【本編完結】神に捨てられた糸くずの俺は愛される~不幸な物語なんて変えてやるから安心して

鏑木 うりこ

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19 変わってゆく

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 次の日からホルランド殿下はビシッとバシっ! と言い切って、俺への陰湿なイジメもどきは無くなって中々快適な学園生活を送らせて貰った。

 でも、殿下が卒業しちゃった後、俺が三年生で14歳の時がまぁ酷かった。テンプレ再びなんだよ、もう!

「暇なのかな?」

 まあまあ学園の方は対処はして行ったんだけど……どんどんおかしくなって行った。

「ホルランド様……?」

 殿下と顔を合わせる日がどんどん減って行ったんだ。俺は王太子の婚約者だけど、この国での立場はほぼ無いに等しい。だから殿下の御威光に縋るしかないんだけど、どんどん余所余所しくなって来た。
 学園の卒業パーティーは来てくれたし、色々お話もしてくれたし、一緒にいてくれた。
 でもその後、この国では18歳にならないと婚礼は上げられないことになっていて、後3年は待つ必要があった。その間俺は今まで通り王城で暮らしながら勉強したり魔法を覚えたり、体内リュージュしたり……人から褒められることに精を出したりしてた教授達からも順調ですね、良い王太子妃になれますよ、と太鼓判を押されていたし、侍従やメイド達からも信頼されていた。それに殆ど顔を合わせなかったけれど、皇帝やお妃様からも苦情を貰うこともなかった。

「チッ!」
「……」

 ホルランド様と目が合うと舌打ちされるようになってしまった。俺はホルランド様に嫌われるようなことをしたつもりはないのだけれど、きっと何か気に食わないことをしたんだろう。この後ろ盾のない国で人気取りをし過ぎたのもいけなかったのかもしれない。あのダメ神父にくっ付いた時、神聖力を使う方法を知ったから、人にヒールをかけてやることもできるようになった。今じゃ魔力と神聖力の切り替えもちょちょいのちょいだから、そういうところがムカついたのかもしれない。
 ホルランド様は俺を無視して遠ざけ、令嬢達を侍らすようになった。綺麗な色とりどりのご令嬢達は高位から下位までいっぱいいて、選びたい放題だね、凄いね。まあある意味俺もそれを望んだんだから、俺の望み通りなのかもしれない。あの中から好きな人を選んで正妃にして、可愛い子供を産んで貰うと良いと思う。
 勿論、王太子の婚約者を変更するべきだって声はどんどん大きくなって行った。ホルランド様はとても優秀な王太子だもんね、その血は次代に引き継がれるべきだ。

「……」

 いてぇなんて気のせいだよ。6歳だった俺に眩しい位の笑顔で駆けよって来て、手を取ってくれた綺麗なホルランド殿下。殿下が幸せになる道はそっちだ。俺の道とは違う道。キラキラ輝いて美しいお嬢さんと可愛い子供に囲まれた仲睦まじい絵に描いたような素敵な皇帝一家。

「シャトルリアの道は違う道……俺みたいなクソ虫がとりついたおかげで変なことになっちゃっただけ」

 ごめんな、シャトルリア。もっとちゃんとした道があったろうに。糸くずゴミクズ寄生虫君はここでバイバイだ。俺ももうすぐ18歳になる。18歳になったら結婚できちゃうからきっとその前に婚約破棄されるだろうな……それで良いと思う。12年もここに居て色々愛着も沸いた気がするけど、絶対気のせいだ。

「シャトルリア様……あの」
「殿下にもお考えがあるのでしょう」

 俺に懐いてくれている侍女ちゃんや侍従君がが毎日心配そうに声をかけてくれるけど、きっとホルランド様の幸せはこっち方向になかっただけ。大丈夫、皆分かってるよ。

「慰謝料っていっぱいくれるかなぁ……」

 俺の呟きはちょっとだけ大きかったみたいだ。近くに控えていた侍女ちゃん達が声を殺して泣き始めてしまった。泣かないで欲しいな、俺なら平気だよ?

「そんな……そんなお辛そうな顔で……言わないでくださいまし……!」
「あれ……おかしいなあ。ちゃんと表情を変えない練習もしたのに、私もまだまだだね……」

 やっぱり俺じゃこの国の一番偉い人の隣に立って幸せにしてあげることなんてできないんだよ、きっと良かったんだ、それで。
 上手く殺し切れずに一粒だけ流れた涙は床に落ちて弾けて消えて行った。ああ、俺ってばホルランド様のこと結構好きだったんだなぁ……ずっと一緒にいて、可愛いって笑いかけてくれて大事にしてくれて……特別扱いしてくれてたのも嬉しかったんだなぁ。
 でも、それも全部何かの間違いだったんだ。そりゃそうだよね、誰が好き好んで男を婚約者に据えるもんか。シャトルリアの外見は確かに可愛いらしい。並の女性より可愛い、美しいっていろんな人が気を遣って言ってくれるけど、でも男なんだ。
 そんなのを今まで置いておいた方が間違い、間違いは正さなくちゃならないよね。




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