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2 虐められた僕は素敵な王子様と出会う
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みすぼらしくなって行く僕。王城にやって来る綺麗なお嬢さん達。彼女達はジークがいない所で僕に意地悪をする。
「まあ!こんな素敵なお城にあんな薄汚いモノが!」
「早くどこかに行けば良いのに!」
「男なのにジーク様の婚約者?冗談にも程があるわ!」
一番僕を殴るのが、今もジーク様の隣に立つベルワイト公爵家令嬢ノイエ様だ。綺麗な扇を振り上げて、僕の顔を叩く。
「目障りなのよ!出来損ない!」
「痛い……」
「ノイエ様、目立つ所はいけませんわ……ほほほ」
ノイエ様のお友達のレンス侯爵令嬢が笑うんです。
「あら、そうね。フィリエル」
そうして服で隠れる場所を何度も何度も叩く。誰もお世話をしてくれないから、僕の体があざだらけなのは、誰も知らない。
知ってもきっと見なかったふりをされるか、メイド達も手を挙げて来るかもしれない。怖い、怖いよ。
《僕、こんな所出ていきたい》
《だめよ、出ていけない。そういう……》
僕は王宮にいるしかなかった。
そしてとうとうジーク様に言い渡される、婚約破棄だ。嫌だとか悲しいとか言う前にほっとしたのは何故だろう?
《緩んだな》
緩んだ?ああ、よく分からないけれど、確かに緩んだ
「ジーク王子。このような場で婚約破棄など穏やかではありませんな?お手をお貸ししても?」
「もうそんな役立たずは必要ない!好きになさって結構」
ジーク様の冷たい顔、そんな僕に服を汚してしまったのに、優しく声をかけ、手を差し伸ばしてくれる人。キルリス王子は綺麗な銀髪に真っ青な目をしている。とても人気のある王子様なのに、まだ婚約者もなく、未婚の女性達の熱い視線を一心に受けていらっしゃる。
「掴まって?立てますか?」
「ありがとう、ございます……」
キルリス王子は小さく「見つけた」と言い、首を傾げる僕に微笑みかけた。
「カイさん、と言いましたね。ジーク王子との婚約は破棄されてしまった。それでも宜しいのですか?」
労り、同情。色々な感情が絡み合う青い目を僕は見る。でも全てが僕に好意的なので、つい言ってしまった。
「はい……仕方がありません。僕はこんなみすぼらしい見た目ですし、本当に役立たずなんです。素晴らしいジーク様の側に今までいられただけで幸せなんです」
「そうですか」
キルリス王子は一旦言葉を切ってから、ジーク様に言いました。
「ジーク王子。ではこのカイさんを私の妻、あ、早いですね。婚約者として我が国へ連れて行ってもよろしいですか?」
え?何を言っているんだろう?僕は言葉の意味が分からなかった。
「は?!何の冗談ですかな…?!」
国王まで笑い、周囲もどっと湧きたった。笑っていないのは、キルリス王子の共の者だけだけど、皆少し笑っている……恥ずかしい!恥ずかしすぎる!なんて、なんて悪趣味な遊びをする人なんだ!
流石の僕も涙が溢れる。
「酷い、そんなに全員で僕を笑い物にするなんて……」
きょとんと僕を見るキルリス王子の青い目はそれでも嘘の欠片ももなく、本当に僕を可愛いと思ってくれている色をしている。
「笑い物……ね。ねえカイさん。君は私のことが嫌いですか?私なら今すぐにこの王宮から君を連れ出すことができますよ?」
「!」
それは魅了的な提案だった。だって僕はこの王宮から一度も出た事がないんだ。出てはいけない気がしたし、声がそう言ったから。
《出てはいけない》
《分かったよお》
何故か知らないけれど、僕は出ようとも思わなかった。でもジーク様に婚約破棄をされて、なんだか外に出ても良い気がしてきた。
僕の内側の声もこの時は聞こえなかったんだ。実際、ジーク様と御令嬢が仲良く腕を組んでいるのを見るのも辛いし、僕を可愛がってくれる人も誰もいない王宮は居心地が悪い。
なら、あったばかりだけど、優しく僕を見つめてくれるキルリス王子を信じてみたいって思ってしまったんだ。
「まあ!こんな素敵なお城にあんな薄汚いモノが!」
「早くどこかに行けば良いのに!」
「男なのにジーク様の婚約者?冗談にも程があるわ!」
一番僕を殴るのが、今もジーク様の隣に立つベルワイト公爵家令嬢ノイエ様だ。綺麗な扇を振り上げて、僕の顔を叩く。
「目障りなのよ!出来損ない!」
「痛い……」
「ノイエ様、目立つ所はいけませんわ……ほほほ」
ノイエ様のお友達のレンス侯爵令嬢が笑うんです。
「あら、そうね。フィリエル」
そうして服で隠れる場所を何度も何度も叩く。誰もお世話をしてくれないから、僕の体があざだらけなのは、誰も知らない。
知ってもきっと見なかったふりをされるか、メイド達も手を挙げて来るかもしれない。怖い、怖いよ。
《僕、こんな所出ていきたい》
《だめよ、出ていけない。そういう……》
僕は王宮にいるしかなかった。
そしてとうとうジーク様に言い渡される、婚約破棄だ。嫌だとか悲しいとか言う前にほっとしたのは何故だろう?
《緩んだな》
緩んだ?ああ、よく分からないけれど、確かに緩んだ
「ジーク王子。このような場で婚約破棄など穏やかではありませんな?お手をお貸ししても?」
「もうそんな役立たずは必要ない!好きになさって結構」
ジーク様の冷たい顔、そんな僕に服を汚してしまったのに、優しく声をかけ、手を差し伸ばしてくれる人。キルリス王子は綺麗な銀髪に真っ青な目をしている。とても人気のある王子様なのに、まだ婚約者もなく、未婚の女性達の熱い視線を一心に受けていらっしゃる。
「掴まって?立てますか?」
「ありがとう、ございます……」
キルリス王子は小さく「見つけた」と言い、首を傾げる僕に微笑みかけた。
「カイさん、と言いましたね。ジーク王子との婚約は破棄されてしまった。それでも宜しいのですか?」
労り、同情。色々な感情が絡み合う青い目を僕は見る。でも全てが僕に好意的なので、つい言ってしまった。
「はい……仕方がありません。僕はこんなみすぼらしい見た目ですし、本当に役立たずなんです。素晴らしいジーク様の側に今までいられただけで幸せなんです」
「そうですか」
キルリス王子は一旦言葉を切ってから、ジーク様に言いました。
「ジーク王子。ではこのカイさんを私の妻、あ、早いですね。婚約者として我が国へ連れて行ってもよろしいですか?」
え?何を言っているんだろう?僕は言葉の意味が分からなかった。
「は?!何の冗談ですかな…?!」
国王まで笑い、周囲もどっと湧きたった。笑っていないのは、キルリス王子の共の者だけだけど、皆少し笑っている……恥ずかしい!恥ずかしすぎる!なんて、なんて悪趣味な遊びをする人なんだ!
流石の僕も涙が溢れる。
「酷い、そんなに全員で僕を笑い物にするなんて……」
きょとんと僕を見るキルリス王子の青い目はそれでも嘘の欠片ももなく、本当に僕を可愛いと思ってくれている色をしている。
「笑い物……ね。ねえカイさん。君は私のことが嫌いですか?私なら今すぐにこの王宮から君を連れ出すことができますよ?」
「!」
それは魅了的な提案だった。だって僕はこの王宮から一度も出た事がないんだ。出てはいけない気がしたし、声がそう言ったから。
《出てはいけない》
《分かったよお》
何故か知らないけれど、僕は出ようとも思わなかった。でもジーク様に婚約破棄をされて、なんだか外に出ても良い気がしてきた。
僕の内側の声もこの時は聞こえなかったんだ。実際、ジーク様と御令嬢が仲良く腕を組んでいるのを見るのも辛いし、僕を可愛がってくれる人も誰もいない王宮は居心地が悪い。
なら、あったばかりだけど、優しく僕を見つめてくれるキルリス王子を信じてみたいって思ってしまったんだ。
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