはい!と元気に答えた。
「じゃあ両手を繋いで、目を閉じましょう。天にまします我らが女神よ」
「天にまします我らが女神よ」
マリルの後について同じ言葉を口にする。
はーい、呼んだ?
脳裏にお返事が返って来たが
今忙しいからあーとーでー
と、返した。
「大いなる大地の慈悲の際たるを……」
お、初の大技ね!マリルったらいい仕事してるぅー!
ちょっと!うるさくしないでくださいよ!マリルの呪文が聞こえない!
「お、大いなる………慈悲……」
えー!祝詞なんて良いわよー!あれはさ、力がない者がわたくしまで意思を通す為に、わたくしの気を引くたびに素敵な言霊をのせて紡ぐものなのよー?
シロウの言葉なら夜の喘ぎ声まで全部聞こえてるわよ?
「へ?嘘……」
「あにさま?」
ホントよ!ふふふ!
「み」
「あにさま?あにさま!神力が溢れすぎです!いけません!強い、強すぎ、あっ!あっ!!」
「みぎゃーーーーーーー!!!!」
たーまやー!
その日、国土が増えたジェスト王国と、レースール連邦、近くの大地に緑の慈雨が降り、怪我や病気が一掃されたのは後々の語り草になった。
マリルはとりあえずゆっくり寝ようとベッドに入り込むと、夢にアリルレオンが現れた。
マリル、わたくしの聖女マリル……良くお聞きなさい……聞かれたらこう答えるのです、良いですね……
「アリルレオンさま?誰にきかれるのですか?一体それはどういう意味ですか?」
アリルレオンは微笑んでそれ以外答えず、マリルは目を覚ます。
「変なお告げ……」
マリルが首を傾げていると、ドカン!とかバキン!という破壊音が聞こえて
「このクソ女神ぃーー!てめー!シロウに何言ったぁー?!?!亀みたいに丸くなって絶対やらないってベッドから追い出されたぞっ!!この野郎!!」
「お、王弟殿下!お待ちください!」
「レジール様!おやめくださいっうわー!!」
「誰か!誰か殿下をお止めしろー!」
「うわー!無理ですーー!」
ぽかーんとマリルは口を開けたが
「アリルレオンさま、この事ですか……?」
神殿の建物が破壊尽くされる前にマリルはレジールの前に走り出す。
「レジールさまー聞いて下さいーうそ、嘘よーだそうですー!何も聞いてないそうですぅー!」
「わたくし由来の神聖魔法なら何でも使えますよ。シロウのその手から漏れてる緑の光も治癒の魔法の一つですもの」
「えっ!そうなの?!」
「シロウの持つ獣を癒す手で何倍にも効果が高くなってるけどね。ふふ、ありがとう。今日も頑張れそうよ」
女神らしい波打つ金の髪を梳き終わり、シロウはお気に入りのブラシをポケットにしまった。これが一番しっくりくる。
「じゃあヒールとか、バリアとか?!」
「出来るわよ。どうして出来ないと思ったのかしら?解毒、解呪なんでもござれよ?こんなに可愛くて才能があるんですもの。でもげえむみたいに人は生き返らないからね?」
「肝に銘じて起きます」
「あにさま!」
「シロウさま!」
「うわああ!凄い!」
「え?」
魔法が使えると聞いたシロウは、神殿の治療院に足を運んだ。
「すぐ帰ろう」
と、渋るレジールはレンテドールが宥めてくれた。
そこにはたくさんの人間と少しの獣人が詰めかけていて、神官はバタバタと走り回っていた。不意にやって来たシロウを最初に見つけたのは羊の聖女マリルで
「もお!遠くからシロウあにさまが近づいてくるの分かりますから!しかもアリルレオン様にお会いしたあとなのでしょう?もお、ピッカピカですよ!」
「えっ!なにが?!」
「シロウあにさまですよー!眩しいです!あにさまがお顔を出しただけで病魔が昇天しました!」
「嘘」
「どうしてマリルがあにさまに嘘をつかなきゃならないのです??いっぱい仕事が減りました!ありがとうございます!あにさま!これで次の患者さんを見てあげられます!」
本当に嬉しそうに笑うマリルだが、よく見ると目の下にはくまがあり、肌もカサカサだった。
「マリル、ちゃんと休んでる?」
「はひぃ!交代で寝てぇいますぅ~よぉ?」
あにさまに嘘はつかないんじゃなかったのか?とシロウは言いたかったが、言葉を飲み込んだ。
ここまで来る廊下にはたくさんの人間が転がっていた。全員ぜぇぜぇと荒い息。咳病でどうしようもなくアリルレオン神殿に駆け込んだ人達。
ここにいる人達は幸せな方だ。国境付近で力尽きる人間の数は数えるのをやめたようだ。放置も出来ず、衛生のため毎日焼いているとレオセントは頭を抱えている。
「マリル、一つ魔法を教えてほしいんだ。なんか一回で病気も怪我も疲れも取れちゃう治癒魔法ってある?」
「んー……完全回復の事でしょうか?私は力が足りなくて発動出来ませんが、命がつながっていれば一人の人を完全に癒す事が出来ると聞いた事があります」
へえ、便利!と思いつつマリルに尋ねた。
「どう言うのか出来る?」
「発動はしないと思いますが、手順と祝詞なら覚えてますよ」
やってみせて?そう聞くとはい!と元気に答えた。
「じゃあ両手を繋いで、目を閉じましょう。天にまします我らが女神よ」
「天にまします我らが女神よ」
マリルの後について同じ言葉を口にする。
はーい、呼んだ?
脳裏にお返事が返って来たが
今忙しいからあーとーでー
と、返した。
「大いなる大地の慈悲の際たるを……」
お、初の大技ね!マリルったらいい仕事してるぅー!
ちょっと!うるさくしないでくださいよ!マリルの呪文が聞こえない!
「お、大いなる………慈悲……」
えー!祝詞なんて良いわよー!あれはさ、力がない者がわたくしまで意思を通す為に、わたくしの気を引くたびに素敵な言霊をのせて紡ぐものなのよー?
シロウの言葉なら夜の喘ぎ声まで全部聞こえてるわよ?
「へ?嘘……」
「あにさま?」
ホントよ!ふふふ!
「み」
「あにさま?あにさま!神力が溢れすぎです!いけません!強い、強すぎ、あっ!あっ!!」
「みぎゃーーーーーーー!!!!」
たーまやー!
その日、国土が増えたジェスト王国と、レースール連邦、近くの大地に緑の慈雨が降り、怪我や病気が一掃されたのは後々の語り草になった。
マリルはとりあえずゆっくり寝ようとベッドに入り込むと、夢にアリルレオンが現れた。
マリル、わたくしの聖女マリル……良くお聞きなさい……聞かれたらこう答えるのです、良いですね……
「アリルレオンさま?誰にきかれるのですか?一体それはどういう意味ですか?」
アリルレオンは微笑んでそれ以外答えず、マリルは目を覚ます。
「変なお告げ……」
マリルが首を傾げていると、ドカン!とかバキン!という破壊音が聞こえて
「このクソ女神ぃーー!てめー!シロウに何言ったぁー?!?!亀みたいに丸くなって絶対やらないってベッドから追い出されたぞっ!!この野郎!!」
「お、王弟殿下!お待ちください!」
「レジール様!おやめくださいっうわー!!」
「誰か!誰か殿下をお止めしろー!」
「うわー!無理ですーー!」
ぽかーんとマリルは口を開けたが
「アリルレオンさま、この事ですか……?」
神殿の建物が破壊尽くされる前にマリルはレジールの前に走り出す。
「レジールさまー聞いて下さいーうそ、嘘よーだそうですー!何も聞いてないそうですぅー!」
35
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる