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6 ちょうど良く婚約破棄された娘がいました
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「それにお前のような無知で、マナーも最悪な者が民の上に立てるわけがないだろう。国の沽券にも関わる。っと、この国はそんなのでも良かったんだっけなぁ」
そして見たこともない鋭い目をして
「帝国じゃ、あり得ない話だ」
取り付く島もなくバッサリと切り捨てた。呆然とする3人をおいて、馬車は走り出します。
「あ、あの、シュー……?」
「ふふ、帝国まではまだまだ遠いからね。ゆっくり説明しよう」
「……お願いします」
もうなるようにしかならない。私はラング家から完全に切り離されたし、頼れる人はこの目の前の怪しいシューだけだ。腹を括るしかないわ。
揺れの少ない最新式の馬車の中で、シューは一つずつ丁寧に私に説明をしてくれました。
「皆が呼ぶように、俺の名前はシューレウス・グスタフ・マラガラム。マラガラム帝国の第二皇子で間違いない。そして今一番次期皇帝に近い皇子だ」
私はとにかく驚いた。だって第一皇子はどうしたと言うのでしょう?!
「あ、あのシューレウス様。確かファルク第一皇子がいらっしゃいましたよね……失礼ながら……」
「ああ、あの馬鹿はやらかしたんだ。聞きたいか?」
ニヤリ、と唇を吊り上げて意地悪く笑う。庭師の時にそんな顔はした事なかったですよね??
「俺はそうでもないんだが、第一皇子のファルクと第三皇子のデリアスは仲が悪くてね」
第一皇子のファルク様と第三皇子のデリアス様は共に正妃様のお子様で一つ違いなのだそうです。二人とも王の椅子を争って対立していたそうなのです。
「俺は正妃様のメイドだった女の子供だからな。現皇帝に襲われて俺を身篭り、側室にあげられた。出自が低いから、無視されてた。」
「えっ……」
突然の内容に私はなんと言えば良いか分からなくなる。そんな事って……。
「俺の母と正妃様は仲が良い。今でもな。まあその辺は安心しろ。だが、同じ正妃様の子供達は事あるごとに諍いを起こしてな。第三皇子の仕掛けた罠に第一皇子が嵌り、失脚したんだよ」
「まぁ……」
また悪い顔。
「自分に付けてもらっていた公爵令嬢を断罪、婚約破棄の上、子爵令嬢を婚約者に据えた。その途端に子爵令嬢は行方をくらませるって言うな?どこかで聞いた話に似ていて笑えるだろう?」
ちくりと胸の奥が痛みました。これでも長年アレクシス殿下をお支えしてきたつもりなのですけれど。
私が顔を曇らせたので、「すまん」と謝ってくれました。
「いいんです。もう、終わった事なのですから……吹っ切れない私が女々しいだけですわ」
「いや、悪かった。君の十数年の努力を笑う方がおかしいんだった」
こんなに真摯に謝って貰ったのは初めてなので、私は戸惑ってしまいました。シューは誠実な人です、庭師の時も私を貶めたりしなかった。
それだけで信用出来る人だと思ったのです。
「で、第一皇子が失脚。それを仕掛けた第三皇子も家臣の信用を失ってね。俺に白羽の矢が当たったのさ。何せ皇子は俺の他に残ってなかったからね」
「なるほど……」
「で、俺は母親がメイドだからってのもあって婚約者を設けてなかった。派閥争いもあったしね。そしたら国内に令嬢が一人もいねーの!あははは!」
「あら、まぁ……」
確かに小さな頃から、婚約者を決めますわね。いくら王太子候補とはいえ、長年連れ添った婚約者を差し出すなんて人聞きも悪いですし。
「俺も断ったよ、嫌だよ!そんなの。そんな時リリアス公爵がユーティアの事を教えてくれてね。どうも不遇な目に合っているらしいと。ならちょうど良いかなーって」
「ちょうど良く、婚約破棄された私がいた訳ですね……」
なるほど、ちょうど良いですわね……。
「俺は皇帝になんかなりたくないけど、そうも言っていられない。今、分裂すれば帝国が割れ、戦争が起こり得るからな」
「戦争は……嫌ですね」
「ああ」
争いは無いに越したことはありませんものね。私でも無用な争いは起こって欲しくないと思います。
そして見たこともない鋭い目をして
「帝国じゃ、あり得ない話だ」
取り付く島もなくバッサリと切り捨てた。呆然とする3人をおいて、馬車は走り出します。
「あ、あの、シュー……?」
「ふふ、帝国まではまだまだ遠いからね。ゆっくり説明しよう」
「……お願いします」
もうなるようにしかならない。私はラング家から完全に切り離されたし、頼れる人はこの目の前の怪しいシューだけだ。腹を括るしかないわ。
揺れの少ない最新式の馬車の中で、シューは一つずつ丁寧に私に説明をしてくれました。
「皆が呼ぶように、俺の名前はシューレウス・グスタフ・マラガラム。マラガラム帝国の第二皇子で間違いない。そして今一番次期皇帝に近い皇子だ」
私はとにかく驚いた。だって第一皇子はどうしたと言うのでしょう?!
「あ、あのシューレウス様。確かファルク第一皇子がいらっしゃいましたよね……失礼ながら……」
「ああ、あの馬鹿はやらかしたんだ。聞きたいか?」
ニヤリ、と唇を吊り上げて意地悪く笑う。庭師の時にそんな顔はした事なかったですよね??
「俺はそうでもないんだが、第一皇子のファルクと第三皇子のデリアスは仲が悪くてね」
第一皇子のファルク様と第三皇子のデリアス様は共に正妃様のお子様で一つ違いなのだそうです。二人とも王の椅子を争って対立していたそうなのです。
「俺は正妃様のメイドだった女の子供だからな。現皇帝に襲われて俺を身篭り、側室にあげられた。出自が低いから、無視されてた。」
「えっ……」
突然の内容に私はなんと言えば良いか分からなくなる。そんな事って……。
「俺の母と正妃様は仲が良い。今でもな。まあその辺は安心しろ。だが、同じ正妃様の子供達は事あるごとに諍いを起こしてな。第三皇子の仕掛けた罠に第一皇子が嵌り、失脚したんだよ」
「まぁ……」
また悪い顔。
「自分に付けてもらっていた公爵令嬢を断罪、婚約破棄の上、子爵令嬢を婚約者に据えた。その途端に子爵令嬢は行方をくらませるって言うな?どこかで聞いた話に似ていて笑えるだろう?」
ちくりと胸の奥が痛みました。これでも長年アレクシス殿下をお支えしてきたつもりなのですけれど。
私が顔を曇らせたので、「すまん」と謝ってくれました。
「いいんです。もう、終わった事なのですから……吹っ切れない私が女々しいだけですわ」
「いや、悪かった。君の十数年の努力を笑う方がおかしいんだった」
こんなに真摯に謝って貰ったのは初めてなので、私は戸惑ってしまいました。シューは誠実な人です、庭師の時も私を貶めたりしなかった。
それだけで信用出来る人だと思ったのです。
「で、第一皇子が失脚。それを仕掛けた第三皇子も家臣の信用を失ってね。俺に白羽の矢が当たったのさ。何せ皇子は俺の他に残ってなかったからね」
「なるほど……」
「で、俺は母親がメイドだからってのもあって婚約者を設けてなかった。派閥争いもあったしね。そしたら国内に令嬢が一人もいねーの!あははは!」
「あら、まぁ……」
確かに小さな頃から、婚約者を決めますわね。いくら王太子候補とはいえ、長年連れ添った婚約者を差し出すなんて人聞きも悪いですし。
「俺も断ったよ、嫌だよ!そんなの。そんな時リリアス公爵がユーティアの事を教えてくれてね。どうも不遇な目に合っているらしいと。ならちょうど良いかなーって」
「ちょうど良く、婚約破棄された私がいた訳ですね……」
なるほど、ちょうど良いですわね……。
「俺は皇帝になんかなりたくないけど、そうも言っていられない。今、分裂すれば帝国が割れ、戦争が起こり得るからな」
「戦争は……嫌ですね」
「ああ」
争いは無いに越したことはありませんものね。私でも無用な争いは起こって欲しくないと思います。
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