【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜

鏑木 うりこ

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ん?キノコの様子が……?

50 側妃

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「考えようによっては帝国をキノコが乗っ取るのか……そう考えると楽しいな!」

「ルドは面白い事を考えるな」

「だってこの先千年、俺の胞子を受け継いだ?かもしれない子供達がずっとこの国で1番偉いんだろう?あー笑っちまう!なんでこんな毒キノコの子供がそんなに出世してんだよ!」

 俺はぽんぽこりんの腹を抱えて笑ってしまった。腹の卵も楽しそうだ。お、話の分かる……息子だな!きっと卵の中身は男の子だ、間違いない。

 いや、キノコの可能性も捨てきれない。

「さて、そんなキノコの息子の為に仕事をして貰いましょうか?

「くっ……!母は強い」


 現在、テイゼル皇帝には正妃と3人の側妃がいる。今、この部屋にはその全員が集められていた。
 他に宰相や、騎士団隊長と数人の有識の貴族と、側妃達の関係者、かなりの人数が集められている。

 皇帝テイゼルが口火を切った。

「後宮を閉める。側妃達には暇を出す。これは決定事項である」

 俺はテイゼルの隣で静かに椅子に座っている。何せ腹がぽんぽこなのだからな!

「何故でございますか!陛下!」

 現在第1側妃リンデールの父親が、立ち上がる。文句を言いたくなるのは分かるが、仕方がない事だぞ?

「何故かわからんのか?ゾディオ侯爵」

「ぐ……」

 ゾディオ侯爵は拳を握り締めて着席した。どうもこうも、こうなる事は薄々気が付いていたはずだ。

「分かりません!分かりません!陛下!何故わたくし達をお捨てになるのですか!」

 第2側妃ナハシュラが金切り声を上げる。予想通りだ。第1側妃リンデールは悔しそうに唇を噛んでいるが、はしたなく騒いだりはしない。
 その辺が品格の差なんだよな。

「嫌ですぅ~陛下ぁ!わたくしはずぅっと陛下にお仕えして参りましたのよ?そこの元8番目の方とは違って陛下の事、よぉく分かっているのですのにぃ」

 これが第3側妃マデリーン。因みに3人の側妃の中でマデリーンが1番年上だ。

 ゼルは表情を失った仮面のような顔をしているが、この問題をさっさと片付けて欲しい。
 ちまちまとした嫌がらせを受け続けるのは性に合わないんでな。

 俺は卵を産んで正妃に格上げされ、住まいも正妃の大きな宮殿に移された。使用人は秋風宮の者と、マリーベル様に使えていた者で構成されている。
 まあ、虐められる虐められる!秋風宮の使用人は皆んなけろりとしていたり、やり返したりしている。しかし、マリーベル様の使用人達はあちこちで虐められ、水をかけられ、ゴミをかけられ、転ばされ、罪をなすり付けられ。
 あまりの陰湿さにキノコもびっくりした。

 ちなみに宮殿中の植物ネットワークが全部見てる。最強である!
 近頃は衣服を斬られたり、不埒者を手引きして傷物にしようとしたり、悪質な物が増えたのでもう我慢ならなかったのだ。

「あいつらなんとかしねーと、家に入れてやんない」

 秋風宮からついて来てくれたメイドや衛兵達が、俺の命令通り扉の前で武器を構えて、テイゼル皇帝を追い返した。

「……すまなかった……」

 皇帝を謝らせてやった。



「そなた達は本当に分からぬと言うのか?」

 ゼルの言葉にリンデールは俯き、ナハシュラは「分かりませんわ!」と言い、マデリーンは「分かっておりますわよぉ!わたくしの気を引く為でございましょ」と言った。

 ある意味マデリーンは凄い。

「では教えよう。使えぬ愚者は必要ない。消えよ」

 冷たい断罪の声にリンデールは震え上がった。ドレスの裾を握り締め、カタカタと震えながらも食い下がった。

「あと少し!あと少しご猶予をくださいませ!必ず、必ず結果をごらんにいれます!」

「リンデール。そなたの事業は上手く行かなかったのだよ。最初は良かったようだが、引き上げどきを間違ったな。もう既に投資額を回収出来ぬではないか」

「っ!……申し訳ございません……」

 ゼルの口調は厳しくはない。リンデールが使った金は全て侯爵家から出ている。何か役に立つことをしようとした心意気は認めているが……側妃で事業はどうしたものか。
 多分、相談を受けた彼女の父親が勧めたのだろうが、勘違いだ。なぜ、側妃しか出来ぬ事をしなかったのか。
 残念でならない。

「わ、わたくしは愚者ではございません!陛下のお役に立っております!」

 第2側妃のナハシュラは声を上げる張る。下品だな。

「お前はどんな役に立ったというのだ?」

「そ、それは……」

 答えられまい。何故ならなんの役にも立っていないから。彼女のしていた事はただ予算を使い贅沢をして、俺の使用人達を虐めていただけだ。毎月何着もドレスを買い、気に入ったものにだけ与えて、気に入らない者に当たり散らす。
 果ては怪しい連中を屋敷に忍び込ませ、俺のメイド達に危害を加えようとした。まあ、未遂で終わって、柄の悪い連中は元秋風宮のメイドちゃん達に再起不能にされて牢に放り込まれているんだがな。

 ナハシュラが答えられず窮していると、助け舟のようにマデリーンが口を挟んできた。

「わたくしはぁ女性として陛下に安らぎを与えておりますぅ」

 ゼルは汚物を見るような目でマデリーンを見下ろす。側妃の中で一番吐き気を催すらしい。同じ部屋に居るのも無理だって。

「ほう、そのようなものを与えられていたか?」

 何様のつもりなのか……ヒソヒソと声が上がる。マデリーンの父親は真っ青な顔で娘を諌めようとするが、声が届かない。

「はいー女性として。女性として、陛下のお側に参りますぅ」

 女性をやけに強調する。俺に対する当て付けか?なるほどなるほど?

「それはエドヴァルドより、お前の方が優れていると言いたいのか?」

「いえぇ、そのような事は滅相もありませぇん。ただ女性として……」

「ではお前がエドヴァルドより優れている点はなんだ?」

「えっ……女性として……」

 女性として、なんなんだろう。女性にしか出来ない子孫を増やすと言う仕事をこなしてしまっている俺より優位な所……。あるかな?
 俺は見た目が長年慣れ親しんだエドヴァルド本人に似ている。長い手足に均整の取れた体。少しきつい顔立ちであったが、マリーベル様を取り込んで、女性のまろみを持っていた。顔は柔和になったし、少しだけふっくらとした。
 腹は卵が入っているからぽんぽこりんだが、まあ、向こうもだいぶぽんぽこりんだからなぁ。

 向こうは脂肪らしいが。

 マデリーンは多分俺より体重が重いと思う……。歩くより転がった方が早いマデリーン。そんな体じゃダンスも踊れないだろうに……。

「答えよ」

「女性として……陛下のお子を……」

 マデリーンの目は泳ぐ。目の前には俺がいる。おら、陛下のお子だぞ?ぽん!

「陛下をお慰め……」

「お前に会うのは何ヶ月ぶりか分からぬ。そんな者にいわれてもな。答えは出たか?」

「わ、わたくしは側妃としての仕事を……」 

 はて?何かしていたかな??ちなみに俺はぽんぽこなのに働いていて、皆んなに怒られている。暇なんだよ!
 
「子飼いの帝国貴族とのくだらない薬物パーティは仕事とは言わぬ」

「何故、それを……」

「そのついでに正妃暗殺計画は流石に見逃せん」

 このまん丸、違ったマデリーンがくすくすと笑いながら喋っているのを、観葉植物のしゅっとした葉っぱの兄さんが教えてくれた。

 『向こうは扱いが悪くて死にかけたッスけど、キノコんちのみんなに助けられたッス!』

 復活した美しい模様入りの葉っぱをわさわさわさせて、知っていること全てを話してくれた。
 ありがとう葉っぱの兄貴!今度温室作ってやるからな!

『あのデブ、薬のやり過ぎで頭おかしいって思うっしょ?アレ、素なんすよ!生まれた時からあんな感じ。皆んな疲れて辞めちゃうってマジ最強じゃないです?』

 なにそれ怖い。

「だ、誰かそんなデタラメを」

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