【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜

鏑木 うりこ

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キノコと王様

14 孤独のまま

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「鬼畜王 粛正王 あと何だ?」

「やめてくれ、ヨルム……」

 俺はエドヴァルドのベッドの横に置いた小さな椅子に座って指を折って数えていた。

「孤独王?いっぱいあるなぁ」

「お、お前のだって!」

「おう!誘われれば誰にでも足を開く淫乱宰相な」

 ウシシシ!全員腹痛一週間の刑にしてやったがな!笑いながら机に向かう。今日は3年前の帳簿合わせだ。数字が合ってなければ取り立てなければならない。

「良いのか……そんな事して……」

「良いも何も、毎回言ってるが俺の本体はこの頭の上のキノコ。下の体は素体っていう錬金術で使う材料だ。そらがどう扱われようとたいした事ないんだよ」

「でも、痛みとか……その、入ってる感覚があるんだろう…?苦しくないのか?」

「苦しくはないなぁ。慣れちゃった!それに本体を守ろうと引っ込むとどうしてもぼーっとなっちゃうから、抵抗出来ないんだよ」

 そうなのだ。頭のキノコを守るために菌糸に戻ると、眠たくて眠たくて意識を保っているのがやっとだ。
 そんな朦朧とした意識では抵抗する事が出来なくて……好き勝手に使われている。

「特に俺の事を好きなのがラーンの特使だよな!前王の弟とその息子!笑っちまう!あいつらウチにいる間ずっと腹壊してるだろ!」

 森を抜けて軍事攻略出来なくなったラーン国は外交に力を入れ始めた。ウチとしてはラーンと取引をしてもあまり得はない。
 あの裏切りと乱れた風紀の国とのお付き合いは控えたいのだが、正式な使者として来たのならば無碍にする事も出来ない。
 エドが鬼畜王と噂を聞きつけて、仲間だと思ってすり寄ってきた感じがして、大変気持ち悪い。
 そして初日から押し倒されて、助けも呼べず本体を守った結果、やられたい放題だ。

「早く尻尾をだしてくれりゃ良いんだがな。一応ラーンの武力は馬鹿に出来ん。森に火をつけられたら一大事だ」

「……そうだな。……ヨルム、まだ寝ないのか?」

 ベッドに横になるエドヴァルドはもう眠りに落ちる寸前だ。今日もご苦労さん。明日も頑張ろうぜ。

「キノコは眠くならないんだよ。菌糸に戻らない限りはね」

 まあ、若干嘘だ。人間にほぼそっくりの俺は夜は眠くなる。しかしやる事は山積みだから、少しでも減らしたい。寝なくても大丈夫なんだ。キノコだから。

「……そう、なのか……でも、無理は……お前まで、居なくなったら、私はどうすればいいか……分からない……」

 すぅっと寝息に変わる。分かってるわかってる。エドヴァルドは国の為に全てを捨ててしまった。
 たった一つの自分の命ですら削りながら過ごしているようなものだ。

「大丈夫だよ。俺はお前が考えている以上に丈夫だからな」

 俺はお前の方が心配だ。人間はすぐ死んじゃうからね。


 俺たちは帳簿も全て見直し、隠し財産を発見し、過去の膿みをどんどんだしていった。
 暗殺者は送り込まれ、俺は斬られたり刺されたり相変わらず毒を盛られたり忙しい。
 外敵が来なくなったので、騎士団は街と王をまもるのに専念してもらい、こちらも編成をしてもらう。

「さすがに騎士団までは、俺は無理だ」

 何せ、腕力で来られたらあっさり負けてしまうからな。

「騎士団長は……信用出来ると信じたい」

「そうだな」

 俺は農地改革に忙しかった。何せ加護がすごい国なのだ。作物は植えれば植えるほど豊作だし、何でも美味い。
 森の木々みんなと相談しながら、森を少し切り開き、農地を増やしたりした。

 その年の豊作が決まり、国庫が潤うな!とほくほくしていたから……油断した。

 いや、全部言い訳だ。



 エドヴァルドが暗殺されてしまった。

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