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帝国風キノコ
46 その人は
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「もういいだろう?」
「自分のせいで不具になった妃を捨てろと?」
「帰りたいんだよ」
俺は左手と左足を失った。火で燃やされてはくっつける事ができなかった。
「嫌だ!どこにもやらない。ここに居てくれ」
「何の為に?」
ゼルはベッドの上で俺を抱きしめる。
「妃だろう?やる事は決まってる」
「嘘だろ。抱く気か!趣味が悪すぎる!それに一応怪我人なんだぞ」
「……怪我人、そうだな」
ゼルは仕事に戻って行った。どんな時でも皇帝は仕事に追われている。
「しかし…痛いな」
流石に体が痛む。……俺はこの状況を打開できる方法を知っている。簡単だ、素体を用意して、菌糸を張りそっちに移動すれば良い。昔頻繁に行っていた方法だ。
体は元どおり。ピンピンで仕事に復帰出来る。しかしゼルはその事を知らない。
ゼルは俺を必要としている。依存していると言ってもいい。しかし俺の望みはゼルといては叶わない。
だから、ゼルを裏切る。ゼルは俺が裏切れることを知らない。マスターを騙しているようで、心がズキズキと痛むが
「騙してはいないよ。内緒にしているだけだ」
自分に言い聞かせる。もうあの時にここの使用人全員の命を助けて貰った代償は払い終わったと思うし。
「俺は働いたよ、働いた。だから」
森に帰りたんだ。それが俺の望み。
もう良いよな?テイゼル陛下よ。
俺は痛みに目を閉じる。帝国に来てどれくらい立った?1年は過ぎたかな?セアン達は大きくなったかな?
俺が居なくなって、帝国から攻められたら守り切れるだろうか。……あの子達を信じなくてはな!俺が居なくたって十分やって来たじゃないか。
帝国はまだまだ汚職や暗殺に塗れている。俺がゼードラウンで7年掛けてやった事をもっとでかい国の帝国がたった1年で正常化する訳がない。
ゼードラウンではもっと本気でやったしね!ベッドでイチャコラなんてせずに真面目に真面目にやったのだー!
「はー……疲れた」
1人ベッドの上でこぼしていると、扉がノックされ、メイドが深々とおじきした。
「エドヴァルド様、第7側妃様がどうしてもお会いしたいといらっしゃっておいでですが、いかが致しましょう?」
「第7側妃様自ら?先ぶれも無しで……しかし、どうしても、か」
「差し出がましいようですが、凄く思い詰めているご様子で……」
通常ではない、ということか。何か理由があるんだな?
「このままでよろしければとお伝えください」
頭を下げたままメイドは退出し、しばらくして第7側妃様のマリーベル様がおいでになると告げた。
「第8側妃様におかれましては、この度は誠に痛ましく、お見舞いの言葉しかございません」
「マリーベル様、ありがとうございます。お顔を上げてください。体が動かず、このような姿で申し訳ございません」
「いいえ!いいえ!同じ側妃という立場ながら、わたくし達は何もせず、エドヴァルド様に全てを押しつけて、ただのうのうとしていただけです」
マリーベル様はきゅっと唇を噛む。まともな考えはあるようだ。確かに普通の側妃であれば、何もしなくても良いかも知れない。
しかし、帝国は変わり始めている。しかも側妃は誰も皇帝との子供をもうけていない。これは側妃として、致命的とも言える。
外交も政治の手伝いも、子供も出来ぬ側妃を飼っている必要があるのか?そんな声が出ているのは、耳に入っているのかも知れない。
「エドヴァルド様、わたくしはあなた様の目から見ても1番使えない側妃でしょうか」
いきなり切り込んできた。はっきり言えばそうなのである。家柄は悪くないのに発言も弱く、態度も小さくなりがち。際立った特技もなく、次に解雇されるのはこの方だと噂されている。
まあ、次に王宮を去るのは俺だがな!もう無理よ!
「いいえ、マリーベル様には未来がある。これからたくさん学び、陛下のお役に立てば良いのです」
「わたくしは頭が良くありません。勉強も大の苦手です……魔法も使えません」
あらぁ、そんな人もいるね。頑張ってもどうしようもない人。でも勉強の仕方が分からないだけかもしれない。
「魔法は私も使えませんよ。外交や歴史なら私が教えることも出来ます」
優しくマリーベル様に話す。この人、マリアンヌちゃんを思い出させる。妹みたいだ。
「優しいのですね、エドヴァルド様は。わたくしは何処にいてもダメな娘と言われて参りました。婚約者も決まらず、どうしようもなくなったところに、テイゼルお兄様が声をかけてくださったのです。とりあえず皇帝の側妃になれば誰にも何も言われないだろうと」
「テイゼル、お兄様……」
その響きに、記憶の底の底にある物が刺激される。テイゼルお兄様、マリーベル……アルティアスお兄様……。
ああ!アルトの古い古い記憶だ。
「自分のせいで不具になった妃を捨てろと?」
「帰りたいんだよ」
俺は左手と左足を失った。火で燃やされてはくっつける事ができなかった。
「嫌だ!どこにもやらない。ここに居てくれ」
「何の為に?」
ゼルはベッドの上で俺を抱きしめる。
「妃だろう?やる事は決まってる」
「嘘だろ。抱く気か!趣味が悪すぎる!それに一応怪我人なんだぞ」
「……怪我人、そうだな」
ゼルは仕事に戻って行った。どんな時でも皇帝は仕事に追われている。
「しかし…痛いな」
流石に体が痛む。……俺はこの状況を打開できる方法を知っている。簡単だ、素体を用意して、菌糸を張りそっちに移動すれば良い。昔頻繁に行っていた方法だ。
体は元どおり。ピンピンで仕事に復帰出来る。しかしゼルはその事を知らない。
ゼルは俺を必要としている。依存していると言ってもいい。しかし俺の望みはゼルといては叶わない。
だから、ゼルを裏切る。ゼルは俺が裏切れることを知らない。マスターを騙しているようで、心がズキズキと痛むが
「騙してはいないよ。内緒にしているだけだ」
自分に言い聞かせる。もうあの時にここの使用人全員の命を助けて貰った代償は払い終わったと思うし。
「俺は働いたよ、働いた。だから」
森に帰りたんだ。それが俺の望み。
もう良いよな?テイゼル陛下よ。
俺は痛みに目を閉じる。帝国に来てどれくらい立った?1年は過ぎたかな?セアン達は大きくなったかな?
俺が居なくなって、帝国から攻められたら守り切れるだろうか。……あの子達を信じなくてはな!俺が居なくたって十分やって来たじゃないか。
帝国はまだまだ汚職や暗殺に塗れている。俺がゼードラウンで7年掛けてやった事をもっとでかい国の帝国がたった1年で正常化する訳がない。
ゼードラウンではもっと本気でやったしね!ベッドでイチャコラなんてせずに真面目に真面目にやったのだー!
「はー……疲れた」
1人ベッドの上でこぼしていると、扉がノックされ、メイドが深々とおじきした。
「エドヴァルド様、第7側妃様がどうしてもお会いしたいといらっしゃっておいでですが、いかが致しましょう?」
「第7側妃様自ら?先ぶれも無しで……しかし、どうしても、か」
「差し出がましいようですが、凄く思い詰めているご様子で……」
通常ではない、ということか。何か理由があるんだな?
「このままでよろしければとお伝えください」
頭を下げたままメイドは退出し、しばらくして第7側妃様のマリーベル様がおいでになると告げた。
「第8側妃様におかれましては、この度は誠に痛ましく、お見舞いの言葉しかございません」
「マリーベル様、ありがとうございます。お顔を上げてください。体が動かず、このような姿で申し訳ございません」
「いいえ!いいえ!同じ側妃という立場ながら、わたくし達は何もせず、エドヴァルド様に全てを押しつけて、ただのうのうとしていただけです」
マリーベル様はきゅっと唇を噛む。まともな考えはあるようだ。確かに普通の側妃であれば、何もしなくても良いかも知れない。
しかし、帝国は変わり始めている。しかも側妃は誰も皇帝との子供をもうけていない。これは側妃として、致命的とも言える。
外交も政治の手伝いも、子供も出来ぬ側妃を飼っている必要があるのか?そんな声が出ているのは、耳に入っているのかも知れない。
「エドヴァルド様、わたくしはあなた様の目から見ても1番使えない側妃でしょうか」
いきなり切り込んできた。はっきり言えばそうなのである。家柄は悪くないのに発言も弱く、態度も小さくなりがち。際立った特技もなく、次に解雇されるのはこの方だと噂されている。
まあ、次に王宮を去るのは俺だがな!もう無理よ!
「いいえ、マリーベル様には未来がある。これからたくさん学び、陛下のお役に立てば良いのです」
「わたくしは頭が良くありません。勉強も大の苦手です……魔法も使えません」
あらぁ、そんな人もいるね。頑張ってもどうしようもない人。でも勉強の仕方が分からないだけかもしれない。
「魔法は私も使えませんよ。外交や歴史なら私が教えることも出来ます」
優しくマリーベル様に話す。この人、マリアンヌちゃんを思い出させる。妹みたいだ。
「優しいのですね、エドヴァルド様は。わたくしは何処にいてもダメな娘と言われて参りました。婚約者も決まらず、どうしようもなくなったところに、テイゼルお兄様が声をかけてくださったのです。とりあえず皇帝の側妃になれば誰にも何も言われないだろうと」
「テイゼル、お兄様……」
その響きに、記憶の底の底にある物が刺激される。テイゼルお兄様、マリーベル……アルティアスお兄様……。
ああ!アルトの古い古い記憶だ。
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