【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ

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動物に異様に好かれる手

53 みぎゃーーーー

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「ねーアリルレオン様、俺って魔法使える?」

「わたくし由来の神聖魔法なら何でも使えますよ。シロウのその手から漏れてる緑の光も治癒の魔法の一つですもの」

「えっ!そうなの?!」

「シロウの持つ獣を癒す手で何倍にも効果が高くなってるけどね。ふふ、ありがとう。今日も頑張れそうよ」

 女神らしい波打つ金の髪を梳き終わり、シロウはお気に入りのブラシをポケットにしまった。これが一番しっくりくる。

「じゃあヒールとか、バリアとか?!」

「出来るわよ。どうして出来ないと思ったのかしら?解毒、解呪なんでもござれよ?こんなに可愛くて才能があるんですもの。でもげえむみたいに人は生き返らないからね?」

「肝に銘じて起きます」



「あにさま!」

「シロウさま!」

「うわああ!凄い!」

「え?」

 魔法が使えると聞いたシロウは、神殿の治療院に足を運んだ。

「すぐ帰ろう」

 と、渋るレジールはレンテドールが宥めてくれた。

 そこにはたくさんの人間と少しの獣人が詰めかけていて、神官はバタバタと走り回っていた。不意にやって来たシロウを最初に見つけたのは羊の聖女マリルで

「もお!遠くからシロウあにさまが近づいてくるの分かりますから!しかもアリルレオン様にお会いしたあとなのでしょう?もお、ピッカピカですよ!」

「えっ!なにが?!」

「シロウあにさまですよー!眩しいです!あにさまがお顔を出しただけで病魔が昇天しました!」

「嘘」

「どうしてマリルがあにさまに嘘をつかなきゃならないのです??いっぱい仕事が減りました!ありがとうございます!あにさま!これで次の患者さんを見てあげられます!」

 本当に嬉しそうに笑うマリルだが、よく見ると目の下にはくまがあり、肌もカサカサだった。

「マリル、ちゃんと休んでる?」

「はひぃ!交代で寝てぇいますぅ~よぉ?」

 あにさまに嘘はつかないんじゃなかったのか?とシロウは言いたかったが、言葉を飲み込んだ。
 ここまで来る廊下にはたくさんの人間が転がっていた。全員ぜぇぜぇと荒い息。咳病でどうしようもなくアリルレオン神殿に駆け込んだ人達。
 ここにいる人達は幸せな方だ。国境付近で力尽きる人間の数は数えるのをやめたようだ。放置も出来ず、衛生のため毎日焼いているとレオセントは頭を抱えている。

「マリル、一つ魔法を教えてほしいんだ。なんか一回で病気も怪我も疲れも取れちゃう治癒魔法ってある?」

「んー……完全回復パーフェクトヒーリングの事でしょうか?私は力が足りなくて発動出来ませんが、命がつながっていれば一人の人を完全に癒す事が出来ると聞いた事があります」

 へえ、便利!と思いつつマリルに尋ねた。

「どう言うのか出来る?」

「発動はしないと思いますが、手順と祝詞なら覚えてますよ」

 やってみせて?そう聞くとはい!と元気に答えた。

「じゃあ両手を繋いで、目を閉じましょう。天にまします我らが女神よ」

「天にまします我らが女神よ」

 マリルの後について同じ言葉を口にする。

はーい、呼んだ?

 脳裏にお返事が返って来たが

今忙しいからあーとーでー

と、返した。

「大いなる大地の慈悲の際たるを……」


お、初の大技ね!マリルったらいい仕事してるぅー!

ちょっと!うるさくしないでくださいよ!マリルの呪文が聞こえない!

「お、大いなる………慈悲……」

 えー!祝詞なんて良いわよー!あれはさ、力がない者がわたくしまで意思を通す為に、わたくしの気を引くたびに素敵な言霊をのせて紡ぐものなのよー?
 シロウの言葉なら夜の喘ぎ声まで全部聞こえてるわよ?

「へ?嘘……」

「あにさま?」

 ホントよ!ふふふ!

「み」

「あにさま?あにさま!神力が溢れすぎです!いけません!強い、強すぎ、あっ!あっ!!」

「みぎゃーーーーーーー!!!!」

たーまやー!

 その日、国土が増えたジェスト王国と、レースール連邦、近くの大地に緑の慈雨が降り、怪我や病気が一掃されたのは後々の語り草になった。



 マリルはとりあえずゆっくり寝ようとベッドに入り込むと、夢にアリルレオンが現れた。

 マリル、わたくしの聖女マリル……良くお聞きなさい……聞かれたらこう答えるのです、良いですね……

「アリルレオンさま?誰にきかれるのですか?一体それはどういう意味ですか?」

 アリルレオンは微笑んでそれ以外答えず、マリルは目を覚ます。

「変なお告げ……」

 マリルが首を傾げていると、ドカン!とかバキン!という破壊音が聞こえて

「このクソ女神ぃーー!てめー!シロウに何言ったぁー?!?!亀みたいに丸くなって絶対やらないってベッドから追い出されたぞっ!!この野郎!!」

「お、王弟殿下!お待ちください!」

「レジール様!おやめくださいっうわー!!」

「誰か!誰か殿下をお止めしろー!」

「うわー!無理ですーー!」

 ぽかーんとマリルは口を開けたが

「アリルレオンさま、この事ですか……?」

 神殿の建物が破壊尽くされる前にマリルはレジールの前に走り出す。

「レジールさまー聞いて下さいーうそ、嘘よーだそうですー!何も聞いてないそうですぅー!」


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