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「シーファーン!お前は!何と言う事を!!」

 俺はボリボリと頭を掻くしかない。うん、ヤっちまった。

「いくら我が国が勝ったからとはいえ、友好の使者としてオーグ国より来られたティセル王子に何と言う事を!」

「すいません、父上。あまりに好みだったために、欲が抑えきれずに……」

「馬鹿もんがーー!この痴れ者を部屋に閉じ込めておけ!一歩も外に出すな!」

 へーへー従いますよ。どうせ俺が悪いんだし。


 友好の使者として我がアルガ国へやって来たオーグ国の王子はそれはそれは……俺の好みだった。キラキラとした少し色の濃い銀の髪に、真っ青な瞳。幼さをほんの少しだけ残した少年。

「オーグより来ました、ティセルと申します。本日よりよろしくお願い申し上げます」

 心地よく響く声。すっと上げた視線は少し不安で揺れる。何せ敵国へほぼ一人で送り込まれたのだ。敗戦国とはいえ、このやりようはどうかと思うが、俺はティセル王子に目を奪われた。

「なんとまあ、愛らしい王子がきたもんだな」

「可愛いな、大丈夫か?ウチには荒い奴らも多いぞ」

「第5王子とか言ったか。まあ人質としては妥当か」

 兄貴たちが、品定めのように王子を見ている。分かる、同じ血を分け合った兄弟だ。全員同じように思っただろう。

 アレを自分の物にしたい と。

 俺はこのアルガの第4王子だ。もたもたしているとすべて上にかっさらわれちまう。だからその日のうちに忍び込んだ。そして無理やりに押し倒した。はぁ、最高だった。

 
「やりやがったな、クソ弟が」

 一番上の兄貴が吐き捨てた。まだこいつはいい。こいつは王太子として立派な公爵令嬢の婚約者がいる。こいつが王太子であり、次期王になるためには是が非でも公爵の後ろ盾が必要だ。だからこいつは絶対に公爵令嬢を邪険に扱ったりしない。
 もし令嬢から婚約破棄などされようものなら、王太子は2番目の兄に移るだろう。だから文句を言うだけだ。

「さすが手が早い……我が弟ながら呆れます」

 2番目の兄貴も俺を蔑んだ目でみてくる。こいつもどうでもいい。こいつも侯爵令嬢と婚約している。一番上の第一王子が失脚した時はこの第2王子が王太子になる。勿論、侯爵家の後ろ盾も必須だ。

 この二人は自分の婚約者をとても大切にしている。間違っても婚約破棄など叫ばない、優良な王子だ。

「ってめー!下のくせして先に手ぇ出すとはな!」

 俺の胸倉をつかみ上げるのは3番目。こいつが厄介だ。一応婚約者もいるが、クソみたいな女だ。こいつもクソだからお似合いなんだけどな。結婚前から浮気し放題のお似合いカップルだ。どこに子種を置いてきてるか、どこから子種を引っ掛けてきてるかとんとわからん。

「……3番目より4番目で良かったか」「それはありますかね」

 1番と2番にそういわれるほどのクズ男だからな。そして俺が4番目だ。

「で、シファ……どうだったんだ?ティセル王子のお味は?」

 ゲス顔で聞いてくる兄3人。クソが!

「……良かった……」

 答える俺もクソだがな!

「うは!たまらんな!」「くー!マジか!」「俺も一発たのみてー!」

「クソ兄貴!滅べ!!」

 でも昨日の夜の事を思い出してニヤニヤしてしまった。

「ケダモノ王子様方!はい!散った散った!!」

 近衛兵に追い散らされ、俺は自室に監禁された。ふん、後悔なんかしていない。それくらいティセル王子は可愛かった。
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